ハロウィンで初プリクラですよ。
ハロウィンの準備をするから、おばあちゃんは螢ちゃんとお出かけしていてください。
そんなことを言われてしまい、半ば家から追い出された感じの白髪の彼女と螢は仕方がないので、近所のデパートとかに出かけてみた。
パンプキン、蝙蝠、黒猫、魔法使い、その他諸々のハロウィングッズを見てあるく。
「ほぉ……。……愉快なものがたくさんあるものなのだな……」
「はい、我が母」
面白いですねっ、といつも通り薄紫色の肩掛けを羽織った螢が紫色の大きな瞳をまぁるくして、泡のようにほわりと笑んだ。
ぶっちゃけるところ、螢はハロウィングッズなど見ていないで物珍しそうにそれらをじっくりと見る母を見ていることに満足しているのだが、白髪の彼女もいつも通り、それに全く気付いていなかった。
足の悪い、満足に歩けない螢を抱きながらてこりてこりと薄紫色のカーディガンを着た白髪の彼女はふわりとした髪を揺らしながら歩く。
水泡のように笑うご機嫌な我が子にハロウィンらしいものをひとつくらい何かしてやりたいものだ。いつも(赤い彼以外の前では)割と大人しい、聞き分けのよい子なだけに尚更その思いは高い。
カチューシャ、ステッキ、ブローチ、ヘアゴム。……なかなかどうして、悩ませてくれる。
しかし無難なところでヘアゴムを購入してみても恐らく『我が母から頂いたこの水色の結紐で我は充分なのです』とか言いそうだ。否。絶対に言うだろう。
見かけでは母に見えなくとも、白髪の彼女だって家族一の年長者で、螢と言う可愛い子の母なのだ。我が子が言いそうなことくらい考えられる。
故に、さてどうしようかな……と更にきょろきょろと店内を見て歩く。
「……!螢、あれは可愛くないか?」
そして程良いものを見つけた。
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