気味が悪い
悪魔だ
不吉だ

そんなことは言われ慣れた

でも、君は
君たちは違ったんだ









とある冬島
雪の降り積もる中、麦わらの一味が島に上陸した
雪で遊んでいた船長は真っ先に降り積もった雪へとダイブする
それに続くチョッパーとウソップ

「買い出し行くか……食料が売ってりゃいいが」

港にも積もる雪を踏み、白い息を吐き出すサンジ
防寒は完璧だ

「止みそうには無いわね
寒くてたまんないわ」

「一面の銀世界もなかなか素敵じゃない」

「でも、やっぱり寒いわ」

ナミは寒さにあまり強くないみかんを心配しつつ、コートを着込んだ己を抱き締めた

「ナミすぁーんロビンちゅゎーあん!!
買い出しなんてさっさと済ませて温かい飲み物淹れるからねー!!」

「うん、お願い」

これ以上は耐え切れないとナミは船室に戻っていった

「おい、ルフィ
あんま体冷やすと風邪引くぞ」

「えー?」

「……チョッパー、程々にしてこいつら船室に引きずり込め
ぜってぇ風邪引く」

「お、おう!わかった!」

そんなやりとりを交わしたサンジは街に買い出しに向かった

が、一つ不満な点があった


「なんでマリモが居るんだよ!!」

「こっちの台詞だクソコック!!」

何故か剣士と歩いているという事だ

「あっちいけよクソマリモ」

「なんで俺が道変えにゃならんのだ」

「俺が買い出しっつー用事があるからだ」

「俺だって散歩してるだけだろうが
ナミに防寒具買って来いって言われてるから仕方なく街に行こうと思ってんだけだ」

「………おま、くっそ寒そ……」

「別に寒くねぇ」

「見てるこっちが寒いわ!」

ゾロはなんと半袖だった
サンジはというとコートを着てマフラーまで巻いているというのにこの男は……!

半場呆れながらも歩いていたら街に付いた
ゾロとも別れてさっさと買い出しを済ませ、戻ろうとした時だった

「烏だー!!今度こそ仕留めろぉーー!!」

「撃てぇー!!!」

急に街が騒がしくなった
ガラスの割れる音と銃声が響く
ひら、と真っ黒な羽が落ちてきた

「飛んだぞッ
逃すな!!」

「また寄り付かれたら不吉だわ!
今度こそ殺すのよ!!」

街の人々の殺気が恐ろしい
その殺気は空に飛び立った烏に向けられている様だった

「………!
人間!?」

サンジは見た
腕が真っ黒な羽へと化した人間の姿を
銃声の後、赤が舞った
どうやらまともに食らったらしい

そのままバランスを崩して森の方へ落ちていく

それを街の人々は歓声を上げて見ていた

「な、なんだこりゃあ……」

事情を知らない分迂闊には言えないが、酷い事しやがる
あれは人間の筈だ

「おや、お兄さん……見かけない顔だね」

「……爺さん、ありゃなんだ?
あの黒いのは……」

「あぁ、烏だ
真っ黒で、不幸を運んでくる烏だ」

「俺の目が間違ってなきゃ、人間にも見えたぞ」

「悪魔の実だ
悪魔の実を食って、本物の悪魔になった化け物さ」

詳しく話を聞いてみた
話の始まりは、二十数年前まで遡る

ある海賊が街を襲った
街を支配した海賊の頭は、半分烏だったのだ
悪魔の実の能力者
トリトリの実、モデル烏

烏になった能力者は街の人々をその鋭い鉤爪で切り裂いた
街は壊滅状態に陥った
しかし、たまたま近くを通った海軍に街は救われたのだ

その時頭は殺された

悪魔の実の能力者が死んだ時、この世のどこかに悪魔の実が蘇る
それを食べて現れたのが、さっき撃ち落とされた烏なのだ

「奴もわしらを引き裂こうとしているに決まっとる
度々街に現れるんだ」

「……そうかい
爺さん、ありがとよ」

その頭とは別人なんだから、必ずしも引き裂こうとしているとは言えないと思ったサンジだったが、余所者がそう首を突っ込んでいい話じゃないと思った
それに、話からするに海賊は良い印象を持たれていない
出来るだけ早くこの島から離れたほうが良さそうだ

急いで戻って、これを伝えて……ナミさん達に温かい飲み物を淹れなきゃ

サンジは緩んだマフラーを引っ張り、食料を抱えると船へ向かって歩き出した






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