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元嫁回顧録


無理矢理結婚を推し進めて嫁にとねじこんだ癖に、自分の予想と違い七武海から海賊へ戻ってしまい離婚となった出戻り娘に対して「何故止めなかった」だとか「縁談なんて海賊の妻になった女にはない」や「外へ出るな」などと人でなしな発言を連発。

挙げ句の果てに「自分の夫も止められないなど恥を知れ」と親の癖に上から言う男を殴った。

「いい加減うるさいな」

殴られて海兵の癖に避けれなかった男は目を見開き魚のように口をはくはくさせる。

「クソ野郎が調子のって海賊に媚なんて売るから足元掬われるんだよ、間抜け」

七武海の元妻という肩書きを得た女は冷ややかな目で父親に吐き捨てた。

何様だよという威圧を受けた情けなさの薫る男は自らの娘を得たいの知れぬ者のように見ていた。




というのが、海に出るまでの経緯。
バツイチはこのとしで厳しい。
どうせ結婚できないならと海に出た。
なにがなにやらということもあるだろう、自分について説明しよう。

気付いたら結婚していたし離婚していた。
リーシャは父親の家に出戻った日に違う世界の記憶を得た。

それが知識として得られたことによって、この記憶は武術を心得ていることを知り、父親を今までのお礼としてフルボッコ。
娘を日々精神的に虐めておいてお前は陰険だの暗いだのと歪めていたから。

そりゃ、ネガティブにもなるし政略的結婚をさせられて鬱蒼とならぬわけもなし。

ふふ、思い出したら笑えちゃう。
あのぼこぼこにした時の男の顔。
他人なので父親の隠し財産とかをもらって海に出たお陰で金持ちスタート。

それに、記憶を得たお陰でおどおどした性格から脱却できて感謝だ。
それと、武術を修めた家系の記憶により、身を守れる術を得た。

海に出る前に修行をしたからブランクもありつつものに出来たので安心。
それと海に出のは二度と父親に好きにされたくないのと、元旦那をぶん殴ってボコボコにする為だ。

七武海なんだからいつ海賊に戻っても可笑しくなかったけど、せめて離婚してからやめてほしかった。
なんだか世間的に海賊と同類と見られてしまっていて、世間体が悪い。

父親が若手の七武海を取られてしまいたくないと急いで結婚させたのが最大の悪手だが。
今は海賊狩り、又は賞金首を狩るという仕事をしていて、良い経験となっている。

父親は私を悪魔憑きと呼んだが、父親の方が鬼畜の所業を娘に強いていたので無自覚の悪党は怖い。

さて、トラファルガー・ローはどこに居るのかなと笑う。

探している理由はもう察せられる事だろう。
七武海に入っておきながら早すぎる組織の抜け。
なんのつもりなのかね。

「ぐほっ」

気を纏い町に存在する絡む男を殴った。
ちょっとした手間だが、惜しまないよ。
なんせ、退いてと行ったのに退いてくれない非常識なところに惹かれた。

刺激的な口説き方ですこと。
お礼に殴ってあげた。
喜んで気絶したので放置して飯屋へ。
すたすたと席に着くと畏怖の瞳で全員見てくる。

絡まれて助けないばかりか通報もしない無情な者共の視線などへでもない。
かたり、と隣へ誰か腰かけるのを感じて横を向けば、そこには親よりも見た顔がある。

「さっきのは良いパンチだった」

トラファルガー・ロー、この島に来ているのは知っていたがなぜ隣へ腰かけるのか謎。
その視線はかつて向ける価値もないという冷たい目ではなく、興味のあるという熱を感じるものだ。

どうやら元妻だと気付いてないらしい。
気付かない程接してないからだな。
ローはやはり終始顔を見ている癖に一度も気づくことのないまま話始める。

「七武海がなんのようですか」

「七武海はもう止めた」

「へぇ」

「新聞よまねェのか」

読んどるわ。

単純にからかったのだ。

男はこの島の事を知っているかと聞き出してきた。

強いと判断して情報を得ようとしているみたい。

おどおどしていた妻の面影もない女だから思い出せるかなと思っていたが、興味が無くて捨てたから覚えている筈もない。

海賊だな。

「情報が欲しいんですか」

相手はああ、と低い声で唱えて期待に満ちた顔をする。

「手持ちが結構ある。言い値で買う」

いやはや、取引する気があるみたいで早い。
しかし、この島の人間でないので逆に情報が欲しいのはこちらなのだ。

素直にここは地元民ではないのだと告げる。

「別にお前事態に興味があるから気にしない」

気にしない?
ふうん、へえええええ。
随分と対応違うんですねぇ?

「私は貴方に用はないので離れて下さい」

捨てたんだからもう拾う権利はないのだ。

「少し観察させてくれ」

「……観察?」

変なことを言われて怪訝になる。
なんで観察されにゃならんのだ。

人をバカにして、顔がにやついてる。
元妻の偏見が入ってようとそう感じるんだからそうなんだよ。
寧ろ言えるの自分だけでは?

そうして心の中でスッキリさせていると男は男で完結させようとする。
うんと言ってないのに離れない。
夫婦だったときは義務で手紙を送ってもこなかったくせに。

昔の苦労か報われないな。
ローが居ないと何故か無理なのに自分が責められた。
おかげで隈も顔色も最悪になっていき離婚にになったときはやっと解放されると内心嬉しかった。

「あ、そうだ」

「ん?」

なんでお前が反応するんだ。

「観察させる代わりに私と戦って下さい」

「それくらい良いぞ」

良いぞと許可を得られた。

町中は騒ぎになるので自分の船のある付近にするかとついていく。
へぇ、ここにハートの海賊団の船が停めてあるわけか。
ローの後ろをちまちまとついていき、すた、と相手が止まり「ここにする」と言うのでこちらも止まって待つ。

「じゃあ始めるか」

「はい」

今の私はニッコニコだ。
やっとこの男をボコボコに出来る。

いくら異世界だろうとこちらは武に通じる門を叩いていた身。

「いくぞ」

ご丁寧に始めるのを告げてくる。
朗らかに笑みを浮かべていた女が不穏な顔をした途端、ローは怪訝に感じたが無視した。

たまたま会った女にそこまで気にしていてはなにも出来ない。

――パァン

「ぐはァ!」

一瞬の出来事で見ることは難しく、体感でしか分からない。
己の声が苦痛に揺れて聞こえていた。

「うん、よし、出来た」

リーシャは嬉しくて笑みを綻ばせた。
気を纏うだけでなく、気を飛ばす修行もしていたのだが今回は上手くいってくれた。

そして、崩れ落ちかけている男の眉間にそのままアッパーをかけて頭に足を食い込ませる。
擬音を撒き散らしてローは吹き飛んでいく。
コンクリートと壊しながら男の体は血に染まる。
足で地を蹴って一気に距離を詰めてから手を刀型にして叩き込む。

「く」

ローはそこで漸く刀越しに防ぐ。
大分苦しげでそれを見られただけで大収穫。

「ルーム」

「ふふ」

ローの能力は既に全て把握済みだ。

逃げるだろう己の後ろに現れる男の腹に一発きついのをお見舞い。

口から血を吐きながら吹き飛ぶ。

「なぜわかった」

「先読みかもしれません」

教えるわけもなくからかう。

「簡単に教えられちゃつまらねェ」

余裕ぶってるけどそんなに余裕はなさげだ。
こっちだって簡単に倒れられてもボコボコにする為にもっと必死に抗って欲しい。

血反吐をもっともっと自分に見せてたくさん苦しんで欲しい。

「ルー……っ」

唱えようとしたので手で男の頭を掴み地面に叩きつけた。
攻撃を和らげたのかたいしてダメージは負ってないみたい。

「残念」

「随分と殺しにかかってるな」

当然であるバツイチというのはお前がおもっているよりも重いんだ。
それに、無駄な結婚をさせられた身としては罪人に相当する。

回しげりをさけられたが上手くそこから手を地について追いかけた。
ヒュッと攻めが避けられなくて少しでもダメージを和らげられるように手をクロス。
そのまま衝撃に耐える。
ミシッと音がしたが、怒りがなくなることはない。
食らえ。

相手に向かって拳を撃ち抜く。

「!」

これが喉に刺さり男は吹き飛ぶ。

(よし!入った)

あとは男の腹に足を撃ち抜けば相手は寝込むかも。

追い詰めてから距離を一気に飛び最後の仕上げに止めを刺す。

が、男は視界から居なくなり能力かと笑う。
後ろからくる攻撃を避ければ悔しげな顔が見えて歓喜に震えた。

やっと報いられたとほの暗さに心を染めた。

「避けられ続けるとは凄いな」

「まぁ、それなりに自信があるから挑みました」

褒められても嬉しくないし、誰のせいで苦労したと思っているか。
思い出す度に憎悪に絞めたくなる。

男はこちらの気持ちなんて知らないまま、攻撃をせずに終わりだと体勢を解く。
慈悲でもかけられているかね。

彼は自由なのに、己の肩書きに余計なものをつけてくれたことに関してもの申したい。
言っても信じるのかどうか。

「このままコロしあいはしないんですか?」

「生憎、おれはまだ死ぬ予定はない」

そうだね、結婚をして政府に従ったふりをしてまでなにかをしたかったのだろうから。
それに、もう終わったらしい。
新聞でドレスなんちゃらな記事を読んだ。

「そう。まぁ今回は手打ちにしましょう」

次回は首を取れるといいな。
もう七武海ではないので捕縛出来る。
それにしても海賊を身内に入れて海軍は失策だった。

自分みたいに不幸な結婚をさせられる人も可哀想。

「一つだけよろしいですか?」

「なんだ」

「ご結婚されてましたよね」

「あんなの作戦の一つだ」

(私にとっては本番だったのに)

やはり始末してしまいたくなる。
息の根ってやつを。
憎悪20%上がったよ。

「今から私はハートの海賊団トラファルガー・ローの専属賞金ハンターになります」

男はキョトンとして首を傾げた。
にやりとやがて浮かべるその胡座のかいた態度はいつまで続くのか楽しみだ。

「嫌いじゃねェ、こういうのは」

「それはそうでしょうね」

くくく、と笑う男と真顔の女、はじまりはこんな風だったのだろう。


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