ライバルがいるんです。
螢には、ライバルがいる。
それは螢よりもはるかに大きくて、今は到底適いそうにもないライバル。
白髪の彼女が締め切りぎりぎりに仕事を終え、自室で疲れによる眠りに入ってしまった為、夕飯の買い物にと若草色の彼女と買い物に行き、戻ってきた秋桜色の夕間暮れ。
翡翠色の門をきぃ、と若草色の彼女が開けて、玄関庭にひとつ足を踏み入れた時―――螢のマザコンセンサーは発動した。
ぴくっ、と若草色の彼女の腕の中で肩を大きく跳ねさせる。
母にもらったのだと、とてもとても大切にし、毎日身につけている薄紫色の肩掛けが螢を抱く若草色の彼女の腕に擦れてしゅるりと紐解けたような音を奏でる。
「緑っ、緑っ!早く早くお家に入らねばっ!」
ぐいぃー、と前のめりに玄関の扉に手を伸ばす螢に「あらあらー?」などと軽々片腕で螢を抑え、がしゃんと門の施錠をする若草色の彼女。
その小柄な身体と細腕のどこにそんな力があるのか。それは彼女――否、名無しの彼らの過去のみぞ知っていることだった。
よいしょ、と螢を抱え直し既に上半身は玄関の扉に伸びている螢を宥めながら若草色の彼女は門から扉までの短い距離を歩く。
ごそり、とスカートのポケットから鍵を取り出して鍵穴にさした。
「どうしたんですか螢ちゃん。………とか白々しいことを訊いてみてもあれですよねー」
どうせおばあちゃん関連ですよねぇ、と若草色の彼女は鍵を回す。
かしゃん、と玄関の扉が開いた。
。°。°。°。°。°。°。°。°。
「あーっ!!!赤っ!!我が母から離れ…」
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