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三姉妹(後編)


一応村長に土地を借りていたので最後のお別れくらいは言っていこうかと言うので、三姉妹は荷造りを始めた。

「お前らも手伝え。選択肢コマンドによって好感度上がるかもな」

手伝う

手伝わない

「みたいな奴な」

ローが適当にものを言ったが、現実的に上がる可能性は否めない。

「もち、手伝うよな」

シャチが得意気に三女の所へ向かう。
ペンギンもシャナリシャナリと歩いていった長女へ向かうと、ローはやれやれと溜め息を吐く。

「おい、おれをほったらかしにするとは偉くなったもんだな」

彼女の部屋へ突入し、ドアを叩かず無遠慮に彼女を後ろから羽交い締めにする。
尚、ローは後ろから抱き締めているつもりなのだが、逆に見ると奇襲を掛けられているのだ。
急に絞まった体を捻りローと知ると腕の力を緩めてくれと合図する。
十秒程絞められて漸く緩められた力。
ちょっとは手加減するくらい学んで欲しい。

「追いかけてくるとは思わなかったから」

「お前が魔石に夢中なのは知ってた。だからここに来るって言うだけでも大分譲歩しただろ」

ローが拗ねた声音で言うから、笑いそうになるのを必死に堪える。
笑うと更に不機嫌になるかもしれないのだ。

「そうね。ありがとう、それは」

追いかけてきて、しかも家にやってきてくれたマメさは素直に嬉しい。



荷造りを終えて村長にお別れを言う。

「というわけです、私達は故郷に帰ります」

「今まで有り難う御座いました(このどくされ野郎)」

長女と三女が順に言う。

「お世話になりましたわ(ストレス製造人間達がっ)」

内心二人は悪態を付きながら外面は完璧に儚げな笑みを浮かべる。
それを外から見ていたロー達は戦慄していた。

「ううわー、相当ヘイト溜めてたなあいつら」

「この村人達の心がアレなせいで仕方ない」

シャチの言葉にペンギンが頷く。

「ま、待ってくれ、いきなり何を」

慌てて、初耳だと言う人は勿論村長だ。
永久的にここに住むものだと思っていた彼は村が活性している理由の三姉妹を見る。

「出ていく?どういう事だ」

「え?今の言葉聞こえてませんでした?」

次女と思われているリーシャはそんな訳ないよね?と首を捻る。
可笑しいな、そろそろお年だから隠居すれば良いと思う。

「は?こ、この村を出ていくことは許しとらんぞ」

戦慄く唇を震わせて村長が言うと三人はキョトンとなる。
何を言っているのだこの老害がと内心言うのは長女だ。
美しい顏をふわっと傾げさせ、ほほほ、と笑う。
それに一時見惚れる村長。
村長の癖にロリかよ、と思うのは三女だ。

「あら、貴方に許可を貰うのは必要ありませんわ?」

「な、私は村の長であるのだ」

それに追撃するのは三女だ。

「ねえ様の言うとおりです。だって、帝より許可を得てここに住まいを構えていただけのこと。別に貴方を介して村から出ることを許可してもらう必要はありませんの」

村長の頭の中はまさに訳の分からぬ事でぐるぐると回り意味が分からなくなっていた。
帝、とはこの地域を納める皇帝の事だ。

「ふふ。まさか、こんなとんでもない勘違いをしていたとは驚きました」

長女はおっとりと言う。
しっとりとした黒髪がさらりと肩を滑る。
村長はそんな事聞いていないと小さく呟き、それを聞いたリーシャが聞かれなかったので、と至極当たり前に言う。
絶句している村長をそれみたことかと言いたくなる程に顔をぽかんとさせている。
長女的には青ざめさせたい、後悔させたい。
きっと後からじわじわと後悔する事だろう。
なんせ、帝から許可を得て住んでいた女を除け者にしていたのだから。

「それでは、ごきげんよう」

にっこりと隙の無い笑みを浮かべて三女が腰を綺麗に曲げてうっとりさせる仕草で終わらせる。
慌てて後を追おうとしていたが、見えない壁に阻まれる。
混乱の極みで壁にぶつかる。
ドカッと鼻をぶつけて呻いている。
フッと息を吐き出すように鼻で笑う。

「身から出た錆、いいえ、自業自得ですわね」

扉から出た後に長女が村長の家を見る。
所謂、捨て台詞、いや、最終回の台詞だ。
これから村は最近観光客を得ていたが、姉妹が去る事によって有名どころを失う。
更にここは本当に辺境である上に凄く田舎なので薬などを簡単に入手出来ない日々に戻る。
これで村は寂れた村に、元あった姿に戻るのだ。
それ以降の事は関係ない。
帝から許しを得て土地を貸してもらっていたので村長にも村人達にも恩も義理もない。
寧ろ、客が来る度に相手をさせられていた不要な労働に対して後に帝の印で請求が来るだけだ。
今は、有名姉妹が居なくなるという事態しか飲み込めない村は只報いを受けるだけ。
さて、と外へ出た三人を待っていたロー達。

「終わったか」

「待たせたね。行こうか」

この後、都会へと魔法で跳んだ。
跳躍したのではなく、転移という魔法で瞬間的に場所を移動したのだ。
久々の都会に三女が嬉しそうに陶器を売っている店を覗く。
三女は可愛い陶器に目がない。
あげているお小遣いを陶器を買うためだけに使っている。
と、言える程。

「お姉さま、買い物しても良い?」

「うん。今まで我慢してたご褒美ね」

お姉さま呼びは姉妹という設定だからだ。
シャチが三女と一緒に行きたそうにしている。
それを感じたローは面倒そうに「行きたきゃ行けば良いだろう」と言う。
ローは放任主義だ。
ついでにペンギンにも邪魔だからどっか行け、と、解散させる。
ペンギンは先に行く長女を追いかけた。
長女は長女でリーシャに買い物へ行きたいと言って、歩き出していた。
使い魔の恋愛事に出し抜かれたローはしょうがねェ奴等だ、と見送り彼女の元へ参じる。

「やっと二人になった」

「ふふ、そうだね」

二人を蹴散らしているようで、空気を読んで解散させたローの優しさに頬を緩める。
腕を絡めるくらいのサービスも厭わぬ。

「何か欲しいもんはねェのか」

お、珍しい。
あんまりそういう事を言う人ではないので。

「そうね。うーん」

と、言っても魔石を取ったし今欲しいものは無くなってしまったし。
三姉妹の予算もお金もある。

「バレッタはどう?」

髪に留められるもの。

「女っぽいもんだな。良いぞ」

オッケーらしい。
バレッタで魔法を込めてくれたら尚良い。
一回ポッキリな魔法でも良いから、と頼むと分かったと懐の財布を緩めてくれる。
同じ魔法使いは恋人関係になるのが非常に難しいと言われている。
なぜなら魔法使いは基本的に学者肌が多く、己をも省みない人が多い、更に友人など関係を広げられない個人主義の人が多勢だ。
早速バレッタを買ってくれたローは髪にぱちんと嵌めてくれる。

「似合う?」

尋ねるとそうなるように選んだのだと言われ、それもそうね、と返す。
こういうのを幸せと言うのだろう。
今頃一緒に歩いている姉妹と使い魔のペアもお互いの親睦を深めている事だろう、と嬉しく思う。
目を合わせると二人はそっと手を握った。


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