眠る場所(陸遜)
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※現パロ


カーテンの隙間から射し込む光を閉じた瞼の上に感じて目を覚ました。ぱち、と目を開けると目の前には見慣れた寝室の天井があって、視線を頭のてっぺんの方へ向ければ、温かいクリーム色のカーテンが引かれた窓があって、そのカーテンの隙間からは、今日の私の目覚ましになった朝日が射し込んでいる。
あれ。私、なんでベッドで寝てるんだろ。朝日に照らされもともと温かい色の上に暖かい光を纏ったカーテンをぼんやり見つめながら、ふと、そんな疑問が浮かんだ。確か昨日は帰ってきて、ご飯を食べて、お風呂に入って、それから…、と、昨夜のことを一つ一つ思い返しながら寝返りをうつと、目の前に現れたきれいな寝顔。私の愛しい旦那様、陸遜がいた。


昨日は金曜日で、私も陸遜も翌日は休みだから、DVDでも借りて観ようってことになって、陸遜と二人で近所のレンタルショップに行った。そこで、私がずっと観たいと思ってたけど、映画館へ行く時間がなくて結局観られなかった映画がDVDになってるのを発見して、そしたら、陸遜が『じゃあそれを借りましょう』って言ってくれて、大喜びでそれを借りて帰宅して。それからDVDを観る前にお夕飯とお風呂を済ませちゃって、そして、私と陸遜はテレビの前の赤いソファに並んで座ってDVDを観たんだ。
だけど、最近仕事が残業続きで疲れてた私は、観始めて1時間もしないうちに眠くなってきてしまって、でも私が観たいって言って借りたんだから!って、頑張って睡魔と戦って…、そして、たぶん、そのまま、睡魔に負けたんだ。たぶん、というか、確実にそうだ。だって映画のラスト(寧ろ中間辺りから)の記憶がない。
ソファで寝ていたはずなのに、いつの間にベッドに来たんだろう。やっばり、陸遜が運んでくれたのかなぁ。そうとしか考えられない。そう考えながら、私は目の前の陸遜をじっと見つめた。
それにしても、本当、陸遜って整った顔してるなあ。こんな至近距離で見つめているのに、肌とか、すっごく綺麗。睫毛、長い。もともと綺麗な顔してると思ってたけど、こうして目を閉じていると、なんか、女の子って言われてもあんまり違和感ない。そんななのに、シーツがかかっていなくて無防備に晒された二の腕は筋肉質で、力強い印象を受ける。実際、強いんだろう。だってソファに寝ていた私をベッドまで運んでくれたわけだし。
私は陸遜を起こさないよう、そっと手を伸ばして筋肉質なその二の腕に触れてみた。う、わ。想像していたよりも、さらに逞しかったその感触に衝撃を受ける。それから私の視線は二の腕から、胸板に流れて。視線を追いかける様に、手も胸板まで滑る。陸遜が着ている濃いグレーのタンクトップの上から触れると、二の腕と同様に逞しくて、思わずゾクっとして、口元が緩む。…って何やってんの、私。寝ている陸遜をべたべた触りまくってるとか、まるで変態じゃない。なんて、自分の行動に引きながら、それでも触れている手が退けられない。
早く、退けなきゃ。ああ、でももう少し。よし、これで最後。これ以上触ってたら陸遜起きちゃう。ああ、でも…っ。朝起きて、隣に愛する人が眠っている。一日の始まる一番最初に大好きな人の寝顔が見られるなんて、なんて幸せなんだろう!


「何をそんなにニヤけているんですか?」


陸遜の胸板の感触にうっとり夢中になっていた私に、突然届いた声。その声に最早無遠慮に撫でまわしていた手が止まる。ギギギ、とまるでブリキのおもちゃみたいな動きで私が顔を上げると、少し意地悪な笑顔を浮かべた陸遜が私を見下ろしていた。


「おはようございます、名前」
「お、おはよう、陸遜」


陸遜の爽やかな朝の挨拶に私がぎこちなく挨拶を返すと、陸遜は、陸遜の胸に置かれたまま、ピタリと固まってしまった私の手を取り、そのまま包み込んで言った。


「随分と楽しそうでしたね」
「へ?」
「寝起きから、随分落ち着きの無いご様子で」
「!お、起きてたの!?」
「ええ」
「い、いつから…?」
「そうですね、30分程前からでしょうか」


30分前、だと…?私はその陸遜の言葉に今日一番の(今日まだ始まったばかりだけど)衝撃を受ける。え、つまり、それって。


「寝たフリ、してたの?」
「…すみません、ちょっとした悪戯心で」


そう言った陸遜はその言葉の通り、悪戯っぽく笑って言葉を続ける。


「初めはすぐ寝たフリをやめるつもりだったんですが、名前があんまり楽しそうなものだったので、つい」
「つい、って…」
「夢中になって寝たフリに気がつかないあなたも可愛かったですよ」
「!」


ニッコリ笑ってなんてこと、言うんだ。可愛いだなんて、しかも、それが寝たフリに気がつかないほど触るのに夢中になっていた様子のことなのだから、余計に恥ずかしい。恥ずかしさで真っ赤になる顔を隠したくて、陸遜に掴まれていない方の手でシーツを手繰り寄せようとすると、追いかけて来たもう一方の陸遜の手にそれを阻まれる。
両手を陸遜に掴まれて成す術もなく、思わず助けを求める様に彼を見つめる。すると。


「今度は私も触って良いですか?」


陸遜は二ヤリと、口元に妖しげな笑みを浮かべてそう言った。


「そ、そんな、改めて、良いかなんて…」
「だめですか?」
「は、恥ずかしい…、って、陸遜、手っ」
「?どうしました、名前」


意地悪く笑いながら、どうしたのか、なんて尋ねてくる陸遜の手が、私の肌の上を滑る。陸遜の触れた場所が次から次へと熱を持ち始めて、恥ずかしさが尋常じゃない。


「…触って良いか、なんて聞いといて、もう、触ってるじゃないっ」
「先に触ったのは名前でしょう」
「そ、それはそうだけど…」


だけど、私はこんなヤラシイ感じで触って無い!という抗議の言葉は、容赦なく、絶妙な感触で肌の上を滑る陸遜の手のせいで嬌声に変わる。ああ、もう朝から何してるの。これじゃあ、まるで、変態。
どうにかこの状況から逃れなくちゃ、と、すでに半分以上呑まれかけている頭で必死に陸遜を止める言葉を考える。開けっぱなしだった寝室のドアの奥に見える赤いソファを視界の端に捉え、ああ、そうだ、と口を開いた。


「…っ、りく、そ、まって、DVD、続き、」


途切れ途切れでなんとか紡いだその言葉。すると、陸遜の手が止まって、ホッとした私が蕩けた瞳で彼を見ると、額にひとつ、口付けが落とされて。その後、にっこり笑った陸遜はこう言った。


「DVDの続きは、満足いくまであなたに触れた、その後で」




140713


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