×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
 
アウェイ 中編


若干見逃されてる。

それに、助けられたのは確実。

しかし、絆されないしお礼も言わない。

私には姉を守らなくてはいけないという使命がある。

「渡さない」

ヒュー、と姉を隠している飛ぶ。

あねの居るところへ到着すると彼女が出てきて俯いていた。

「どうしよう、見つかったみたい」

「え!?」

「付近にベビー5ちゃんが居て、見張ってるわ」

「そう、か……じゃ、行くよ」

「ええ」

姉は既に荷物を纏め終えていたのでそのまま飛ぶ。

「あ!」

ベビーの声らしきものが聞こえたが構うもんか。

「逃げられた!」

「追撃を!」

「馬鹿!死ぬだろっ」

何かぎゃあぎゃあ騒いているけど、くすくすと笑ってやる。

油断しているからだ。

多分姉だけを連れ去るとまた王宮に突撃されるからと姉を放置して待ってたんだろうけど、もう二人とも、慣れた。

二人でこの町から逃げ出した。


それから10日後、違う街で過ごしていた。

平穏平穏。

ーーコンコン

「はーい」

上機嫌でドアを開ける。

なんせ、今日はミートパイが上手く出来たからだ。

「見ーっけた」

「げぇ」

小さな子供がこちらを指差す。

この子は確かドフラミンゴの手下の一人。

「何用?」

「捕えにきたの」

「ふうん?トレーボルは」

「お留守番」

この子は小さいけど、れっきとした海賊で、人をおもちゃにしてしまうらしい。

「私をおもちゃにしようっての?」

「貴方をおもちゃにしてもみんな覚えているから無意味よ」

異世界人だからか消えないんだよね。

存在が別次元なのだろうか。

でも、おもちゃになったら姉を助けるのが難しくなりそう。

「じゃあ、なにしにきたの」

「くす。遊びにきただけよ」

悪趣味幼女が腹立ちすぎて帰れと追い払う。
次に来ても追い払うからと言い終える。
が、姉の悲鳴が聞こえてすぐさま部屋へ向かう。

ーーバン!

ドアを開けるとドフラミンゴが不敵に笑って姉を担いでいた。

「現れたな!ストーカー!」

リーシャちゃん、と涙声の姉が求める。

「フフ!今回は長いこと散歩出来ただろ?」

暗にわざと放置していたと言われて、ムッとなる。
ナタを相手へ放つ。

「地獄へ落ちろ」

ーーガン

当然のようにナタは跳ね返される。
トラファルガー・ローの防御により。
能力でここへ来るのは予測済。

「ロー、頼んたぞ」

「ああ」

自然にドフラミンゴが去ろうとするので「こんなことをしても永遠に心は手に入らないよ」と投げつけてやる。

「可哀想な雛鳥。独り立ちをしても愛情を欲しがる。手に入らなかったら奪うなんて、そんなことは無理なのにね」

姉の優しさがほしいのだろうけど、土台無理ってもんだ。
優しさは基本、強要するものじゃない。

「分かってるのに、やめられないんだね……おねーちゃん、迎えに行くから。その偽りを欲しがる馬鹿な男にせいぜい飢えを与えてやって」

姉は潤む目で頷き、ドフラミンゴは恐らく睨みつけているのだろう瞳を向けてくる。

「やめておいた方が良い。私を殺したら姉も同じように他の世界にまた移動する可能性が高い。おすすめしないよ?」

どうやって異世界転移したのか、条件も知らぬ。
そんな状態で殺めたら、色々不都合なことがあるに違いない。

「ロー、こいつを捕えろ」

「捕まえた後は」

男達の会話にクッと笑みを増やす。
こういうことを延々と続けるなんて生産性もない。
どこにも着地出来ない。
ずっとずっと繰り返していく。

牢屋に入れられた。
牢屋といってもローの部屋の中にある特別な仕様。
いつもここに監禁される。
悪趣味極まりないような配置。

数日してここから脱走するのもいつものパターンだ。

「いい子にしてろ」

入れられて言われるセリフも聞き飽きた。

「羽を持ってるのに無意味」

舌をベッと出して大人しくする。

「今頃ドフィとお前の姉も過ごしてる」

「おねーちゃんは喜んでないけどね。虚しい男」

ボスを貶しているのに怒ることすらしない。
挑発に乗らないだけかと思っていたが、単にドフラミンゴのことを馬鹿にされてもなんとも思ってないと知ったのはいつだろう。

「ほら、道具をやる」

ローは手持ちもない私に暇つぶし道具を寄越す。
まるでわざと脱走させている。
毎回同じことをしてくるのでさせたいのだ。

意に沿うのは姉を助けるためだ。
なんの考えがあろうと手を差し出さない選択肢はない。

「あと……今回は報酬を貰おう」

牢屋を開けて開放したと思ったら手を引かれて太ももの上にドサリと落とされる。

「な、なに」

一応目溢しさせてもらっているので、借りばかり貯まるのは嫌だ。
望みがあるというのなら叶えるのはやぶさかではない、かな。

顔をそむけず望みを聞くために正面を向いていると顔がスッと迫り、空白が埋まる。

ーーチュル

可愛らしい音と共に唇が離れていく。

「っ!それだけは嫌だって、私言ったよね!?」

「おれは欲しいと思ったらお前の意思の関係なんて考慮しない、とも言った」

赤面する顔を隠すように怒鳴ると堪えてない様子で返す男。
蹴りつけても手で受けて止まる。
そこは甘んじて受けるところだろ!

「腹が立つ!最低!」

「そう思うなら、おれの前に現れなきゃ良かったのになァ」

過去、こいつが幼い頃に出会った事を比喩している。
そんなの当時のことなんて未来に予期出来るわけがないだろう。

「大体、海賊なのに女を追いかけるなんてダサい」

「そこは誇れよ」

なんで嬉しそうなんだ。
ニヤッと笑う男に、何故か嫌な予感がする。
いつもと違う。
態度も、周りも。

「なに、なにを、企んでるの」

「鋭いな。ドフィとお前は近々家族になる」

ゾッと背中がかける。

「いや、なに?なんなの??」

「特別にヒントだ」

「ヒッ」

リーシャは久々に悲鳴を上げた。
心の底から出たもの。

「リーシャ」

名前を呼ばれたが震えで上手く頭が動かない。

「逃げられない」

逃げられると思っていたのに。

「助けてやる」

天の恵みと正反対な囁きが吹き込まれる。

「おれと契約しろ」

「けい、やく」

「ああ。それが行われる後におれ達も同じことをすれば、同じところに居られる」

じわじわ毒を耳に流し込まれ、染まる他に方法はなかった。


prev next

[ back ] bkm