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05


人間の自身でも最悪な気分なので、貴族達の誠意の見せ方は特殊と言える。
ローは手紙はどうだと聞いてきたので面白すぎて続きを読みたいとすら思えてきたと皮肉を言う。
そして、王家にしてくれるんだってと他人事の声音で報告する。
嬉しくて涙を流してありがとうとでも言ってほしいのかな。

「くだらなすぎだろ」

手紙を受け取ったことも後悔してそうだ。
一応なにか書いてあると困るからと気を使ったのに。
具体的な誠意をなにも示していないのだ。

「加護を続けてほしいってことでしょ」

「どちらにせよ。もう消したから関係ない」

お、どうやらもう消したらしい。
魔界でのびのびしている間にやってくれたとのこと。
代わりにさせてしまうなんて不甲斐ないな己は。

「手紙は加護を消す直前に送られたものだ。その次の手紙もある」

手渡された手紙は5枚も入っていた。
焦りが更に増えて、文面も最初の上からだったのがへりくだり、全てが懇願。
加護を戻して欲しいから、娘と会いたいから来てほしいと。

「分かった。会うよ」

「本気か?」

ローがそう聞いてくるのも無理ないこと。
人間に怯えていたのだ。
しかし、魔界に帰り、記憶が鮮明に思い出され、かつての記憶も更に刺激された。
そのお陰か、考え方にいつくか修正が入ったのだ。
弱小達に壊された心はもう元には戻らないが、魔族の記憶は当時から変わってない。
人間に踏みつけられたままではダメなのだ。
そう奮い立たせられた。

「私が終わらせる」

彼に頼み、当時の魔族の服を用意してもらう。
そして、王家宛に手紙を送り準備をする。
ちょっと派手だが、もう人間目線でもなくなったのでちょうど良い。
シャチらに頼んで加護をかけてもらい万が一の危害に対処。
向こうはこちらを格下に見ているのでわざとリーシャ一人だけで踏み込む。
敵前にして真剣の駆け引きだ。
加護が消滅しているのなら魔物も町に入り初めているだろう。
用意に用意を重ねて王家の城へ。
着くと、招待状であっさり入れられる。

「リーシャ王女のおなりー!」

まだ返事をしてないのにもう王女!
面白い!
こっちの話も聞かないなんて!
これぞ人間。
そうでなくてはやりがいもなし。

「おお。我が娘よ!」

「娘を無知で叩いて客人の潤いの相手をさせるのですね。初めて知りました。赤の他人様」

白々しく寄ってきそうな王を前に先手を打つ。

「なにを言うのだ!そなたは私の最愛の娘だろう」

「なん番目なんですか?」

「三番目だ」

「では、私が働いている間に働いてなかった他の兄弟達は反逆者として処刑してくれると?私があんなことをされたということは、王含め、血族で責任を取ってくれますよね」

そんなに偽物親子をしたいなら、付き合うよ。

「な、な!無礼者!」

「無礼者?無礼者という貴方は本物の親と無理矢理私に押し付けてる時点でそっちが無礼者です。王よ、加護は二度と戻りません。魔族達は決めました」

「そんなことは許されない!戻せェ!」

王の声と同時に近影や周りの兵がここを取り囲みそれぞれの武器を向けてくる。
ああ、短気。
ちょっと煽っただけで剣を向けてくるなんて、よもや破滅願望でもあるのか。
確実に滅びをお望みのようで、切りかかってくる。
しかし、加護によりバチッと電気が走り刃は直ぐに弾かれ、向けたやつらも飛ばされた。
加護消失による弱体化もあるのだろう。
壁にまで叩きつけられた兵はぐったりしている。
今までならばそんなことはなかったのにね。

「く!やれ!」

「やってどうするの?殺すの?殺したら本当に加護なんてもらえなくなるのに?」

疑問を重ねて兵士達にも揺さぶりをかける。

「加護を永遠に摘み取るのはあなたかな。それとも貴方?ああ、貴方かも」

指をさして具体的に教える。
反逆者と加護をなくした大犯罪者となるかもしれない。
男達はそれに今さら思い当たり、誰も向かってこなくなる。

「やっぱりそこに座ってるだけの奴が加護を消しちゃったんだね。無能を王座につけちゃ、自業自得」

「貴様っ」

王が高みの見物でいたのに、威勢だけは大きい声だ。
もっと近くに寄って言いにこれば良いのに。

「あれ?私に言ってる?もしかして」

リーシャは煽るような目で周りを見てから笑う。

「加護は二度と戻らない。二度と与えられることもない。それほどのことは人間達はやってしまった。今回だけのせいじゃなくて、今までの愚策も含めてね」

せつせつと丁寧に指導。
加護はなくなるけど今後のことにいかせばいい。
だってこれからは歩くことすら困難になるのだ。
魔物は加護が消えたからと手加減などしてくれない。
素の力でこれからは生きていかねばならないのを彼らは分かっているから、加護をもらいたくて必死。
でも、攻撃の意思を見せたということはいらないという意味に取る。
魔族でなく、人間の己に頼むというところが厚かましく、他力本願。
他力本願過ぎてどんなに祈っても届けられるわけもなし。
王は加護を戻せと叫ぶが叫ぶ相手が違うだろと指摘する。
魔族に頼みなよと放り投げるれば「お前はやつらのお気に入りだろ!」と全く検討違いなことを言われて、勘違いしているなと思う。
お気に入りでなくて、前の人生からの幼なじみ達だ。
仲か良いのは当然で、彼らは今回のリーシャのされてきた仕打ちに激怒している。

「貴方達は大切な人が魔族の接待に行かされたらどう思うの?間違えなくても叩かれる痛みをずっと味わわされて!ことが終わったら殺されるかもしれない!大切な人達が同じ目にあったら怒らないの!?死んだらよかったねって喜ぶの?」

魔族達はだから怒っているのだと暗に伝える。
兵隊の人達も意味が漸く伝達し、戸惑いの空気が部屋に充満する。

「それでも、貴様は人間だろう。人間のために動くべきではないか?」

「まさか!人間扱いをしてきたとでも本気で思ってる?だとしたらペットも飼うことをおすすめしないよ!特権階級の王様なんて特にね!人間扱いもされてない国のためになんで人間の真似を期待されるのか本気で意味が分からない」

「ちゃんと衣食住を用意してやった」

「望んでないのにねっ」

精一杯睨み付けた。
そう、望んでない。
それが一番の前提にあったものだ。
問答無用で後ろ楯のない力の弱い子供を権力をフルに使って逃げられないように縛り付けた。
そんなのでは用意してやったと白々しい。
王は特権階級の肩書きだから、下の人間なんて使い回しのゴミに見えているのだ。

「あと、王族にも入らないので。私は平民ですし、入れて下さいなんて言ってませんから。そして、私に攻撃したので話し合いもする意味もなくなりましたね」

「王に逆らうのか」

「逆らうっていうのは、逆らう相手がいるから逆らえるんですよ?どこに私より上がいるんですか?もしかしてさっきから椅子に座って言葉を発するしかないそこのあなたのことをさしてるんですか?私よりも下の癖に図々しい」

王は顔を真っ赤にして兵らに殺せと命令する。
が、誰も加護喪失の理由になりたくないので動かない。
でも、彼らは己のような接待を犠牲に生活してきたのだ。
全員同じく罪人である。

「では!さようなら!愚かな皆様」

お辞儀をして姿をこの場所から消す。
ローらの魔法で移動させてさっさと面会を済ませた。
待てとか聞こえる前に去ったのであとのことは見てない。


戻ってくると皆が揃っていて、待っていてくれた。
その気遣いに涙が溢れた。
人間の世界でこんな風にされたことはない。
それが途端に可笑しくて、笑えてくる。
狭い世界の魔族らはそういうことを同族にしない。
狭すぎてやる意味がない。
楽しさもなにも感じない。
昔から共にいるのだから考えもつかない。

(私はその枠から外れちゃった)

人間の世界で生きるのも無理だ。
どうせ待っているのは処刑なのではないかな。
あの国ならやる。
そうして加護を失った国は民が王のせいだとなにも知らないのに責任を取れと責め、王はお前達のせいだと責任を取らず、逆に逆ギレ。
兵達は真相を知っているので全員の責任と知っているが加護は既に失われてどちらにせよ国は滅ぶのだと理解していた。
王が伐たれ新たなる王が生まれたが加護のない身で歩けることも出来ず国は滅んだ。
魔物が彷徨く土地へと変貌した。
己と同じ境遇の子供らはなにも知らず滅びを迎えたことだろう。
この世での魔物は天災と同じなので国が滅ぼうと惑星規模では大したことではない。
滅びを受けた国は加護を失ったと知られているので難民も受け入れられるわけがなかった。
呪われた民として寧ろ蔑まれ生涯受け入れられることはない。

ちらっとシャチはリーシャが救ったのに救った相手から地獄に落とされるという洗礼をやった向こうを覗く。
良く見えるなと笑みを浮かべる。
見えた先では足をよたよたさせて歩くのがやっとな大人達。
子供も大人と同じくらいの早さで歩く。
子供のうちは加護の余波を受けられるというわけか。
大人になったら完全に残り香さえもなくなるんだろう。
よたよたになった大人を介抱するだけの存在に今や大人達はなっている。
無意識にリーシャがそうなれと念じた結果かもしれない。
子供は今まで大人に問答無用で摂取されてきた。
今度は大人達が子供らに命を握られる番だと。
正当な罰だ。
彼女がされたことを違う方法で起きているだけ。
彼女に真の安らぎがいつ訪れるかもわからないので永遠にこの国は己達の管轄となり管理されることになる。
ローも彼女が戻ってきたのでごまんげつ。
全員が人類を弄ぶのにも役に立つ。
全てがやっと元の通りとなったのだ。


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