四通目

拝啓 苗字名前様

 蝉の声が辺り一面に響き渡る季節が今年もやって参りましたが、いかがお過ごしでしょうか。毎日の暑さを凌ぐために、家の周りに打ち水をするのが朝起きてからの最近の日課となっています。先日は、お返事ありがとうございます。
 名前の住んでいるところでは海が近くにあるとのことですが、俺は小さい頃から山に囲まれて育ってきたので、実のところは海というものを話でしか聞いたことがないのです。遠くの異国へとどこまでも続いている海岸線に、燦々と降り注ぐ太陽の光を写して揺ら揺らと輝く水面も、君が綺麗だというのならきっと綺麗なのだろう。いつか二人一緒に海へと出かけましょう。俺が初めて海を見る時は、君が隣が良い。
 七月七日は七夕祭りですね。伊之助がうちの近くの山から俺の背丈の倍もあるような大きな笹を取ってきてくれたので、みんなで短冊に願い事を書いて笹の葉に吊るしました。俺がどんな願い事を書いたのかは、君には秘密です。
 天気予報では今年の七夕は晴れるそうです。俺たち二人の代わりに織姫と彦星が広い天の川を渡って会えると良いと思います。まるで俺たちのようですね。七月七日の夜の予定は空いていますか?もし時間があれば、空を見上げてみてください。俺も同じように空を見上げて織姫と彦星の年に一度の二人の逢瀬を見守ろうと思います。
 夏風邪などお召しになりませぬよう、どうかご自愛ください。
敬具
竈門炭治郎

追伸 君は風邪を引きやすいので、就寝する際は必ず布団を掛けて眠るように。

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