12月25日といえばクリスマス。クリスマスといえば、素敵なイルミネーションに彩られた街中にラブラブなカップルが溢れ、家では家族皆でチキンを頬張り、プレゼントを持って来たサンタさんがママにキッスしたりしなかったりする、そんな素晴らしい日。そんな素晴らしい日なんだから部活だってお休みになればいいのに、そう上手くいかないのはウチが県内屈指の強豪校だったりするからだ。だからクリスマスの今日もこんな真っ暗になるまで練習。まったく本当にご苦労様です!


「わー外さっむいねえ宗くん!」
「そうだね」


雨が降ろうが槍が降ろうが欠かす事のない部活後の自主練を終えた宗くんと一緒に外へ出ると、ぴゅうと冷たい夜風に無防備な顔面を痛めつけられる。寒いね、って言った私に宗くんはそうだね、って同意したけど、あんまり寒そうではなかった。ついさっきまで運動してたからかな。
寒いから早く帰ろう、って差し出された宗くんの手を握ったらぽかぽか暖かかった。


「ねえ宗くん、実は今日クリスマスなんだよ。知ってた?」
「うん。知ってたよ」
「ですよねぇ」
「これからどこか行く?」


突然の宗くんのお誘いに思わず足を止めると、宗くんがどうする?って小さく首を傾けた。その仕草がなんだか可愛くてキュンってしたのは内緒だ。
私はそんな宗くんのお誘いに、少しの間うーんと考え込んでから、ううんって首を振った。


「んー、いいや」
「いいの?この前イルミネーション見たいって言ってなかったっけ?」
「それは言ったけど、宗くん練習の後で疲れてるでしょ?それなのに、クリスマス当日のイルミネーションなんて人でごった返してるだろう場所を連れ回すなんて鬼みたいなことしたくないよ」
「鬼って…、それくらい平気だよ」
「宗くんは平気でも、私が嫌なんですぅ。だからイルミネーションはまた今度なんですぅ」
「また今度で良いんですか?」
「良いんですぅ」


ちょっとおちゃらけた言い方で私がそう言うと、宗くんはクスクス笑った。それにつられて私も一緒になってクスクス笑うと、笑い止んだ宗くんの表情が少しだけ暗くなる。不思議に思って私が首を傾げると、宗くんは申し訳なさそうに言った。


「なんかごめんね」
「え、なにが?」
「気遣わせちゃって」
「いやいやいや!謝んなくていいから」
「でも…」
「っていうか私!クリスマスにこうして宗くんと一緒に居られるだけで十分なの!だから宗くんは謝んなくていいの!」


だからもう謝んないでね!と念を押す。すると申し訳なさそうな顔をしていた宗くんはわかった、と頷いた。分かれば良し、と満足してうんうん頷く私。
気を取り直して歩き出すと、道路の端に工事中と書かれた看板とよく見るオレンジのバリケード並んでいるのに気がついた。


「ね、宗くんあれ見て!」
「え?」


私が指差す先にはオレンジのバリケードにくっついているカラフルな四色のライト。赤、緑、白、青と規則正しく並んでいるそのライトはまるで。


「クリスマスのイルミネーションみたい!」


きゃっきゃとはしゃいでそう言う私の指差す先のライトを見た宗くんは一瞬きょとんとして、でもその後に私に向けた表情は楽しそうに笑っていた。


「ほんと、イルミネーションみたいだね」
「でしょでしょ!?わー嬉しいな!宗くんとクリスマスのイルミネーション!」


きっと今までだってこの工事現場のライトは見た事があっただろうけど、こんなにこのライトが素敵に見えたのは初めてだ。なんだかすごく楽しくなって、楽しいね?ってライトから宗くんに視線を移して同意を求めたら、宗くんがものすごーく優しい瞳で私を見ていて、思わずドキっとしてしまう。


「うん、楽しい」
「だ、だよね」
「ほんと俺って幸せ者だなあ」
「?え?え?」
「思いやりがあって、こんな些細な事で楽しいって喜んでくれる、可愛い彼女が側に居てくれるから、俺は幸せだなって思って」
「!」


突然そんなべた褒めされるとは思いもしなかった私が、びっくりやら恥ずかしいやら照れくさいやらで固まっていると、宗くんの大きな手がぽんぽん私の頭を撫でた。


「俺の彼女になってくれてありがとう」


ぽんぽん優しく私の頭を撫でながら、とびっきり優しくてかっこいい笑顔でそう言った宗くん。ただでさえ恥ずかしいやら照れくさいやらでどうしていいかわからなくなっていたのに、そんなかっこよすぎる宗くんにこんな嬉し過ぎる言葉を貰ってしまって、ときめきすぎた私はそれからしばらくまともに宗くんの目を見る事が出来なくなってしまったのだった。




道端イルミネーション(131207~140607)




131207〜140607の間の拍手お礼でした。
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