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怒る魔法使い 後編


結局ゾロ達の強さはわからずじまいだと内心思ったが戦いかたが違うので仕方なし。

「でも、手伝います。今までの給料泥棒されたんで」

ムカッとしているのでそれをスカッとさせたい。
ローは嬉しそうに口角を上げた。

「決まりだな」

「連れていくのか」

ローがゾロにああ、と肯定する。

「じゃあ、早速行くぞ」

大きな刀を一本背負う男が先頭に立つ。

「はい!」

付いていくとサクサクサクサク進めて、今まで結界に頼っていたのが丸分かり。
弱い兵士を横目に通り抜けていく。
他国が攻めてきたなんて夢にも思わぬということ。

「スパイも怪しまねェとは」

ローは呆れに声を出す。

「それに関しては怠慢ですね」

トップは胡座をかいて伸び伸び暮らしていたもん。
障壁がなくなったことすらまだねているのではないか。

呑気で愚かな上層部。
ため息と共に、もうこの国の人間ではないから気にしなくて良いかと考え直す。

今までせっせと働いてきた私をいとも簡単に捨てたもん。
ついていくしか道はなかったが、王城の手前までいければ後は門の前に居る兵士を退かすだけ。

障壁の無い国など無防備なだけの国だ。
兵士もろくに訓練などしてない。
真面目にやっている風景など見たことがない。

ローとゾロは門番を騒ぎにならないように眠らせてしまい、するりするりと中へ入る。
その手軽さにローも嘘だろと言っていた。

「ゾロ屋、お前が奇襲をかけに行くと言った時に無理だと断言したが、撤回する」

ローは謝罪しながらもこの剣士についていくなんて律儀というか、苦労をしているのだな。
普通は止めるべきところだ。

「おれも久々に切りあいをしたいとこの国に責めたが、ここまで呆気ないとつまらん」

ゾロがつまらなさそうに言う。
ほんと、張り合いないよ。
簡単すぎて飽きてきたのかも。

中に入っていくとさすがに人が気付くのではと警戒していたが、障壁が今も効果をもたらしていると思い込んでいる使用人達や兵士達は特に不振がることなく流し見ていた。

「オイオイ、ここまで警戒心もないとは」

「甘やかしすぎた弊害ってやつです」

二年も驚異がなくなると怠慢にもなるのだ。
現に、兵士達は驚異など起こらないと信じているし。

リーシャもまさか、真実すら知らず平和ボケしまくっている体たらくに苦笑した。
これから平和なんてないのにね。

三人は王の居る部屋へ向かう。
そこに王が居ると分かるのはローの探知魔法によるものらしい。

魔法耐性についても障壁が阻み、無効化されていたので、簡単に分かったと言われ呆れた。
せめて、そういうのはやっとくべきだろうに。

自分の住む国だからとはっていたが、そこまで頼りにしていたとは。
万能だが諸刃の刃だ。

王の居る部屋には一応兵士が居るがやる気ゼロだ。
ローは眠らせて王の部屋をゆっくり開けた。
王は若い娘とチチクリあっていた。

人が懸命にはっていた中、ぬくぬくと過ごしていたのだ。

「む、何奴だ」

「果物を届けに参りました」

「おお!そうか、そこにおいておけ」

(うっわぁ、油断という次元じゃないよ)

暗殺目的だったらもう終わりだったろう。

「ああ、置いておく……ルーム」

ブオオン、と知らぬ感触が肌を通る。
男は刀を抜くと何かを唱え、王と若い娘は雷を浴びせられて気絶した。

「チョロすぎる」

ローは蔑んだ目で二人を見下げ、ふん縛った。
動かれたら面倒だ、と残りの王族や人家達も捉えて一まとめに一室へ閉じ込めた。

「この部屋を覆うように障壁を貼ってくれ」

「はいはーい」

大臣もぶっとばしたいし、国庫からも今までの障壁の代金をもらわねば。
その金は豊かだったら得られたものだ。

「あ、居ました居ました」

大臣も見つけて障壁をサンドにして横に潰した。
つぶれた声を出して苦しむ男に遠慮せず痛みを与える。

魔法使いの筆頭でもあるが、障壁を満足に展開出来ない。
穀潰しなのである。

「あく、あがが」

呻き苦しみ、5時間後に出してやろうと継続させた。
王族達の前でやっているので良い見せしめになる。

「魔法の障壁があった筈だ」

恥ずかしい姿の王が起きて煩い。
ゾロは今制圧しに行っているので説明はローである。

「それならなくなってた」

「なくなって!?ありえんぞっ」

「おれたちがすんなり入れたのが証拠だ」

消滅したことを今の言葉で理解したのかここに集められている全員が障壁による潰しをされている元上司に顔を向ける。

魔法に関して、そして、魔法障壁を魔法省の人間で貼っていると報告している総括なのだ。
現実は全く精度の無いスカスカな結界しか貼れてないのだから通ろうと思えば誰でも通れる。

通れないのは余程精神状態が宜しくない人くらいだろう。
前まではもうちょっとマシだったが手抜きする人が増えたからだ。

全員がそこそこ魔力を提供していればロー達も入るのに苦労したと思う。
さっぱりリーシャの障壁がなくなったことにより一気に消滅して、ひきづられたので余裕で入れた。

「お前達には散々煽られてきたな」

近隣諸国に障壁の余裕を持っていたのでチョロチョロちょっかいをかけていたのがこの国。

「今回は見せしめで済ませてやる」

リーシャはローがこっそり王しか持てない王の証である印をポケットにいれたのをさっき見た。

こんな程度のことではない。
国は間もなくなくなるか、属国になるな。
調印を持ち帰ったのなら。

ローは楽しそうに笑みを浮かべた。
王の娘がローを欲しそうに見ていて、今それやるの、と驚いた。

自分達も危険がある自覚したのに、自覚しないままな人も居るってことか。

「私が人質になります」

しゃなりと出てきそうになるが障壁で来れない王の娘。

「はァ?なにを言い出すかと思えば」

男は呆れた眼を女に向ける。

「この国はいずれ無くなるのに人質を取る意味なんてねェんだよ……分かったか」

子供に教えるように丁寧に口上する。

娘はまだピンと来てない。

間抜けな格好で大層な理由をつけて前に出てきたので恥をかいた形となったのにね。

「国があるからお前は王族なんだ。国がなくなったら平民その1になるだけだって言ってんだよ」

みるみるうちに顔を青ざめさせる王の娘に気分が上がる。

「そ、そん、な……!」

漸く飲み込めたのか。

王族のくせして、理解が遅いというか。

家庭教師は無駄な投資だったということだ。

税金の無駄遣いだった。

こうして呆気なく簡単に制圧した後は、ローにポストを用意すると言われていたが、断った。

ただの平民になりたいのだ。

もう労働はしたくない。

それにしても、景気が良い国に移住出来て万々歳だ。

たまにローが家に来るのは別の件だが。

「また来たのですか?お暇なんですかね」

「暇じゃねェよ。これでも国一つを落としたんだから引っ張りだこだ。誰かさんが手伝ってくれればここまで忙しくならないんだがな」

遠くで回って勧誘を誘っているが、無視した。

「就職しに来いよ。高待遇だぜ?」

「私はもうそういうのをしたくないんです。どうせ、利用して捨てるんですから。捨てられる前にこちらから捨ててやりますよ」

「気がはえェなオイ」

ローは刀をおろして椅子にドサッと座る。

「ふん」

ローとて王宮の回し者なのだから信用に足らぬ。

「おれはお前の報復に協力してやったっつーのに」

彼のセリフを右から左に抜かせた。

「お茶を飲んで帰ってね」

ドン、とお茶入りカップを机に置いてそのままキッチンへ。

勝手に飲んで勝手に帰れば良いさ。

「お前に会いに来たのにカップだけ残すのは酷くないか」

「はいはい、私の力がほしいだけなのよねぇえ」

「ちげェ」

男は否定するが、女は認めなかった。

「確かにお前の力は強いが、そこまで落ちてねェ。魔法がなくてもおれ達が居れば良い。お前を誘ったのは……」

「誘ったのは?」

ローは溜めを作り、思わせぶりに笑みを浮かべた。

男が立ち上がり女の前に来ると肩をぽんと叩いた。

「え?なに?」

「また来る」

こちらが沢山ハテナを量産しているのに、男はコップをクイッと飲み干す。

そのまま扉をくぐり謎を残していく。



「いや、言ってよ!」


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