ぱぁん!
銃声がシュテルンビルト市内にあるビルの屋上に鳴り響く。
そこには名子と拳銃を持った男が向き合っていた。
名子は顔を恐怖に染めながら。
男は顔を狂気に染めながら。
「バ、バーナビー……、」
名子は目の前にいる男を見る。
男は拳銃を名子の足に狙いを定めた。
「次は外しませんよ」
「ひっ…、」
…―殺される!
名子は走り出した。向かうは屋上の入り口。逃げなくては。逃げなくちゃ…!
男―バーナビーに背を向け、走る。
「逃げるんですか?」
声が聞こえる。
彼の狂った声が。
彼の歪んだ声が。
「無駄ですよ」
バーナビーはゆっくりと狙いを定めた。
脚ではなく、必死に逃げ出そうとしている彼女の肩に。
「………全部名子が悪いんですから」
………………私が悪い?
一瞬、名子は脚を止め、振り向いてしまった。
彼女の目に写るのは、狂気で顔を歪め、笑っている彼。
「逃げれるとでも思ったんですか?」
銃声。
「…………………っう!」
肩が熱くなる。
見ると、名子の肩から血が吹き出していた。
「大丈夫ですよ、すぐに治療しますから。………あと、もう逃げ出さないように、」
―――二度と僕の元から逃げ出さないように。
ぱん!!
乾いた音が響く。
途端、名子は地面にうずくまる。
彼女の右脚からは真っ赤な血が流れていた。
……動けない。
肩が熱い。脚が熱い。
意識が、なくなる感じが、する。
「………っはぁ、バーナビー…、や、め…………」
痙攣しながらも名子は必死に言葉を紡ぐ。
バーナビーは地面に倒れている名子を抱きしめた。
目を閉じ、痙攣する名子の身体に頬を擦り寄せる。
――温かい。
―――名子の血でさえも自分のものにしたくなる。
銃創がある彼女の右脚に触れる。
名子はびくっと痙攣する。
「……痛いですか?」
――名子が僕がつけた傷に苦しんでいる。この傷は一生残るだろう。
「大丈夫ですよ。すぐに楽にしてあげますから。」
そして深い、深い、キスをした。
pistol
(あなたの拳銃)