後日、麦わらの一味とヴルが向い合っていた
そう、やっと回復したので顔合わせとなったのである

それは良いのだが、人見知りなのかこれまでの経験が関係してか、少し震え、怯えている様に見える

椅子に座り隣のサンジの服の裾を軽く握りながら、今にも逃げ出したいのをなんとかその場に留まっている様な感じだった

「へぇ、この子が?」

「……、」

軽く頭を下げてくる
喋らないのは緊張しているせいなのだろうか、と考えていたらチョッパーから補足が入った

「今は声が出ねぇみたいなんだ
筆談は出来るけどな」

『はじめまして、ヴルです』

ぴらり、と紙を差し出されてそれを目で追う一同
少しの沈黙の後、船長の叫び声

「ヴルか!よし、俺の仲間になれ!!」

「待ちなさいっ!
まだ名前しか知らないんだから」

「まぁまぁナミさん、ヴルがびっくりしちゃうから………」

ヴルがびくついたのに気づいたサンジがナミを宥める
怒鳴り声に驚いたのだろう、握る手に力が入っている

「あ、あぁ……ごめんね
びっくりさせちゃったわね」

「っ、」

ふるふる、と首を横にふって大丈夫だと意思表示するヴル
そんな彼女に、ナミから自己紹介を始めた

「私はナミ!
で、船長の……」

ナミが一通り名前を教えていく
それをしっかり脳に記憶したヴルはじっと今紹介されたばかりの彼らをながめていた


皆、顔が怖くない
怒っていない
どうしてだろうか
いつも、怒られて怖がられたのに

サンジもチョッパーもそうだ
あんな美味しくて温かいもの、初めて食べた
初めて手当なんてしてもらえた

この人たちはどうして皆と違うのだろう
もしかして、まだ烏になっている所を見られていないとか?
そうかもしれない
だって、皆が怖くなったのは烏になれるって知られてからだったから

「……」

「ヴル?……ヴル?どうしたの?
何考えこんでるのよ」

この人……ナミも知らない、から
怖くないのかな
知ったら、怖いのかな

いつかは知られてしまうのだ
今知られても、同じ事じゃないのだろうか

「あっ、ヴル!」

たまらず立ち上がって外に出た
そのままいつものように半分だけ烏になる
……ここは、あの島みたいに冷たい風が吹き付けている訳じゃない
だから、遠くまで飛んでいけそう

「いきなりどうしたんだ!?
びっくりしただろうが!」

「ヴル、どうしたの?」

「……???」

首を捻るしかない

なんで?
どうして?
貴方達は皆と違うの?

「……なにか気になる事でもあったかい?」

「………」

そう、なんだけど
なんで?

「…………こわく、ない?」






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