「レイがいない」

その事実に気づいたのは、壁外調査から2日経った時だった
いつも期限を守るレイが書類を出さないので様子を見に行けば、もぬけの殻
班員を探そうと思ったが、全員死亡が確認されていた

幹部、そしてそれを知る一部のメンバーはまさか、と思った
あいつが?リヴァイ、ミケに次ぐ実力者のレイが?

死んだ、というのか?

「………いや、嘘、でしょ?」

「……だが、レイは何処にもいない」

ハンジが弱々しい声を出した
それエルヴィンが追い打ちをかけるがの如く、事実を述べている

「帰ってきてから、匂いがしなかった……そういうこと、だったのか」

「………チッ
あいつが死んだ?
馬鹿言え、死んだ訳無いだろう」

「でもっ、リヴァイ!」

「俺の勘だが、奴はまだ死んでない」

リヴァイは何故か、確信づいていた
根拠も糞もない
ただ、レイは生きている
おそらく……壁外で

「……はは、シックスセンスってやつかい?
状況を見れば、……レイは死んだと言える」

「……そうだな、その通りだ
だが俺は……納得行ってねぇ」

「………そうか」

リヴァイは壁外調査の報告を、死亡届、負傷者のリスト作りを、全てを凄まじい速さで済ませた

そして、連日壁の上に立つようになった
ただじっと巨人の居る地面を眺めるリヴァイを駐屯兵団は咎めなかった
時間の許す限り、そこに居た

今日も、来ない
そう半分諦めた所に、駆けてくる馬を見つけた

「……おい、望遠鏡貸せ」

「はっ!」

少しの期待を込めて、駐屯兵から借りた望遠鏡を覗く
倍率は低いが、無いよりマシだ
巨人はまだ気づいていない様だが、人が居る

……レイだ

「っリヴァイ兵士長!?」

「やっと来たか
待ちくたびれた」

望遠鏡を置いてトリガーに手を掛ける
引き留めようとする駐屯兵を他所に、壁から飛び降りた









「レイ!!」

自分でも驚く位に大声を出していた
馬に乗ったレイが俺に気づく

ここまで登ってこい、と言うと馬をひと撫でしてアンカーを打った
そこで巨人に気付かれた
不味いが、急かすとミスをするかもしれない
それに、巨人とはまだかなり距離がある
十分間に合う距離だが、あいつが何かしでかせば終わりだ
やっと俺の手の届く所まで来たレイを正面から抱きかかえた

「どうせガス残ってねぇだろ
首に腕回せ」

「ん」

ガスの残量を見ると、ほぼゼロだった
よくここまで保たせたものだ
どこか虚ろなレイを腕で支えると、壁を登った
下には巨人が居る
落とさないように慎重に引き上げる途中、レイの力が抜けた
気絶した、と理解した

「チッ……この野郎」

気絶している奴は運び難い
体格差が多少でもあるとなると尚更だ
自分より小さければ問題はほぼ無いのだが

登り切る手前で安心してんじゃねぇよ

残りを一気に登り切ると、事態を把握した駐屯兵が駆けつけてきた

「まさか一週間も壁外で生き延びたというのか…!?」

「そんな、無茶苦茶な!」

「うるせぇ、退け
あと、ここで見たことは誰にも言うな」

リヴァイがレイを横抱きにして運ぶ
この後、報告書や処理書や膨大な数の書類を書かねばならない事を想像して、また舌打ちした
壁を降りたのだ
それなりの罰になるだろう
口止めはしたが、どれだけ効くか分からない

「……心配させやがって
覚えとけよ、レイ」

呑気に眠るレイを抱えたまま、本部のエルヴィンの部屋まで飛んだ







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