6月16日
「ちぇー、メンドくせーよなー。」

僕と同じくアグリッパ像の刑になった順平と2人で下絵を描いていた。

もちろん順平は真面目にではない。


「ちょっと順平、真面目にしなさいよ。」

それを見つけたゆかりが注意しにくる。

「でもよーゆかりっちー、アグリッパだぜーアグリッパー、そんなんどうやって石に彫るんだよー。」

それを言うなら、グラビアのアイドルを彫ろうとしていた順平の方が高難易度だと思うのは
僕だけなのだろうか。

「そんなの知らないわよ、男なんだから、気合で頑張りなさいよ。」

気合いか・・・少し難易度が高いな。

「ヒデーよゆかりっちー。」

「順平、鬱陶しい。」

「湊っちもヒデェ・・・・。

てかお前もアグリッパ仲間だろー。」

しつこく絡んでくる順平、なんだアグリッパ仲間って。

「お前だって石でアグリッパなんてムズイだろ・・・・ってオイッ

なんだその一部の隙もなく完璧なアグリッパ像は!」

一部の隙もなく完璧かどうかは知らないけど、たしかにこのアグリッパ像の下絵は自信作だ

一応言っておくと僕の得意な科目は美術だ。


「本当だ凄いね君、そんなに美術が凄いなら今度文化部が再募集するらしいから

美術部に入ってみたら?」

頷く。

僕もそのつもりだった。
せっかく美術部があるんだし、僕のこの腕を生かさなくては宝の持ち腐れというものだ。

ふと、思いついたのでことがあったので
順平から取り上げた雑誌を読んでいる五十嵐先生に話しかけた。

さっき好みじゃないとか言ってなかっただろうか・・・。

「先生、やっぱり先生が美術部の顧問になるんですか?」

「んー?あー・・・微妙だな、時期が時期だし、まだここに来たばっかりだし

もしかしたら違う先生が顧問で俺はたまに顔出す程度かもな。」

面倒だし。

最後に先生が呟いた言葉は聞こえないフリをしておいた。


流石に先生が学校でその発言は駄目だと思います。


授業終盤にまってもまだ文句を言っている順平を見かねて先生が違うモデルを用意してくれるらしい。

友近がヌード?ヌード?とかアホなことを抜かしているのは完璧にスルーしている。

美術準備室から先生が持ってきたのは・・・・。

「キティちゃんだ・・」

心なしざわついた教室の空気を気にした様子もなく手のひらサイズのキティちゃんを持って順平に近づく五十嵐先生。

「ほら、こっちならまだ簡単だろ。」

「はい、・・・って先生なんでこんなの持ってんスか!?」

確かに先生がこんなかわいらしいものを持っているなんて以外を通り越して怖い。

「知らん、俺の私物じゃないし、
ただ美術準備室に放置されてたからな、たぶん美術部の奴のじゃないのか?」

いいな、ちょっと欲しい。かも。
可愛いから欲しいんじゃなくて、なんとなく欲しい。Cuteだし。

僕の視線に気が付いた先生。

「どうした有里、この人形でもほしいのか?」

先生はからかうつもりで言ったんだろうけど、それは失敗だ。

「はい、欲しいです。もらっていいですか?」

「え、いやまぁ欲しいならいいと思うぞ、結構埃かぶってたから持ち主も特に大切にしてたわけじゃねーだろうし・・・・
マジで欲しいのか?」

「はい。」

受け取ってポケットに突っ込む。

うん、ナイスフィット。

「先生ー俺のモデルはー?」

「やっぱ頑張ってアグリッパを完成させろ。モデルは有里に取られちまったしな。」

ドンマイ、応援はしてる。


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bkm
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