Under the Christmas Tree(遊星)
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クリスマスシーズンのデートの待ち合わせ場所と言ったらやっぱり、定番は大きなクリスマスツリーの下だと思う。現に、クリスマス当日の今日、この街の広場の一番大きなクリスマスツリーの下には恋人と待ち合わせをしているだろう人々の姿が多く目についた。
かく言う私もその中の一人。数ヶ月前から付き合い始めた恋人の遊星と、イルミネーションを観に行く約束をしているのだ。
冬の夜特有の冷たい空気に体を震わせながら、腕時計で時間を確認する。約束の時間までまだ10分以上も時間があった。遊星とのデートが楽しみだったせいか、どうやら早く着きすぎてしまったみたいだ。しかも、楽しみすぎて浮かれ気分で家を出て来たから、うっかり手袋もマフラーも忘れてきてしまった。遊星へのクリスマスプレゼントはしっかり持って来たのに。


「ごめん、お待たせ!」


私と同じようにツリーの下で人を待っていた女の子のもとに、待ち合わせをしていたらしい相手がやって来た。二人は楽しそうに話をしながら、手を繋いで歩いて行く。いいなぁ。私も、早く、会いたいなぁ。なんて、わくわくしながら、それでいてちょっぴり切ないような気分になりながら、手に持った遊星へのクリスマスプレゼントが入った紙袋に視線を落とした。遊星、喜んでくれるかな。


「名前」


それから待ち合わせ場所のクリスマスツリーの下で待つ事数分。俯いていた私の耳に届いた自分の名前を呼ぶその声に顔を上げると、そこには少し驚いたような表情をした遊星がいた。


「すまない、待たせてしまったみたいだな」
「ううん!全然平気!」


申し訳なさそうな表情で謝る遊星に、私は慌ててそう言った。だって、私が早く着きすぎてしまっただけで、遊星は約束の時間に遅刻したわけじゃない。それどころか、まだ約束の時間より5分も早かった。


「私が早く着きすぎちゃっただけだから、気にしないで」
「…」


気にしないで、と私が言っても、どうやら遊星は気にしないのは無理みたいで、申し訳なさそうな表情のまま徐に空いている私の左手を取った。突然手に触れられたことに思わずどきっとする。


「手が、冷たいな。やっぱり、だいぶ待たせてしまったのか」


遊星はそう言うと、掴んでいる私の左手にハァっと息を吐きかけた。冷たい私の手を温めようとしてくれているらしいその遊星の行動は、私をものすごくドギマギさせた。


「だ、大丈夫だよ」


私の左手を掴んだまま放さない遊星に、ドキドキしながら私がそう言うと、遊星はそんな私をしばらくじっと見つめて、それからふ、と微笑む。


「だが、早速これが役に立ちそうだな」
「え?」


遊星の言葉にきょとんと首を傾げる私。遊星は持っていた紙袋の中から何やら白くてモコモコしている物を取り出し、それをそのまま私の首にぐるぐる巻き付けた。私の首に巻きつけられたのはフワフワ肌触りの良い白いマフラーだった。


「名前へのクリスマスプレゼントに、と思って買ったんだ」
「遊星…」
「寒くないか?」
「うん。凄く暖かい。ありがとう遊星」


口元まで覆っているマフラーに触れながら私がお礼を言うと、遊星は嬉しそうに頷いた。
それにしても、


「じゃ、私も」
「?」


そう言って今度は私が手に持っている紙袋をがさがさ漁って、中から遊星へのクリスマスプレゼントを取り出す。少し背伸びをして、取り出したそれを遊星の首にぐるぐる巻き付けた。


「遊星にクリスマスプレゼントであげようと思って買ったの」


遊星の首に巻きつけられたのは、黒とダークグレイのチェック柄のマフラー。まるで打ち合わせでもしたみたいに、私も遊星も、揃ってプレゼントがマフラーなんて。


「プレゼント、二人揃ってマフラーなんて、なんか気が合うね」
「そうだな」
「ふふ。ね、暖かい?」
「ああ。ありがとう、名前」
「どういたしまして」


お互いにマフラーを付け合って、見つめ合う。ああ、なんか、すごい、幸せかも。さっきまであんなに寒かったのが嘘みたいに、暖かい。なんて、幸せな気分に浸っている私に、遊星が右手を差し出した。自然に、その遊星の右手に自分の左手を重ねる。


「じゃあ、行くか」
「うん!」


遊星の言葉に元気良く頷く。それから私と遊星は仲良く手を繋いで、イルミネーションに彩られた街の中へ歩き出した。




(20131224)
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