#1
1
ちょっと待て。
記憶の整理をさせろ。
まず、今日は日曜日。
家からすぐのコンビニ向かってあるいてて。
……で、何故今は森の中にいる?
自分は街の中を歩いていた気がするのだが。
つかココドコよ。
見た目からしてとりあえず森。
「ミィ?」
「……?」
目の前に緑色の生物が現れた。いや、現れたというより、居たことに気付いた。
体にピンク色の花が咲いている生物。
「……なんだこいつ。」
謎の生物をまじまじと見る。
どこかで……見たような。
気のせいかな?
とりあえずほうっといて、頭の整理を始める。
(……そうだ。こんな生物がこの世界にいるわけない。これは夢だ。夢だ。うん。)
そう思って頬を思いっきりつねってみる。
……よくある確かめ方だが。
「いででッ!!」
あっれーおかしいなー。
夢なのに痛えぞー。
地面に座り込んであれこれやっていると、緑の生物が頭に飛び乗ってきた。
「……んだよ、お前。」
よくみると可愛い見た目してるな。
頭に乗っかった謎の生物を撫でていると、どこからか声が聞こえてきた。
「探せ!逃げられたらリーダーのげんこつ喰らうことになるぞ!」
「ぎゃああ!リーダーのげんこつは嫌だあああ!!」
数人の大人の声が聞こえてきた。
話している内容は幼稚だが。
「い、いたぞ!!」
木々の間から出てきた変な恰好の人間。初村人がこの変人とは。番組が破綻するぞ。
「え?自分ですか」
「ちげえ!お前が持ってるやつだ!!」
緑の生物を見ると、呆れたような、しつこいとでも言いたげな視線を送っていた。
うむ。とりあえず厄介な目にあっているらしい。
「……こいつらは敵か?」
小声で生物にそう追いかけると、少し頷いた。
「じゃあ、何とかして切り抜けよう。自分に合わせて演技してくれ」
また小声で言うと、コクっと頷いた。
「……えっと。この子は自分のなんですけど。何かの間違いじゃないですか?」
「いや、そいつは俺らのだ!こんな所にそいつがいるわけない!」
「じゃあなおさら。自分がここに連れこなきゃどこにいるの。」
「確かに!」
「(え、納得しちゃうんだ。こいつら馬鹿なのか?)まあ、そういうわけだ。もしこいつと同じ奴見つけたら教えてやるよ。な?」
「ミィ」
緑に言うとうまいこと合わせてくれた。
「おう、助かるぜあんちゃん」
「じゃあ。またな」
それだけ言って立ち去った。
後ろの方で「探すぞー!」と声が聞こえた。
……あほかな?阿保の子かな?
「……ところでさあ、人がいるところ知らねえ?」
もちろんあいつら以外。そう言わずとも伝わったらしく、この子は答えてくれた。
[あっち!]
生物は前足を使って方向を示した。
「じゃー行くか。」
厄介ごとから逃れ、ご機嫌な緑を頭に乗せて教えられた方向に歩き出した。
2
「……ここでいいのか?」
[たぶん!]
たぶんてお前。
進んでいくと1つの建物にたどり着いた。
「すみませーん」
間延びした声で声をかけ、人が居るか確かめる。
「ハーイ……あれ、シェイミ!?なんでこんな所に!?」
「お前、シェイミっつったんだな」
「ミィ!」
名前が判明したところでシェイミをお姉さんに渡す。
「はい、オネーサン」
「あらやだお姉さんだなんて……って、あなたはこの子のトレーナーじゃないの?」
「……は?トレーナーって何すか」
疑問に思ったことをそのまま質問すると、オネーサンが固まった。
「……え?トレーナーって、トレーナーでしょ?」
「……すみません、ちょっと頭混乱してきました」
今、こいつらをなんていうのか思い出した。
“ポケモン”だ。
「……まずったなあ」
「どうしたの?」
どうした……どころじゃないっすよ。
ちょっとこの状況マジピンチだ。
「オネーサン、自分どうしよう。異世界から来たかもしんない」
「え!?」
[*prev] [next#]
1/21
戻る