×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
 
まざりもの 後編


羽で帰るのめんどくさーいとぼやくと彼が渋々、凄く愚痴をこれでもかと吐き出しながらおぶってくれた。
もっと早く素直に運んでくれればいーのに。
顔に出していたらげんこつで頭を殴られた。
ロースペシャルは今日もすこぶる絶好調らしい。
いたひ。

「カロリー消費にもなってねェ癖に」

家に戻るとぶちぶち言いながら下ろす。
律儀に運んでくれる所はとても良いと思う。
成績表があるならオール5を付けてあげたい。
え?付けられたくないって?
煩いっての。
ぼんやりしているとどこからかドアを叩く音がしてローと呼ぶ。

「なんだ?出ろと言うならお前を締める」

言う前に釘を刺された。
どうせ大した用もなく、なにも無い己を尋ねてくる者達だと直ぐに察して居留守を使う。
律儀にわざわざ出てやる必要はないのだ。
彼らのひーひーひーおじいさんやおばあさんが健在だった頃、悪魔族というその見た目と呼び方だけであしき物と断じられたことがある。
二度と面を見せるなと何もしたことなどなかったのに理不尽にも罵倒されたものだ。
元々そんなに外に出る性格でもないので従ったわけではないが、向こうも大満足なくらいは見せなかったと思う。
ソレからローを拾い、育てていたらいつの間にか時間も経過していて、じじばばのことなんてすっかり忘却していた。
だが、勝手にまたやってきた男達に辟易していた。
前来た時は王族だとか言っていたが王族の管轄の地区でもないので従う義理はないとローが対応して追い払った。
今更なにようだと冷たく対応する彼はかっこよかったのではないだろうか。
リーシャには愛ある怒りなので本当の冷たさを初めて見たかもしれない。
また来たのだろうと見なくとも分かる。
うんざりしながら戸を叩く誰かさんはそれから数分間粘ったが帰っていった。
ローも出ろと言わなかったのでこの対応は正解であったらしい。
彼とて不本意なので出るつもりはないと先に申告しておいたのは知っている。
王族の使いらしき何者かはまた来るつもりなのだろうな。
うんざりしているのでいつかはきっぱりとお断りせねばならない。
いい加減来られても困るだけなのだ。
逆に使者を何度も寄越すやり方は更にこちらの心証を悪化させているので。
と、まあ愚痴はここまでにしてまどろみタイムへと入る。
このうとうとしているときが堪らないんだ。
ベッドで横になると彼が毛布を持ってきてくれる。
ここまでくると瞼を開けられなくなり眠りについた。

数日後、ローにいつものように起こされぷんすか怒られる。
この子はいつからおかん気質になったのかと眠気眼でぼんやり思う。
その心の中が知れてしまったのかフライパンですこんと殴られた。
いたひっ。
絶妙な痛さに何故か感動する。
最初の頃は加減されていないものを受けてたんこぶを作ったものだ。
やったは彼だと言うのにあの気まずそうだった顔は今でも鮮明に思い出せる。
そこから徐々に弱さの調節が出来てきて今に至る。
あの強く叩きすぎて謝るに謝れない、そんな表情は二度と見られまい。
それがかなーり残念である。
漸く眠気も取れてきた頃、また扉が誰かに叩かれるのでうざったいなと首を振った。

「朝早くから申し訳ありません」

前の使者と違いノック一回だった。
しかも声が若い。
誰だろうと考えるが分からないが、ローに次は取り次ごうと話し合っていたので彼に出てもらう。
リーシャはあまり人前に出るのが好きではないし、顔もそんなに覚えられたくない。
その人がいい人か知る前に詳細を知られるなぞ背筋がぞわっとなる。
無差別に認識されるのを嫌がるのも知られると相手にとっては不快に感じるやも知れないのでローに一任しているのだ。
扉を開けた彼の声が聞こえる。

「私は――国第二王子――と申します。悪魔族であらせられるリーシャ様はおられますか?」

なんと、王子がでばってくるとは。
そこまでなにか近接した危機でもあるというのか。
しかも、悪魔族である己を頼ってくるなど、この世は魑魅魍魎にでもなってしまったのかと呆れる。

「なに用だ。王族が」

ローは王族の相手に威圧感を与えて扉を開けた。
そんなに威圧したら相手が話さなくなってしまうのではないか。

「すみません。私共の城へご招待したいのです」

なんと!

「仕方ない。やめてほしいからそれだけ伝えに行こう」

小声で伝えるとローは頷いて王子とやらに伝える。
彼は嬉しそうにご案内しますと言う 。
外出たくない。
王子はさも手伝ってもらえる前提で述べているものの、誰も一言だって手伝いますと発言してない。
単に行きますと答えたのみ。

単純なのか、お花畑なのか。

城に向かうまで馬車なので大変楽。

ローにおんぶされるまでもなくあっという間にお城へ到着。

鈍足で歩く度に兵士たちのこれじゃない視線が増えていく。

そぉです私は別に辞退しにきただけでぇす。

なんの呼び出しかは知らんがな。

聞くまでもなく断るよ。

城の中核に来ると王様らしき人が居て待ち構えていた。

ローは殺気立っている。

罠に嵌めれるかもしれないってさ。

うーん、今更?

王は来てくれてありがとうと、魔物が活性化しているので浄化と退治を頼みたいという。

うん、断る。

と、答えると同時に大人達に混ざっていた女が叫ぶ。

「悪魔に頼るなんて可笑しいです!」

同感だけど呼びつけておいて言う台詞じゃありませんな。

「ムツミよ、ソナタに発言する許可を出してない」

王と私を案内した王子が焦っている。

「なぜムツミ様が王の間に……?」

王子の小声が悪魔イヤーに届く。

ほーん?

なるほどなるほど。

勝手に無許可で入ってきたのか。

「王様!彼女は悪魔だって皆言ってました。なら、頼むのは可笑しいですよ」

可笑しいのは国家権力に発言する君である。

王様顔面が青くなってるの見えないのか。

間が酷い。

「誰か、聖女を部屋の外へ!」

牢屋とレッドカードを出さない辺り、聖女として残しておきたいんだな。

マズイと感じているが誠意がなさすぎる。

やっぱり無理。

かえって寝よ。

ローに帰りましょ、と伝えた。

彼は無言で頷くとこちらへ来て羽を出す。

その純白さに全員が目を奪われる。

「聖女の非礼、お許しを」

あわてて謂うのは男が天使と知ったカラだったりして。

「本人は反省してなかったのにな」

聖女ムツミの反応を思い出しローは嫌悪を示す。

それをいい終え、二人は帰った。

羽を使えば直ぐに帰れる。

なにもしないことを念押ししておいたのでこれで来なくなる筈。

だった。



一週間がたち、落ち着き例のことを忘れていた日、それは嵐のような存在。

「出てきなさい!」

嫌な予感のするこえにローが扉を開くと聖女が立っていた。

連れてくるなんてなにを考えてるんだ。

「あ、かっいい人!ねえ、あなた天使なんだって?聞いてるわよ」

なんの関係もないだろと詰ろうと口を開く。

「事前の連絡も寄越さないできておいて、なんだその態度は」

睨みつけてやれば変な顔をする。

「私は聖女よ!」

「この場所ではおれに5秒で消される弱い人間だろ」

5秒という発言に一歩引いた兵。

「天使が無条件に協力するなんてお伽噺じゃねェんだ」

「それなら!私と結婚させてあげる!」

発言に現場は凍りついた。

嫌われているが伝わる今、その発言は絶対に駄目だと周りは理解していたのに。

「してやる」

ローは影を背負って呟く。

「殺してやる」

目が笑ってないまま、聖女の頬をぶったたいた。

ーーバン

パチンという効果音ではなく、風圧が発生する音。

ぶっ叩いたので聖女は飛んでいく。

放物線をえがき、木に激突した。

兵士たちはその威力に引け腰で後退していく。

今のは100パーセント聖女が火に油を注いだのが原因。

怒らせる予定ではなかった兵たちも庇えない。

しかし、聖女を失う訳にもいかず癒やしの魔法を聖女にかけた。

「次は再生出来ないように死体にするぞ。その不愉快な汚物をさっさとおれの目に入らないところに連れていけ」

ローは兵士達に命令して家の扉を閉めた。

永遠に意思疎通が出来なくなった日となる。

リーシャ達の協力を得られなくなった国は聖女を働かせたが、聖女は魔物の侵略により命を落とし、急速に衰退した。




「フン。一年も保たなかったな」

ローは滅ぶ国を見ながら彼女の待つ家に帰った。

ぐうたらな悪魔は健在。

「おい、歩けニワトリ」

翼があるのに動きもしない女に運動をさせようとすると、だるいだるいと呟く。

甘やかすのは惚れた弱みだなと、己を叱責して無理矢理歩かせた。

「今日はチーフたっぷりのお肉がいい」

「あそこまで歩けたらな」

「えええええ」


prev next

[ back ] bkm