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ドロドロのセイギ


負けてしまった。

敗北は許されないのに。

ーーシュル

「……そこは」

体がとても熱くて、酷く頭がボウッとする。

黒を貴重とした格好をしている男が軽薄に笑う。

「良い眺めだ」

ずっと体を触られ、頬や唇に落とされるものに麻痺した脳は受け入れる。

剥ぎ取られていく衣服を目で追うのは、まだ認めたくないからなのだろうか。

相手は長年敵として相対している男、ロー。

地球を奪いに来た組織の一人で、総督らしい。

詳しい情報が未だに掴めてないのだ。

それに、いい歳なのに結婚できないこの仕事にもう引退をしようとしていた矢先の敗北に悔しさと諦めが混同していた。

上司から勝てという無茶な司令をこなして、地球を守っているというのに、肝心の生活がうまくいってない。

テレビを見なくなったのはコメンテーターとかいう評論家達に戦いを指摘されたせい。

助けた筈の民間人に家を壊したクレームをいれられるという意味の分からないストレス。

挙げ句の果に、最近入った新人にやけに馬鹿にされる。

実力者なのに、それを日々保つことがどれだけ大変か知りもしない者たちに疲れたのかな。

隙きをつかれて建物に叩きつけられたと思ったら、ローに襲われていた。

痛くないのなら、どうでもイイ。

「いつもなら抵抗するのに大人しいな……リーシャ」

誰かに名を呼ばれるのなんて久しぶりだから、ウルッと来そう。

「大人には、色々ある」

衣服を乱され、そこに赤いものをつけられても、あごひげがちくちくして、くすぐったくても、抵抗する気が失せていた。

「そうか。おれには好都合だ」

地球がそんなに魅力的なのかという疑問を長年抱くが、ほしいというのなら欲しいのだろう。

男は嬉しそうに動いて、リーシャを好きにした。

「ん、ん」

キスをして、まるで人みたいだ。

食べるように覆いかぶさる姿にそう感じる。

敗北エンドのその先はお決まりなのだ。

「しっかり意識を保っとけよ」

何度か目のキスの合間に言われて、頷いた。





ロー達は地球ではない惑星から司令がくだり、蒼き資源を求めて先住民を黙らせる仕事をしていた。

同じ伯爵位のキッドが毎回邪魔してくる女についての事をこちらへ流すのをコーヒー片手に聞いていた。

「信じらんねェ、地球の奴らは守られているのに背中を撃つなんてな」

言っているのは地球に来て情報ツールとして使用しているテレビの内容だ。

評論家と名乗る人間が地球のヒーロー等について苦言を申していた。

こちらの惑星では絶対にありえないことだ。

助けてもらっているくせに、文句を言うなど、ローたちからすれば部下達に半殺しにされている事態だ。

「お前、あの女どうする」

「あ?そんなの決まってるだろ」

キッドの番だったらしいヒーローの女。

必ずキッドの下へ引きずり込まれるのは決定している。

「お前こそ、あの女にご執心だったろ」

「フフ、そろそろ潮時だろ。あの女、会う度に生気が感じられなくなってきてやがる」

「そりゃ、早めに動いた方が良いな」

その会話をした13日後、ついに受け身を取らなかった女を地下深くまで追い詰めた。

抵抗しなくなり、いい具合に弱っていたので懐に入れた。

「ほら、持ってきてやったぞ」

組織の施設の部屋で甲斐甲斐しく世話をしてやる。

食べ物を運び、逃げる素振りも見せないリーシャに笑みを浮かべたまま近寄る。

そのまま口をつけて、互いに求め合う。

室内に厭らしい音がするが、身じろぎをせずに彼女はとろんとした目で喜ぶ。

「帰りたいか」

「帰りたくなんてない……あんな、ところ」

地獄だと吐く女にご褒美だと、また供給する。

「あ、ああ……っ」

「おれならお前を苦しめない」

甘い吐息をもらす女に内心ほくそ笑んで、最大の戦力を失った星へ指を立てた。


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