しとしとと、梅雨の季節がやってきた。
別段私は雨が嫌いではないので、濡れることはきにしない。
「だからって、わざと傘を忘れるか?」
「うん。だってローが入れてくれるじゃん」
「だからってな……」
「彼女の願いを払うの?」
「彼氏の言葉を無視する奴が何言ってんだよ」
ローは呆れたようにため息をつくが、私はふふっ、と笑う。
「相合い傘なんて、恋人らしいでしょ?」
「相合い傘だけが恋人らしいことじゃねぇだろ」
そう言ってニヤリと笑うローに私は嬉しかった。
彼は見た目通り、人前でいちゃつくことを平気でるものだから、私の日々の精神的エネルギーの消費が激しい。
「ま、とりあえず。帰ろ」
「そうだな。傘もあるから特別に入れてやらねェこともねェぞ」
「じゃあ、遠慮なく入れさせていただきます」
くすくすとお互いに笑いあって、私達は雨の中、手を繋いで帰った。
どうか、雨が止みませんように。なんて思うのは我が儘だけど、雨に感謝することだけは忘れなかった。
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