「ひゃっほーい!!」

ばしゃん、と水飛沫が上がるのを遠目に見ていた。
彼らが今夜爆睡するのは決定事項だな、と、どうでもいいことを考えながらビニールシートの上に腰を降ろす。

今日はエルヴィンに誘われて海に来ていた。
休日と合わせて幾つか有給を使ったのだ。
丁度、彼のグループが経営するリゾートホテルが開業何周年とかでイベント事をする、らしい。
それに誘われた鈴木家やそこのお嬢様と芋づる式に毛利さんに江戸川、その仲間達……と、気づけば大所帯になっていた。阿笠博士も誘われ、お守りは任せられるので大丈夫らしいが。

「……エルヴィンもよくやるな」

「前から謀略とかそういうの、得意だったろ。
今考えると……あいつは割と経営者とか政治家に向いてる」

俺の呟きを聞き取ったリヴァイから言葉が来る。
そういわれれば確かにな、と思う部分も多々あった。経営者としてのあいつは中々に楽しそうだから、俺もとしても嬉しく思うのだが。

「ハンジやミケも呼ばれてるらしいが。
会ったか?」

リヴァイに問われ、驚く。
あぁ、エルヴィンなら呼ぶかもなと考えながらリヴァイに会ってないと返した。

「……ミケがいれば、匂いで見つけてくるだろ」

「たしかに」

「リヴァイー!レイー!!」

「ほらな」

丁度そこにハンジが大声を出しながら駆けてきた。
相変わらず五月蝿い、と思いながらそちらを見た。
彼女はミケを引っ張って来ていた。リヴァイの予想通り匂いで探してきたのか、と思っていれば、エルヴィンもそれに引きずられて来ていた。思わず小さく噴き出した。
おそらくエルヴィンにあんなことが出来るのはハンジくらいだろう。俺もやろうと思えば、出来無くは無いが。

「やーっと見つけた!電話しても気づかないしさぁ!!」

「……あ、ごめん。電源落としてた」

「……俺のもマナーモードだ」

「だからミケに探してもらってたんだからね!
もう人が多すぎてこいつ何度か死にかけたよ」

ミケを見遣ればぐったりしていた。
おそらく、女性陣の香水や化粧の匂いにやられたのだろう。あれは俺も来るものがあるからわかる。

「見つかって良かった。
リヴァイとレイ、ミケとハンジにはもう説明したが……君らは特別席だ。
案内の必要があってね」

「特別席?おいエルヴィン、いいのか」

「構わない。君らは私の友人として出席してもらおうと……嫌かい?」

「んな訳無いだろ」

「むしろ嬉しい」

「それじゃあ、早速……と言う訳にも行かないだろう。
待ちついでに……どれ、私も少し水浴びでも」

「あ、良いねえ」

「スン」

楽しげな表情で上着を脱いだエルヴィン。
元々ラフな格好の下にしっかり水着を着込んでいるあたり、俺達を誘いついでに息抜きしに来たのだろう。おそらくこの後は忙しいだろうからな。

「ほら、行こう!リヴァイも、ほらレイ逃げない!」

「う、ま、ってハンジ!
わかった脱ぐ、脱ぐから!」

無理矢理剥ぎとられそうになったので急いで水着姿になった。
上からパーカーを羽織るが、ちゃんとした水着だしあまり傷が多い部分を露出させる訳にはいくまい。

「リヴァイの身体は相変わらずだな。鍛えるのはやめてないのか」

「……前と同じ感覚で動いちまうからな。身体も同じくらいにしておかねーと怪我じゃ済まん」

海に向かいながら駄弁る。
そういや荷物放置しちゃったけど良いのか、と言いかけてそちらを見た。ちゃんとエルヴィンのボディガードか付き人かの人間が荷物の近くに立ってくれている。
なら気にする必要はないかと意識をこっちに戻した。

「来たは良いが何するつもりだ」

「じゃーんビーチボール」

ミケに答えたハンジは膨らませてあるビーチボールをどこからか取り出した。
あ、それあの子達が持ってきた奴じゃないか。

「ちょっと借りるだけさ。
ほらレイ!」

「っ、急に来るな!ミケ!」

「……」

「エルヴィン」

ぽんぽんとボールが飛ぶ。皆スポーツは得意な方なので、よく続いた。
途中、誰からか変な意地を張り出して際どい所に打ち込むようになってからはてんわやんわだった。

「ちょ、リヴァイ酷い!!」

「走れクソメガネ」

「走ってるってば!ほーらエルヴィン!」

「厳しいな」

「どの口が抜かしてんだ……」

涼しい顔で打ち返したエルヴィンに口元が引きつる。長い手足と高身長を活かして素早くボール回収に向かう姿は40手前のオッサンじゃない。ミケも同様。

かれこれ10分も打ち合いが続き、ちょっとバテてきたハンジがやめようと提案し、皆海から上がった。
のまま売店に向かい、アイスを食べた。
ここのリゾート地は島になっていて、島に入れるのは泊まる人のみ。
宿泊料にこういった売店の代金もついているので、お金を持ち歩かなくていいという便利な部分もあるのだ。もっとも、エルヴィンはここの経営者である訳だから売店側もとても気遣ってくれた。
エルヴィンは、その調子でお客様も頼むよと人のいい笑みを浮かべていた。

「………………」

「ん?なんだい、レイ」

「……いや、……別に」

(相変わらずどこか胡散臭い笑顔だなとか思ってごめん)







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