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アウェイ 前編


突然ですが、只今逃走中です。

ーーザッザッ

「はぁ、はぁ」

「お姉ちゃん、立ち止まらないでよね」

「わ、わかってるわ」

全く姉は体力も運動神経もない。

こうやって走るのも肺活量が全然足りないってさ。

追うのは七武海の一人。

なんつー大物に追われてんだって話だよ。

いやはや、身内じゃなきゃ打ち捨てて、見捨ててるレベル。

私達は平たく言うと地球からトリップしてきて、この世界にポツンと取り残されたんだけど、なんの因果か今追われている男を助けてしまった。

それが20年前かな。

歳を取るのも緩やかだと知ったのも後々。

助けた人が後に大海賊になって私達を見つけるなんて思ってなかった。

正確には私の姉だが。

どうやらお好みらしい。

しかし、私達の倫理観は一般的で、海賊なんてノーサンキュー。

大物すぎる男に気に入られるなんて人生設計に入ってなかったよ。

姉がお人良すぎたせいだ。

「は、気配っ」

前から人影が姿を現し、止まる。

「何度逃げても無駄だ」

悪役宜しくなセリフを宣うのは、黒い容姿とも言える奴。

本当にこういうセリフいう人が居ることに泣きそうになる。

どういう気持ちでそれを言うのかかなり気になるし。

悪役の宿命なのか。

「そんな間抜けな台詞を、恥ずかしくないんですか?」

何度だって逃げてやるさ。

「恥ずかしさより前に、お前に呆れる。逃げられるわけがねェ」

王下七武海の二人に追われてたら誰だって同じことを思うかもね。

この男はドンキホーテの部下、それも幹部であるトラファルガー・ロー。

忠実な腹心だという。

知ってる世界とかなり乖離しているので、なにが起こるか予測不明。

「お姉ちゃん、飛ぶよ」

異世界特典の翼を使い姉を持ち上げて飛ぶ。

男の能力を使われる前に。

青い膜に囲まれる前に範囲外に出た。

「よし、行けた」

逃れられたので急いで運ぶ。

飛んでいき、姉を隠す。

「隠れてて。捕まらないでよね」

一言添えて再び飛び上がる。

(どこへ行こう)

目くらましで違う島へ転々と行く予定。

そうして彼らの目を欺く。

(私達は彼らの奴隷じゃないもん)

ローはローで私を狙っている。

と、口説いているものの、なんか信用できなくて嫌だ。

「あ、バイト募集してる」

お金とカモフラージュの場所が必要なので、隠れ蓑にはうってつけだ。

早速酒場の芸人として面接して雇われることになった。

手品は得意で、難易度も高くて民衆受けは良し。

早速布面の少ない服を着ていく。

お店の裏口から入るのだが、裏口には天敵が居て入れず。

もう嗅ぎつけたのか。

「ち、しつこい」

ドフラミンゴに捕まるものかと意気込む。

「ここは一つ」

敵に見つかる前にこちらが見つけられたのは幸運だ。

踵を返し、ローに見つからぬように違う方向へ行く。

街を出た。

このまま引き離していけば、いける。

あと、レベルアップしないとね。

この世界とは違う存在だからか、レベルアップが出来る。

姉も出来るがレベリングをしないと一人じゃなかなか上がらない。

少しずつ上げていくものの、条件は手探り。

街に行くと居るゴロツキを張り倒し、レベルアップする。

「変装!」

ある日、レベルアップした時に変装というスキルが出てきた。

試しにやってみると瞳の色と髪の色が変わった。

うーん、整形並みの変装を期待していたんだけどなぁ。

でも、変装なしよりはバレにくい。

そうして逃走資金を稼ぎつつ、土木の仕事を熟す。

泥臭いならばローも近付かないと踏んだ。

それに、無関係と考えられて見つかりにくい。

兎に角、出来るだけ遠くに逃げたい。

平穏にまた暮らしたい。

それを邪魔するのなら誰であろうと許さないだけ。

土木に勤しんでいると侵略者が町へ来た。

海賊とのこと。

海賊に嫌なイメージがついているから、直ぐに逃げる。

しかし、火の手が放たれて上手くいかない。

女の人ばかりを狙う。

ーーザク

「があ!?」

手を伸ばそうとしてきたのでその手を切り裂いた。

反撃されたからか、相手が怯む。

この女、とか言うが逆に言いたい。

この男が!

「わらわらと」

次々追っては来るので、切っては進みを繰り返す。

「ぐぎ!」

「鬱陶しい」

人数はあとどれくらいなのだろう。

この島はもう無理だ。

灰になっていく町を見て判断する。

ーーヒュ

ーードス

「ううう!」

矢が首を掠めた。

このままでは矢でやられてしまう。

飛んでいるのは駄目だ。

降りてそのまま走る。

「町選びに失敗した」

くじ運が悪い。

「居たぞ」

海賊達が私を囲む。

能力かとか言うが、何を言ってもどうせ信じないし、伝える気もない。

(お姉ちゃん、逃げ切ってよ)

祈る。

「捕まえろ」

号令に海賊達が跳びかかる。

ーーヴーン

「あ、こ、これって」

体になにかが通り抜ける感覚に目を開く。

次の瞬間、自分も男達も体が真っ二つになった。

男たちはパニックになって煩い。

「どうやらここまでのようだな」

曲がり角から体を出して姿を見せる。

「気付いてたのか」
お)は
変装はスキルで完璧な筈だった。

「半信半疑だったがな」

飛ぶのを見て確信したらしい。

本当に不運だ。

「何故私まで切ったの」

「切らなきゃ逃げるからだろ。当たり前のことを聞くな」

「貴方の所にもドフラミンゴの所にも、私は行かない。どんな拷問をされても姉ちゃんは渡すものか」

キッと睨みつける。

「おれはお前さえ見つかればどうでも良い」

ローは切った上半身に膝を付いて屈む。

ーーグ

そのまま顔を掴まれて唇を奪われる。

だから!

こういうところが……クズだから嫌いなんだよ!

首と顔を振って振り払うがパーツの無い体では手足をバタつかせても無意味。

「私に触らないでよ」

「別におれのものをなにをしても良いだろう」

いいわけ無いだろ!と怒鳴る

「なにを怒ってる」

「貴方が自分勝手なところ!」

「海賊が自分本意なのは当然」

開き直ってる。

だからってなんで私を狙うかな。

ローをどこかへやりたくて暴れるけど、体のパーツ不足で無理。

グネグネとして避ける他ない。

「面白いな」

こいつ、知ってたけど外道だ。

うねうねしなくちゃいけないのはこいつのせいなので、笑われる権利は無い。

イラッとしたけど、翼を出して下半身を回収。

「馬鹿は飼い主の所にでも尻尾振っとけ」

「この町から出るんだな」

いや、話聞け!

「また会いに来る」

会いに来てるんじゃなくて、追ってくるの間違えだろうが。

青筋を浮かべて町から逃げた。


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