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その過去は置いてきた 後編


リーシャもローも結婚しただろう後にも変わらずに日常を過ごしていた。
しかし、母親がある日父の弁護士を隔てて対話を望んできた。
その時はローと婚約していたので、ローと共にという条件付きで対話を許可。
家事は出来るのでローと家を作っている喜びを知り、今は幸せの真ん中。
邪魔するようなタイミングで話しかけてくる母親には辟易する。
で、弁護士も同席してもらい会った時には母は一人。
相方はどうしたのだと思ったが敢えてなにも言わない。
不幸自慢も幸運自慢も己から聞く等愚行。
座ると母親は弁護士を気にしつつも久しぶりねと笑う。
それに対して冷たい眼を向ける。
冷ややかな目で見ている娘を見ているのに気づかぬ愚母はにこやかに私の家に戻ってきて欲しいのと勝手なことを言う。
どの面下げて言ってるんだろうと思うのも当然だし、ローも鋭い瞳で観察する。
やはり、抹殺した方が良かったなと悔やむ。

「挨拶は良いから早く用件を」

リーシャは話を早く終わらせて煩わしい今日を済ませたいのだ。
母親は少し困ったように目を向けてきて帰ってきてほしい、共に暮らそうと言い募る。
無理だ、それに今はローと暮らしているのでそちらに移り住むメリットもないと伝えた。

「そんな、勝手に決めたの」

ローと住んでいることを責められたが自分は結婚まで誰にも反対されずにしたくせに。
娘はダメ母は出来る理由にはならない。

「私はもう独立しているし、貴方にはもう家庭もある。なにが問題なのか」

「貴女はまだ若いのよ。同棲なんて」

「若いって、お父さんとは18の頃から婚約していて19には結婚したのに」

娘を産んだのも早かったので母はまだ若い。
だからこそ男性とすんなり結婚できたのもある。

「私は良いの」

「謎の自分ルールを押し付けるのをやめて。それに勝手なのは結婚するのを私に言いもしない貴方なのでは?」

「それは……私たちはもう大人だもの」

「大人だから子供のことを無視して結婚。別に興味もないからどうでもいいけど、もう無関係なのにこうして連絡してくるだけに、大人としての責任感もないみたいね」

都合が良すぎる大人の感覚である。
母は焦れているみたいで暮らしましょうと言ってくる。
そんなに暮らしたい理由をローが調べてくれた。
結婚生活で己の家事力が男性側にばれたのだ。
男性は娘が家事を担っていたのではと疑い、お弁当も嘘だったのかもしれないと思い始めているらしい。
今さらなことだ。
娘が縁を切ろうと申し出た時に居たので違和感と、結婚式に出ないことに不信感を持つべき。
結婚生活に夢見てアドレナリンでも溢れていたのではないのかな。
腹のたつ思考に拒否反応を示す体。
愚鈍な男と愚の骨頂な母親と住むなどごめん被る。

「私は家事もなにもしないけどそれでもいいの?契約書を作るからその場かぎりの発言という将来の言葉は使えなくなるよ」

娘を家政婦にさせるつもりだった母は動揺して、それでも良いわと精一杯のコメントを返す。
全くもって無駄な台詞だ。
話し合いも時間の無駄であるな。
ローも同意件だった。

「なぜ貴方の現在の夫に私の作った弁当とボタンを自分の手柄にしたの?ずいぶんと娘をバカにしてると思わないの?」

母は自分が家事を出来ないと思われて幻滅されたくなかったのだといういくらでも改善出来ることをすらすらと喋る。
機械にでも生まれてこれば良かったのに。
呆れて「なら、私に教えてくれとか言えば良かったのに」と愚痴る。

「いやよ。だってみっともない」

「娘の手柄を横取りして自分の悪事がバレると今みたいに帰ってこいという都合の良すぎる要求は貴方にとってみっともなくないのか。私は貴方が母親で凄く恥ずかしい。私の母親と二度と名乗らないで」

「親に向かって」

「あー、貴方って親だったんだね。忘れてた。恋に溺れて娘の存在を忘れてた親が親って自称するのは聞いてて痛いから」

恋をするのも結婚するのも好きにすれば良い。
ただし、自分を巻き込むのなら別。
母親に弁護士が事前に用意していた育児を放棄していた証拠を見せて、争える準備は出来ていると言えば母はびっくりした顔をする。
自分が立派に娘を育てたと思い込んでいる女にとっては痛手な肩書きだろう。
相手の男がこの罪状を知っても結婚を維持してくれるかな。
母は焦った顔をして、透かさず弁護士がもし今後こちらに連絡や接近をしないのならば訴えずにいると伝えれば、母親は青白い顔で契約書を書いて脱兎の真似をした人のように慌てて事務所を去る。
ローはリーシャを抱き締めて良く頑張ったなと慰めてくれた。
弁護士の方にも今の音声も録音しているのでいざというときにはどうにでも出来ますと述べ、流石は資産家の雇った腕利きだと感心。

弁護士に脅されたからか、ぴったりと電話してこなくなったらしい母親。
怯えるのもあの人ならではだ。
娘よりも権力が怖いらしい。
今頃自身の家事力のなさに責められているかしているだろう。
男も家事が出来なかったからと愚痴るのはお互い様だろうな。
そんなの、それこそお手伝いがほしかったのにと言ってるようなものだ。
お互い利益を求めて結婚したのなら二人だけで終わらせておけば良い。
リーシャは知らないままだが、ローが個別にちくちくと復讐をしていた。
その成果が今回のことなのだ。

ローに後ろから抱き締められながらテレビを見た。
母の再婚相手がちらりと写ったような気がしたが彼がキスをしてきたのでそちらに気を取られた。

「結婚詐欺とは恐ろしいですねー」

「私も気を付けないと」

アイドルの笑いを取るコメントが耳についたが、雨の音で直ぐに気を取られた。

「結婚詐欺だって」

それだけ拾った単語を話題の為だけにローへ投げ掛けた。
しかし、ローはくすりと笑って否定する。

「どうせおれ達には縁もねェことだ。放っておけ」

「ただの話題提供だってば」

「フフ、確かにお前は引っ掛かりそうだな」

男がからかえば女はひどっ、と笑みを浮かべながら雨音がする部屋で日常を費やした。


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