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亜人はハブられてます


虫のなかでも最も人類を殺傷している蚊。
この漢字を使うだけでも大変体が痒くなる。
異世界転生をして、生まれた種族がもしそれならば、人生が大変生きにくくなりますね。
残念、蚊でした。
しかし、おやまぁびっくりなことだけれど父も母もかではなかったのだ。
母は蚊に血を吸われたから汚染されたのだと被害者ぶって育児放棄したけどさ、例の父に内緒で貢いでいたホスト、確かかだったよね。
どう見ても明らかな不貞である。
こうして、無事蚊という亜人にのぞまれぬまま生まれた。
物語はそこで終わらない。
蚊ってーのは確かに血を好むかもしれないけど、それってぴんきりなんだと思う。
しかも、風評被害と偏見の宝庫。
亜人なんだから知っている虫の生体とは違うわけであって、人に避けられる真似などしたこともない。
赤ん坊だからミルクだし。
ミルクさえくれないので、母親の血液を無理矢理強奪して貧血にしてやった。
元々生むと決めたのはこの人だもん。
母親がそんな風になるので、誰も近寄らないけど、母に関しては完全に自業自得。
ホストは大人だから守れるけど、こっちは赤ん坊である。
血を強奪といったが実際強奪してるのは血液ではなく、血の中にある鉄分。
つまり、普通の食事で得られる。
だというのに、育児放棄してなにも栄養をとらせないので体で払ってもらったまで。
動けないし、自分から取りにいけないしさ。
となると、一番近しいやつから貰うことしか現時点で出来ないってわけなのだ。
他の人から取ったことはない。

「ぷはー!人生初の食事!」

父親には母親が不貞していたことを密告して、その代わりにお金を貰って早々に一人立ちした。
ついでにホストの男は知らんぷりしたのでごっそり鉄分をもらって一ヶ月まともに動けなくするという闇討ちを行っている。
その際にうっかり、男性の機能を二度とあれしてやったので、己のようなクズな親は誕生しないだろう。
お前さえ引き取ればひもじい思いしなかったし!
と、旅をしていると妹を担いでやってきた男と会う。
なんていうか、聞いてみたら毒にやられたとか。
血の中に混ざってしまっているのでヤバかったのでサクッと血の中から毒を分離させた。
そうして救って去ろうとしたらお礼がしたいと言って食事に誘われ、かの亜人であると話したが恩人であるのに関係ないと言われ、枕を涙で流した。
それから、彼はロー、妹はラミと名乗り一緒に旅をした。
モブ子は血液を抜いて貧血にするという技があり、モンスターなどの討伐が格段に容易くなった。
と、喜ばれるのでついつい貢献しちゃう。
これが漫画だったら裏切られるとかあるかもしれないが、そんなことはなかった。
ローは義理堅く、ラミは普通に性格天使。
死角のない兄妹である。
そうしてめきめきと名前が売れてくる三人組の冒険者。
登録をしているので指名なんてものも入る。
異世界っていきるの大変なんだよ。
現代で亜人ルートも良いけど、異世界での方が仕事があるので稼ぎやすくはあるな。
ローと久々の休日を過ごす。
ああ、亜人と言っても人の姿をとっているときはちゃんと普通に見えるんだけど風邪とかで弱ると触角とか出ちゃうんだ。
今は弱ってないので紛れ込める。
それだけは凄く良いシステム的生体。
多分偏見で生きてきた亜人らが必死に会得したものなのだろう。
それがDNAとして刷り込まれている世渡りする術。
決して貢がれ父親ホストには感謝せん。
彼とアイスを手に会話しつつ歩いているとベンチがあったのでそこで休憩する。
今では初期と違い稼げるようになって、こうやって落ち着いて休日を取れるようになったとローとラミは染々していたのを思い出す。
二人とも余裕なくて生きていくのに必死で毒にやられるという経緯を経験しているので、今の生活を大切にしている。
それを傍で見ていたから羨ましいと思う。
余裕とかゆとりはモブ子にはあるが、温もりはない。
共に手を取り合って笑いあえる環境が羨ましい。
ローが最近ショッピングとかに誘ってくれるのはとても嬉しいが、妹と水入らずの休憩を過ごさなくても良いのかと思う。

「どうした」

ラミを差し置いて外に出掛ける事に関して悩めば彼にそう問われた。
素直に思ったことを吐き出せば男は緩く目を細めて、どこか思考している仕草を醸す。
遠くで風船が飛んでいるのを見つけた。
それに一瞬目を奪われ、彼がモブ子の顔に近付いたことに視線を戻した後気づく。
あまりに近くて慌てて顔をそらす。

「おれと出掛けるのは嫌か?」

それは無いと直ぐに首を振る。
嫌なら既に血を取って距離を置いていると自らの自己防衛を例に浮かべた。
かの亜人たるもの、相手の嫌な感情が少しでも見えればやる気を無くすというものだ。
誰が嫌悪を抱く相手の為に冒険をするというのか。

「だったら、デートをこれからも断らないでくれ」

「……デート!?これ、デートなの??」

知らなかったぞ。
ただのお出掛けとか、妹のプレゼント選びに連れ出されているとか、女避けとかだと。
目を白黒していると心のなかを見透かした態度の男はニヤリと笑う。
距離が近かったせいで間近で笑みを目撃した心臓が勝手に踊った。
火照った体を清める為にアイスを急いでばくばく食べる。

「暑いのか」

「あ、熱い!」

なんとなくニュアンスが違うような。
アイスのスプーンまで食べてしまいそうになるくらいパニクってしまった。
冷や汗が止まらず貧血になりそうだ。

「顔が真っ赤で血行は良さそうだがな」

分かっていて言われていることを知り、唇が戦慄いた。



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