ver.chocolate

バレンタイン企画短編集
5/14(てづくり)


「あー明日ってバレンタインだよな」
「そうだね。昨日あげたでしょ?チョコ」
「えーあー………おう。」
「何、その曖昧な返事。もしかして欲しいの?」
「……………」
私の彼氏である鏑木・T・虎徹はまだチョコレートが足りないらしい。
私は昨日(つまり2/12だ)、虎徹にちょっと早めのバレンタインチョコを渡した。
『お…え、早くね?』
少し驚きながらも、彼は嬉しそうに受け取ってくれた。
「やっぱりな、男はバレンタイン当日にチョコが欲しいわけだ」
「ふーん」
「だから…その、」
「うーん…市販でいいならいいよ」
手作りチョコは全て知り合いに配り終えてしまった。市販ならまだバレンタイン前日だし、残っている可能性がある。
「市販かよ……」
「だってまた手作りは…手間かかるし」
ガチャ、と冷蔵庫を開ける。
「あ。」
冷蔵庫の奥に板チョコが余っていた。手作りチョコを作るときに余ったものだろう。
「虎徹ー」
「あ?どうした」
「板チョコならあった」
「…………」
彼はやや不満そうな顔をした。
……我が儘ヒーローめ。
「作るの手間かかるんだってば」
「………手作りがいい」
「今日の夜ご飯作ってあげるからそれじゃダメ?」
「ったく、仕方ねえな。」
「良かった良かった」
そう言い、私は冷蔵庫にチョコを戻そうとした。
「ストップ!」
「?何よ虎徹」
「ん、」
虎徹は右手を私に差し出す。
「………は?」
「いや、そのチョコ食べるからくれ」
「夜ご飯作ってあげるって言ったじゃん」
そう言いつつもチョコを虎徹に渡す。
ペリペリと音をたてながら彼は包装紙を剥がしていく。




「夜ご飯はいいや」

「え、どうして?」
後ろを振り向き、虎徹を見る。
パキッと音を鳴らしながら彼はチョコを食べた。(悔しいが、様になっていた)



そしてそのまま私にキスをした。


「……!!!!??」

私の口をこじ開けて虎徹の生暖かい舌が入ってくる。

………ッ……甘い?

抵抗するも、男の力には勝てないわけで。私はそのまま大人しく舌を絡ませるしかなかった。
私の口内は彼の唾液とチョコに犯されていく。
「…………んッ……」
うっすらと目を開けると、虎徹の瞳が私を捉えていた。

『逃がさねえから』


虎徹の瞳はそう言っているような気がした。


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