途切れぬ記憶と変わらぬ思い。
俺はもともと欠陥品だから。
そう笑ったら赤い色に小突かれて、白い色に怒られて、若草色に痛いところを延々言われ続けた。
「…………金?」
くるりとした大きな瞳が下から見上げてきたことに金色の彼は我に帰った。
はっ、と愛らしい声音に導かれるままそちらを見ると大きな紫色の瞳が自分をしっかりと捉えていて、
赤い同居人が叶わぬ恋心を抱き、若草色の同居人が大切にしている白い同居人によく似ている子どもに、金色の彼はただふにゃりと笑って見せた。
今はこの広い家の中でこの幼子……螢に構ってやれるのは自分しかいなかったことを思い出す。
赤い彼と白髪の彼女は自室で仕事。若草色の彼女は仕事で外出。
仕事を終えているのは朝帰りの自分だけ。
「あはは。ごめんごめん螢ちゃん。ぼーっとしちゃってたよ」
ほりほりと頭を掻きながら金色の彼は前のめりに膝に乗っている小さな螢に軽く詫びた。
辺りをちらりと見れば幼い子ども特有の散らかしが全くない。水色のファーカーペットの上はきれいなものだ。小さい子はおもちゃが好きだろうとあれこれ買ってきたものは螢はたまにしか遊ばない。やはり“永く”子どものままでいるせいなのか?とこの家の住民は誰もが思ったが……興味がないわけではないらしい。
永く子どもの姿で在っている螢だが、螢の母である白髪の彼女曰く「螢は意地っ張りの照れ屋さんだから」だそうで、つい最近気配を消して傍で見てみたところ、誰もいないことをきょろきょろと確認しながら買ってきたおもちゃにそわそわと手を伸ばしているのを見てしまった。その後消した気配に息を戻して近づいたら物凄く照れた顔で怒られた。
それから螢は維持を張り続けてか、全くおもちゃに触ろうとしない。
元よりおもちゃよりも本が……特に詩集が好きなようだから特に苦と感じるようではないようだが…………
(……あ)
よくよく考えたら自分のせいなのか、と今更ながらやっと金色の彼はそこに至る。
ほわほわと、まるで馬鹿みたいにのんびりとした陽射しを斜に受けて、空から徐々に薄まる陽射しの色を金糸の髪と目の前のどこまでも澄んだ白い水のような髪はさんさんと浴びる。
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