※注意事項
・聖宝さん宅の夢主ちゃん、アサミちゃんは名前変換無しになっております。
・もしもアサミちゃんと荒木荘夢主が一緒に住んでいたら、というIFネタ。
‐‐‐‐‐‐‐‐
「料理を教えてほしい?」
「うん、そうなの!ほら、アサミちゃんは料理出来るでしょ?だから、是非ともご教示願いたいなって!駄目、かな?」
「ううん、そんな事ないよ!私で良ければ、だけど」
その時のアサミはまるで聖母マリア様のようだった――と後にナマエは語る。少なくともナマエの目には彼女がそう写ったのだ。何なら後光も差していた。
優しく微笑む女神、もといアサミにナマエは歓喜のあまり抱き付いた。
「有難う、アサミちゃんー!」
「あはは、ナマエちゃんってば大袈裟だよ」
…と、女の子同士で楽しく戯れていると。
「死人が出なければ良いがな」余計な一言を引っ提げたカーズが割って入って来た。これに反応を示したのはナマエだ。言外に『お前は何があっても料理をするべきではない』と言われている気がして眉をつり上げた。
「アサミちゃんが居るから大丈夫です!」
「どうだかな。アサミは確かに料理が上手い。だが、お前はどうだ?先日は確かディアボロが食中毒で死んだんじゃあなかったのか。それとも違ったかァ?俺の勘違いかァ〜?」
「ぐ…、」
これだけ煽られても言い返す言葉が見当たりそうにない。何処かに都合よく落ちているでもなし、今回はナマエが引かなくてはならないようだ。それに、ナマエの料理のせいでディアボロが絶命したのは紛れもない事実である。あれは悪いことをしたと反省も後悔もしていた。
ナマエは苦虫を噛み潰したような顔で押し黙った。しかし、それをみすみす放っておくアサミではない。それは彼女の性分が許さなかった。
「カーズさん、少し言い過ぎですよ。…ナマエちゃん、大丈夫だよ。練習すればきっと上手くなるから。だから一緒に頑張ろ?」
「アサミちゃん…」
「アサミ、それを甘やかしてもいい結果にはならんぞ」
「雑音はちょっと黙ってて貰えませ…あいたたた!」
ナマエのその一言を受けて、カーズはナマエの頭を片手で潰しにかかった。ちょっとアサミに庇われたからと言って良い気になるなよ。
「カーズさん!」
ナマエの頭蓋が割れる前にアサミのストップがかかった。こうしてアサミが止めに入ってくれたから良かったものの、もしもこの場に彼女が居なければ、間違いなくナマエの脳漿は溢れ落ちていただろう。
***
まずは簡単なものから始めようという話になった。
ナマエが選んだのはクッキー。彼女がただ食べたかったから、というのはここだけの秘密だ。
しかしこのクッキーというくせ者、ナマエが幾度となく挑戦して失敗してきたお菓子でもある。ある日は砂利っぽいと貶され、またある日は臭いと蔑まれ、あまりにも不評故にナマエは考えることも作ることも放棄してしまった。
一方アサミは、作るもの全て住人から好評を博していた。勿論クッキーだってお手の物。ナマエも勿論アサミの手料理は大好きだ。先日なんて独り占めしようとしてディエゴと喧嘩したくらいなのだから(「ナマエ、一人で食べ過ぎだろ!俺だってアサミの手料理を食べたいんだが!」「ディエゴくんは昨日食べたし、ここは育ち盛りの私に…」「毎日食わせろ!」「二人とも、おかわりはまだあるから…!」)。
さて、肝心のクッキー作りであるが、アサミの指導の甲斐あって、"見た目は普通"のクッキーが無事に完成した。
そこへ美味しそうな匂いを嗅ぎ付けたDIOがフラフラとやって来た。
「クッキーか?」
「あ、DIOさん。ナマエちゃんと作ったんです」
お一つ如何ですか?アサミがクッキーの乗った皿をDIOに差し出す。
DIOは「ンン〜」と唸った後、ニンマリと三日月を描いた。
「アサミが食べさせてくれないか」
「えっ!」
口を開け、「あーんしてくれ」と指で口内を差すDIOにアサミは頬を赤らめた。そのアサミの可愛らしい反応に気を良くしたDIOの行動はどんどんエスカレートしていく。アサミが抵抗しないのを良いことに、細い腰に腕を回して抱き寄せたのだ。
「きゃ!ディ、DIOさん…!」
「どうした?このDIOにクッキーを食べさせるだけだろう?何を恥じる必要がある?」
「なら、腰に腕を回す必要無いと思うんですがねえ」
グサリ。DIOの左目に星形のクッキーが刺さった。無論ナマエが投げ付けたものだ。
「WRYYYYッ!!?」
「アサミちゃん!大丈夫だった?」
「う、うん…でも、今のはやり過ぎじゃあ…」
「大丈夫大丈夫!目玉って一つ失っても大丈夫なようにもう一つあるんだから!」
「(それは大丈夫じゃあないような…)」
ざまあみろアサミちゃんにセクハラした罰だ、と鼻で笑い飛ばしたナマエの肩をDIOがガシリと掴んだ。
「ナマエッ!何をする!」
「復活早いな…もう少し寝てても良かったんですよ」
「そうもいくまい。お前に報復せねばならんからなア?」
アサミを挟んでバチバチと火花を散らすDIOとナマエ。間に挟まれたアサミは困ったように笑い、二人を止めるべく口を開いた。
「まあまあ、二人とも。喧嘩はその辺で…ね?」
「…ムウ…アサミが言うなら仕方あるまい…」
「…そうですね、アサミちゃんに免じて片目だけで勘弁してあげます」
「……」
スタンドも無ければ戦い方もろくに知らないお前のどの口がそう言うんだ。そう言ってやりたい衝動に駈られたが、怒りよりも呆れが勝ってしまい、DIOは喋ることを諦めた。まったく、口だけは何時まで経っても達者なのだから困ったものだ。
「それじゃあ、仲直りも出来たってことで、クッキー食べましょう」
「賛成!今日こそは皆に美味しいって言って貰えるように作ったんですから、まずはDIOさん、食べてみてくださいよ!」
「しかしナマエが関わったとあっては…」
「大丈夫ですよ!ほぼアサミちゃんが作ってくれたようなもんですから!」
「そんなこと無いよ!ナマエちゃんも頑張ってたもの!」
また女の子同士で宜しくやり出した二人の少女を横目にDIOは考えた。
今まで幾度となくナマエの手料理には苦しめられてきた。ほぼ不死身のこの体…とは言え、体内からの攻撃には滅法弱かった。如何せん内臓だけは鍛えられないのだ。それ故にナマエの手料理で便所送りになることもしばしば。
しかし、あのクッキーはナマエだけではなく、アサミも一緒に作った訳で。アサミの手料理は折り紙つきだ。不味くなる筈がない。――そうだ、アサミが作ったと思えばどうということは無いんじゃあないか。うん、イケる。このクッキー食べれる。
「仕方ない…どれ、このDIOが一つ食べてやろうではないか」
「やったあ!有難う御座います、DIOさん!」
「はい、どうぞ」
アサミが皿を差し出す。DIOは恐る恐るそれに乗ったクッキーを一つ摘まんだ。
「美味しかったら素直に美味しいと言ってくださいよ?」
「ああ、」
パクリ。DIOは可愛らしいハート型のクッキーを口に放り込んだ。
暫くモグモグと口を動かし、ごくんと喉を上下させた後に発せられた言葉は――
「わかめの味がする」
…ただの一言、それだけだった。
使ってもいない食材の名前が出てきたことにナマエは肩をがっくりと落とした。嘘だろ、そんなもの使ってもいないよ…。いや、DIOの味覚がおかしいんじゃあなかろうか。そうだ、きっとそうなのだ。何を食べてもわかめの味がする呪いをかけられているのだ。そうに違いない。でないと手取り足取り優しく教えてくれたアサミに申し訳が立たない。
酷く落ち込むナマエにアサミが優しく諭すように「私はわかめ嫌いじゃないよ」とフォローを入れてやるものの(彼女も混乱しているのかフォローが少しおかしい)、ナマエが平常時のテンションに戻るまでには至らなかった。
今回の結論は、何がなんでもナマエを台所に立たせてはならない。例えそれが料理上手と共にでも。間違いなくこれだ。
聖宝さん、この度は相互リンク有難う御座いました!
よその夢主ちゃんとの共演夢を書かせていただくのは生まれて初めてだったのですが、こんなにも楽しいとは…!それもこれもアサミちゃんが可愛かったからですね。
しかしその可愛さが聖宝さんのようには存分に出せず、不発に終わってしまいました…。申し訳ない限りです…。勝手にDIOにセクハラさせちゃうし……。うちのセコムに頑張らせましたが。
こんな相互記念夢で宜しければ、似るなり焼くなりご自由にどうぞ!
▽おまけ:この出来事をアサミちゃんのお兄さんの淳さんに話したら。
アサミ「…って事があってね。DIOさんったらすぐに私をからかうんだから…」
淳「よし!じゃあオレ、DIOを殴り倒そうと思うよ!」
アサミ「何が『よし』なの!?爽やかな笑顔で何言ってるのお兄ちゃん!」
ナマエ「淳さん!私も手伝います!(DIOさんに隠しておいたケーキ食べられた恨みもあるし、アサミちゃんも守れるし一石二鳥!)」
淳「ナマエ有難う。必ずやDIOを地獄に落とそう。あ、でも安心して。アサミが悲しむことはしたくないから、這い上がれる程度の地獄にしておくよ」
アサミ「それを聞いてもあんまり安心できないと思う!」
ナマエ「淳さん、準備出来ましたよ」にんにく十字架聖水銀の弾丸装備
淳「よし」
アサミ「だから全然『よし』じゃないよ!二人とも落ち着いて!」
お粗末でした。
(140119)