「あ、あの……ごめんなさい、歩美のせいで」

「……(貴方のせいじゃない、気にしなくていいのに)」

ここは何処だろうか、と考えてみるもどうしようも無い。
物が雑多に置かれていることからまぁ物置のような場所なのだろう。
さて、何故俺がここに居るかと言うと、まぁ簡単に言えば誘拐されたのだ。

事の発端は娘が帰ってこないとの連絡。それがあの江戸川君の仲良しさんで。
捜索に駆りだされたのは良かったのだが。






「……カルヴァート・レイか」

「……失礼ですが、どちら様で?なぜ私の名前をご存知なのでしょう?」

「言うことを聞け、さもないとこの娘の命は無い」

そう言われ開けられた車の中を見てみれば縛られ喋れない様にされた吉田歩美さんの姿が。
涙が目に浮かんでいる。

思わず眉間に皺を寄せてしまった。従うべきか否か……ほんの一瞬迷ったが、この犯人達の目には迷いが無い。
従わなかったら、本気で何かしてくるだろう。

「……どうすればその子を開放してくれる?」

「へへ、じゃあさっさと車に乗りな。
……無線機や警棒、拳銃は預からせてもらうぜ」

「ちょっとでも怪しい動きをしてみろ、子供の頭に風穴開くぞ」

「…………。」










そうして乗り込んだ車内で物を取り上げられ、縛られ口を塞がれ目隠しをされた。
……耳までは流石にやらなかった、助かった。

そうしてたどり着いた場所から担ぎだされ、ここに放り込まれたって所だ。

「……(人の気配は無い、動くなら今か)」

早速縄抜けの容量で縛られた体の開放を試みた。
なんとか手の自由を取り戻し、次に足、口のテープを取り外していく。
なんとか全部外す事ができた。

「……静かにな、今解いてやる」

キツく結んである紐を引き千切る様に外していけば、彼女も動けるようになった。

「あ、あの」

「……怖いか?大丈夫、俺が無事に家まで送り届けてやるから」

「……うん」

軽くなで、手を握る。
手を握った時に気づいたが、冷えている。
この冷たい倉庫の床に座っていればそうなるかと半場納得しながら上着をかけてやる。
無いよりマシだろう。

軽く倉庫内を調べることにした。
まず出入り口は固く塞がれている。
こりゃ随分と手の込んだ……。
ガッチリ塞がれてたそこも、壊せないことは無さそうだが轟音を伴うだろう。
それを聞きつけた奴らが集まってくるのは困る。

他には、と見渡してみるもあまり使えそうなものは見当たらない。
せいぜい紙屑や何かの破片のようなものばかり
が詰まったダンボールが置いてあるだけ。

「……!」

ぐるりと改めて室内を見渡して気づいた。
通気口がある。
……俺が通れるかどうかは微妙だが。

「…………。」

正面突破は最後の手段にしておきたい。
となると、あっちから動いてみるしか方法は無さそうだ。

「なぁ、ちょっと手伝ってくれるか?」

「え?」

歩美さんを両腕で持ち上げ、通気口を塞ぐ網を取ってもらう。
案外簡単に外れたそこは、以外にも綺麗だった。

「……入れるな」

「うん」

そっと押して入れてやった後、俺も助走をつけてよじ登った。
人一人通れる大きさは優にある。
助かった、と思いながら慎重に進んだ。





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