Santa Claus kissed Santa Claus(郭嘉) +++ ※現パロ キラキラ光輝く色とりどりのイルミネーションに、それを眺めながら寄り添い歩く恋人達。街に流れるクリスマスソングに耳を傾けながら幸せそうに微笑みあう家族連れ。沢山の人で溢れるクリスマスの街は賑やかしい。 「クリスマスケーキはいかがですかー?今ならケーキ全品10%オフでーす!」 そんなまさにクリスマス!といった雰囲気の街の中で私は懸命に声を張っていた。クリスマスはケーキ屋にとって一番の書き入れ時だ。それは私の勤めているケーキ屋でも例外ではなく、こうして店の外に臨時の販売所まで設けて客寄せをしている。雪こそ降らないけれど、それでも相当寒い屋外での客寄せは楽な仕事ではないけれど、まあ仕方ない。問題は今自分がしている格好だった。 クリスマスだから、と店長が用意したのは赤い布地にフワフワの白いファーの付いた、所謂ミニスカサンタ。まあ確かにクリスマスといえばサンタクロースだし、定番といえば定番なんだけど、仕事とはいえこの格好で沢山の人が行き交う街頭に立つのは正直恥ずかしかった。罰ゲームか。 しかし、どんなに恥ずかしいからと嫌がったところで仕事は仕事。せめて知り合いに見られませんように、と祈りながら、同じくミニスカサンタのコスチュームに身を包んだ同僚と必死にケーキを売り捌く事数時間。販売開始時には山のようにあったケーキの箱も、残り少なくなってきた。終わりが見えて来た事に、私は内心ホッとしながら、でもまだ完売までは油断しちゃだめだと気合をいれなおす。 「すみません、ケーキを一ついただけますか?」 「はい!ありがとうございます―…っ!?」 ケーキの販売個数の集計表に正の字書き込んでいた為俯いていた顔を上げた私は、そこに居た人物を見た瞬間、衝撃に固まった。 「ほ、奉孝さん…!」 「ああ、やっぱり名前だったか」 『お疲れ様』と、私に対し言葉を続け、愛想の良い微笑を浮かべている目の前のこの男の名前は郭奉孝。私の恋人である。知り合いに見られませんように、とあんなに祈っていたというのに、よりによって、一番見られたくなかった奉孝さんに見られてしまうなんて。なんてツイてないんだろう。っていうか、仕事でこのミニスカサンタを着る事が決まった時点で、何度も『クリスマスだけは職場に来ないで』って言ってあったのにどうして来ちゃったの奉孝さん! そんな風に項垂れる私に気づいているのかいないのか、奉孝さんはご丁寧に私の隣に居る私の同僚に『いつも名前がお世話になってます』なんて挨拶をすると、その後、とても興味深そうに私をじっと眺めて言った。 「あんなに何度も”クリスマスは職場に来るな”と言っていたから、何かあると思って来てみたのだけれど、こういうことだったとは…。うん、とても良いね」 そう言いながら、奉孝さんは視線を私の頭のてっぺんから腰辺りまで(腰から下は台で隠れているため)をゆっくりと移動させた後、満足そうに頷いて見せた。その顔に浮かんでいる微笑は先程のものと似てはいるものの、まったくの別物だ。何かやらしいというか、企んでいるというのか、嫌な予感しかしない。 「あの、あんまり見ないで下さい」 「?なぜかな?」 「なぜって…、恥ずかしいんですけど…」 「恥ずかしがることはない。良く似合っているよ」 「いや、似合うとか似合わないとかそういう問題じゃなくて…!」 「恥じらう名前も可愛らしいね」 「!」 面と向かって可愛らしいなんて言われ、恥ずかしさが増した私は言葉を失う。もう何を言っても奉孝さんには勝てる気はしないから、もう下手な事は言わない事にした。隣にいる同僚のひやかすような視線が痛い。 「ところで名前。仕事は何時までかな?」 「え?」 奉孝さんにそう聞かれ、お店の中の時計で時刻を確認すると、仕事の終わる時間までもう間もなくだった。 「後5分くらいですけど…」 「5分、ね。では私はここで待っているから、名前の帰り仕度が整ったら、一緒に食事に行こうか」 「え、外食ですか?」 「だめかな?」 「いえ、全然!だめじゃないですけど」 「それなら良かった。実は名前を連れて行きたい店があってね。予約を入れてあるんだ」 「そうだったんですか。ありがとうございます」 クリスマスは奉孝さんも仕事だったし、私もこの通り遅くまで仕事だったから、てっきり今日は家でピザでも取るのかと思っていたから、この奉孝さんのお誘いは予想外だった。年末はどこの会社もバタバタするし、仕事も忙しかっただろうに、お店の予約とか、クリスマスのプランをたててくれてあったなんて、嬉しくないはずがない。 そんな思いで私がお礼を言うと、奉孝さんは大した事ないように首を振る。 「そんな礼には及ばないよ。それに、ほら。今日一日頑張ったサンタさんにご褒美をあげなくては、ね?」 「え?」 きょとんと私が首を傾げると、奉孝さんはニコリと笑った。それから奉孝さんの手がすっと伸びて、私の髪に触れる。 「ご褒美は、そうだな…私なんかはどうかな?」 そう言った奉孝さんの手が私の髪から離れ、代わりにゆっくりと奉孝さんの顔が近づいて来て、 「ほ、奉孝さ…っ」 思わずぎゅっと目を瞑った私の耳元でクスっと奉孝さんが笑った。 「とびっきりに甘い、素敵な夜をプレゼントするよ」 私の耳に信じられないくらい甘い声でそう囁いた奉孝さんは、チュッと一度、私の頬にキスをした。 (20131218) +++ Merry Xmas!! |