▼たなばたに向けて


「明日って、笹とか持ってきても平気かなぁ……?」


カレンダーをぼんやり見つめながらつぶやいた名前の姿に、何を考えているのかなんて丸わかりで、忍足は思わず笑みがこぼれずにはいられなかった。

「平気なんちゃう?それくらい。年に1回なんやし。」


すんなりと肯定の返事をもらえるとは思ってなかったのか、それとも本気で独り言だったのか。
どちらにしろ、思っていたような答えではなかったらしい忍足の言葉に名前は勢いよく顔を向けた。


「え?本当?!かさばって邪魔とかじゃない?置くなら部室だよ?」

どうやら持ってくるだけではなく、その後の事まで一応考えてたらしい名前の言葉に忍足は動じる事無く言葉を返す。


「それこそ平気やろ。笹くらいでぎゃんぎゃん言うような奴なんておらんし、岳人とかジローあたりは喜んで参加してくれるんちゃう?」
「そっか…。………忍足は…?」
「俺?」



これくらいの名前の頼みなんて断るわけないし、名前が喜ぶんやったら笹の調達くらい進んでやったる、くらいの心持だった忍足としてはそんな事を聞かれるのは意外でしかなかった。

自分ではここまでわかりやすく好意を表してるつもりだけど、この様子じゃまだまだ足りないみたいだ。

名前が計画した時点で自分も参加するもの、と思っていたくらいな気持ちだったのに。

「もちろん俺もやるで?短冊も用意してくれるんやろ?一緒に書こな。」

にっこり笑って答えれば、名前の顔がうっすらと赤くなった。


「がんばって、笹持ってくる……。」
「楽しみにしとるわ。」

少し俯いてそわそわした様子で答える名前に、忍足は笑みを深くして、家に折り紙でもあったか、と思いを巡らせるのであった。




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