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平凡を見初めた野獣


好きだとこのかた言われた事がない十七年。
今日、初告白された。

「返事は一週間待つ」

一週間は長すぎやしないかと思ったが考える時間は必要そうだ。
学校に着くといつもの日常にいつもの友達。
バス停を使用して通うので歩く事はあまりなく結構楽だ。
友達に話しかけられ彼氏のノロケや昨日あったテレビ番組の話題など絶えない。
だが今のリーシャには一つも耳に入らなかった。
それは名も知らぬ男の子からのバス停での告白劇が頭をグルグルと回っているからに他ならない。
見たことは時たまあるが話したこともないし目が合う程度だ。
髪が赤いなぁ、としか印象を抱いていなかった人が自分に好きだと言ったことにまだ実感が持てない。
考えている間に時間は経ち放課後になると我に返った。
どれ程考え込んでいたのか。
恥ずかしく思いながら教室を出ようとすれば教室がざわめく。
どうやら校門に学校が違う学生が立っているらしい。
今は気にする余裕もないので見物せずに廊下を出て下駄箱に行く。
玄関を出て校門に行くと周りが校門をチラチラと見ていたのでまだ学生がいるのだろうと予想し通り過ぎようと前を向くと立ち止まった。

「待ってるのは迷惑だったか」

「い……いえ……」

告白してきた男子だった。
まさかの登場に固まっていると真っ赤な髪を逆立て学ランを着崩した相手は鞄を持つと言い持っていたスクール鞄を取る。
慌てて大丈夫だと言うがさっさと歩き出してしまい強制的に下校する事になった。
お互いの靴の音だけが聞こえる中、最初に口を開いたのは彼。

「名前、聞いてなかった」

「え、あっ………リーシャ、です」

「キッドだ」

可愛い名前だと一瞬思い頬が緩む。
キッドは通う高校の名前を言い学年も分かり同じ歳だと判明した。
リーシャも学年を言い、やはり告白されれば聞きたくなる事を尋ねる。

「あの、ですね。キッドくんと……話した記憶がないっていうか……」

「あ゙ー……それは、だな」

「う、うん」

一目惚れ、と言われまた身体が固まったのは言うまでもない。





次の日、予感していた事は当たり友人に問い詰められるという今だかつて体験したことがない事をされている。
あの人とは一体どういう関係なのだと聞かれ答えに困った。

「と、友達だけど……」

だが誰も納得しなかった。
何でだと反論すると友達が取り出したのは雑誌でページを開くとバン!と机に広げた。
そこにはキッドの写真が載っていて『街角で見かけたイケメンズ!』といくつかの写真も掲載されていて思わず目を近付ける。
よく見ると説明には応募で送られる写真を使っているのでモデルではないようだ。
けれど友達は力説して「彼は今人気のキッドくんなんだから」と鼻息を荒くしていた。
写真が掲載されてからというもの追っかけが出来たらしい。
リーシャはへぇーと感心する。

「感心してる場合じゃないわよ!キッドくん取られちゃうよボーッとしてたら!」

「取る取らないとかわかんないや……」

「分かりなさい!」

「は、はいい!」

なぜか迫られ背中がのけ反る。
今日もキッドは校門で待ち伏せしているのかと考えると不思議に感じた。
昨日は明日も行くと言っていたから待たせないように早めに出ようと心に決めた。
放課後になり早足で玄関を出ると赤い髪が見え声をかけようとすると隣にこの学校の女子生徒がいて話している。
向かう足を止め様子を窺っているとキッドの好きにならないから無理だという言葉が微かに聞こえた。
恐らく彼女は告白か何かを彼に伝えたのだろう女子生徒が顔を暗くして校門を出て行く。
それを見て行こうか迷ったがタイミング悪くキッドの方がこちらを見付けてしまい歩み寄ってきた。
首を傾げた後に帰るぞと言われ頷くことしか出来ない。
昨日同様に互いが喋らない空気が最初だけあって途中から彼が口を開く。

「近くのファミレス寄らねェか?」

「は、はい。行きましょう」

初めての彼との外食に緊張しながら店に入り案内された場所に座る。
メニューを開きリーシャはハンバーグポテトを頼んだ。
それは良いのだが距離が近い気がするのは気のせいか。
メニュー表を元の場所に戻した後も距離は変わらない。
ドキドキとするのは告白された相手で意識しているからだろうか。
キッドは腹減ったな、と呟き携帯を触り出す。
リーシャも持っていたが何かをする心の余裕がない。
隣で弄ぶキッドに呼ばれ振り向くとケータイ番号を交換しようと言われ慌てて出す。
赤外線でし終わると電話帳にユースタス・キッドと登録されていた。
それを見ると何だか告白された事を実感する。
今更と自分でも呆れたが経験がないので仕方がなかった。
だが実感すると同時にキッドがリーシャを好きだと言った事を何故かと疑問に感じた。
ハンバーグポテトが運ばれてきて隣を見ると彼が頼んだ海老チリは既に置いてあったので食べ始める。
もぐもぐと食べていると横から視線を感じ手を止めるとキッドにどうしたのかと聞く。

「食べる姿初めて見たから、悪い……」

「い、いや……へーきです」

そうしみじみと言われると食べにくくなる。
拙くなった箸遣いにいつもより食べ終わるのが遅くなった。
完食した後は店を出てまた二人だけの空間に戻る。

「キッドくんさ」

「あ?」

「私なんか、好きになっていいの?」

「………んだよそれ」

「だって……ねぇ?」

キッドは不機嫌な表情になりリーシャを見詰めると何を思ったのか手首を掴み早足で歩き始める。
抗えない急な展開に目を白黒させていると着いたのはモール。
口を開く暇もなくゲームセンターのプリクラのブースに向かっていく。
適当な場所を選び素早く入ったキッドは小銭を入れてリーシャの手首を離す。
ようやく落ち着いた移動に今度はプリクラの写真撮影と目まぐるしい。
ハイ、チーズ!と機械音声が言うので反射的にカメラに顔を向けた。
キッドも無表情でカメラ向かう。
二回目は突然顎をグッと上に向かされ唇を塞がれた。
一瞬の事でほうけたリーシャに構わずキッドはギュッと抱きしめてくる。
身体が硬直して言葉を発っせないでいると馬鹿か、といきなり罵倒された。

「好きでもない奴にこんなことしねェ」

「っ」

「お前は俺が好きじゃなくても、これから機会なんていくらでもある」

「うっ」

尤もな事を言われたような気がする。
もう一度キスされ二度目の抱擁を受けた。

「簡単に誰かを好きになんてなんねー俺が好きになったんだ。自信持ちやがれ」

「が、頑張ります」

精一杯返せたのがその言葉だった。
完成したプリクラを見て悲鳴を上げたのはもう少し後のお話しということで。









これが肉食系男子というものですか


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