「しねえ!!」
ベラトリックスの放った呪文がシリウスに迫る。
まずい、彼が対応しようにも、間にあわない!
「シリウス!!」
シリウスが、ふっ飛ばされ、あの嫌な予感のするアーチに近づいた。
本能的にまずい、と血の気が引くのをハリー・ポッターは感じていた。
が、シリウスがそのままアーチに近寄る事は無かった。
グレーのローブにフードを目深に被った何者かが、シリウスの腕を引っ張ったのだ。
「シリウス、大丈夫!?」
「いって……な、なんとか、な」
「良かった……」
「無事を喜んでる場合かい!?まだ勝負はついちゃいない!!」
また呪文が飛び交い始める。
ハリーはその中に、先程のフードの人物が混ざったのが気になったが、やがて忘れてしまった。
「……ところで、シリウスを助けたあのグレーフード誰?」
騎士団の本部となっているブラック邸に集まった時、トンクスが誰もが忘れていた事を話題に上げた。
そういえば、とハリーも釣られて思い出す。
「……そういや誰だ?あれ」
「本人も分かんないのか……」
「敵じゃなさそうだったし、その後忙しくなって忘れてた」
誰だったんだ、と皆がやいのやいのと議論する中、玄関のドアが開く音がした。
それに気づいたのは耳が人一倍良いレイだけで。
誰が来たのだろう、とそっとその場を離れ静かに玄関に向かった。
入ってきた人物は、あのブラック家の肖像画と話をしている様だった。
……ブラック婦人はシリウスと仲が悪く、騎士団の連中には怒鳴ってばかりだったのに、あんなにも穏やかに話している。
誰だ?と訝しげに眉根を寄せたその時、その人物がふとこちらを見た。
……何処かで見たことあるような。
あと、どことなくシリウスに似てるような。
「……あ……ああ。貴方だ、貴方だ!僕を助けてくれた恩人は!」
「……ん……?」
「その目は間違いない、レイさんですね?」
「あ、あぁ。そうだが……」
とりあえず肯定する。
と、男は端正な顔を少しばかり綻ばせながら俺の手を取った。
しっかり握られてしまい、逃げられそうにも離れられそうにもない。
「覚えてませんか、あぁ、その前に名乗るのが先ですね。
お久しぶりです。レギュラス・ブラックと申します」
「……お前、あの時死にかけてた?」
「! そうです、あれからなんとか回復して……今は、この通り」
「そうか……よかった」
「それもこれも、貴方方に助けていただいたからです。
本当に、ありがとうございました」
何やら色々振り切れてるらしいレギュラスさんは、なんと俺を強く抱きしめて、頬にキスを落とした。
まぁ、そこまでは良かったとしよう。
丁度玄関から入ってきたスネイプ先生とばっちり目が合ったり、後ろのリビングに続く部屋からリヴァイとかシリウスとかルーピン先生とかが出てきたりしなければ。
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