バーナビーと名子がいたビルの屋上からかなり離れた、とあるマンションの一室。
二人の男女がベッドの上で絡みあっていた。
男の方は、狂気に彩られた恍惚の表情で。
女の方は、恐怖に彩られた絶望の表情で。
男の方は赤い上着を脱ぎ捨て、黒いシャツと渋い色をしたズボンを身に付けていた。それに比べ、名子は何も身に纏わず。

いや、身に付けてあるものがあった。

真っ赤に染まった包帯が右脚に巻かれていた。


「い、いいいい゛たい……ッ!!」

名子は呻き声と泣き声が混じった声を喉から絞り出す。右脚を強く掴まれた。痛い。

その彼女の右脚には無造作に包帯が巻かれていて、所々、血で赤黒く染まっている。
脚のように肩にも同じく包帯が巻かれているかと思いきや、肩には銃創が柔らかい肉を抉った痕がそのままで放置されていた。
幸いにも、傷は浅く血はそこまで出ていない。
「や…っ、やめて………あ、ぁ」
「名子…ッ、名子………」
名子は逃げようと必死に抵抗するが、彼女は脚も満足に動かせない状態、勿論逃げ出せるはずもなく。
されるがままだ。―――せめて、脚が動かすことができれば…。

彼女のその右脚を、肩を、そんな風にしたのは、名子を愛おしそうに抱く男。

「やめ、て………。バー、ナビー…」

「名子………っ、……はあ、」

名子の頭部を両手で固定し、自身の唇で必死に彼女の口内を漁る。


ぴちゃ、ぴちゃ…最初はそんな生ぬるい水音を響かせていたが、今は、

ぐちゅぐちゅ、

もはやお互いの唾液な味が分からないほど、口づけをしていた。

「…………んんっ!!」

放して、とバーナビーの胸を必死に叩くも彼は聞いてくれない。
さらに卑猥な音をわざとたたせながら、名子の口内に唾液を送り込んでくる。

私に唾液を飲ませるつもりか、と思えば、いきなり私の口内にある唾液を舌をうまく使って吸い上げる。

ただ、唾液を交わらせるだけの行為。

何の意味があるのか。


キスをしている間、バーナビーはずっと自分が名子につけた傷をなぞっていた。
指で優しく。丁寧に。
やはりまだ痛みは引いてないようで、時折苦痛に顔を歪める名子を見ては、余計に興奮した。

「………っは、」
「……………っ、……はァ、はァ、はッ…………」
唇を放すと、ずっと呼吸をしていなかったのか、名子は必死に空気を吸う。


―――この場の空気を吸ってもただの毒なのに。
――――――愛という名の毒。

「ちゃんと…僕の唾液飲みました?」

バーナビーはぐいっと名子の顎を自分の顔へ引き寄せる。


そして容赦なく、名子の口に中指と人差し指を突っ込んだ。

「…………っんぐ!!!??」

突然の出来事に驚く名子。

がりっ

「…名子、噛まないでください」

口内で二本の長い指をバラバラに動かす。
名子はバーナビーの指を噛まないように、必死に口を開ける。

「…………っん、む……、んぐ…」
「もうすぐですから…、ね…名子」

熱い息を吐きながら、バーナビーは名子の舌を二本の指で挟んだ。

「む………っ!んぐ、ッ…んん゛!!」
名子は舌を動かそうと必死に抵抗する。
「僕以外の…誰とも話さないように名子の舌切りますね」
「ん、んんんん゛!!!んん!!」
「嫌ですか…。じゃあ、僕と約束してください」

彼は笑う。






「僕以外の誰とも話さないこと」




「……………………ッ」



「守れますよね?」


守れるわけ、ない。

無理だ。



だけど、私は――――…………。





ゆっくりと首を縦に振る。

それに満足したように、バーナビーは指を抜いた。
そして、指に絡みついている名子の唾液をぺろぺろと舐めた。

悪寒がする。気持ち悪い。





そのまま彼は私を抱きしめた。





saliva

(あなたの唾液)






>>>>atogaki

pistol→saliva→(タイトル未定)
突破短編です。三部構成です。3話は後日UPします。


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