TEXT | ナノ
(注)仗助が病んでる変態ストーカー野郎。
かっこいい仗助など居ない。ただただ気持ち悪い。最早別人レベル。きっと100巡後とかそのへんの仗助。

‐‐‐‐‐‐‐‐

愛しい我が家へ帰宅すると、改造された学生服を身に纏った"ヤツ"が居た。

「…いやいやいやいや、どうして居るの?私、鍵閉めてたよね?」
「…開いてたっス」

ヤツ、もとい東方仗助はばつが悪そうにそう答えた。
分かりやすい嘘をつきやがって。

この東方仗助との出会いはほんの些細な事からだった。図書館で高い棚にある本が届かず難儀していたところを、この無駄に長身の男が取ってくれた、それだけである。その時は会話らしい会話もせず、ただ礼を述べただけで終わったし、それだけの関係で終わった筈だった。だが、仗助は違ったらしい。あれから私をいたく気に入ったらしく、以来何故かこうして付き纏われている。これが所謂ストーカーってやつなのか、経験が無い為分からない。
ただ、こうしていつもいつも私の部屋に勝手に入られたり、下着を盗まれたり、後を尾行されたり、スキンシップとか言って身体中をまさぐられるのは正直良い気はしなかった。そういえば、この前は電車の中で痴漢をされたんだった。身長180超に押さえられる恐怖と言ったら尋常ではなかった。

「いい加減にしてよね、どうしてそう不法侵入ばかりするの?」
「…ナマエが好きだから」
「じゃあちょっと好きのベクトルがおかしな方へいってるから修正すべきだと思うよ」
「俺にとってはこれが正解なんス」
「そんな正解があってたまるか」

やれやれ。彼の甥っ子さんの口癖を借りてそっと呟く。
仗助には今更何を言っても無駄なのは分かりきっていたじゃないか。しかし、彼の異常性に何か言ってやらねば気が済まないのだ。

「ああ、あとさ。短時間の間に着信40件、メール200件は異常だと思うよ」
「え〜それでも控えたんだけどよォ〜」
「じゃあ、もっと控えてよ」
「で、メールは読んだんスか?」
「(無視かよ)読んでない」
「そうか…」

何故そんなにシュンとするんだ。私が悪いみたいじゃないか。常識的に考えて200件のメール全てに目を通す暇なんて有るわけがないし、まず普通なら200件もメールを送信して来ない。
しかし、なんだこの、罪悪感。

「…アー、晩御飯食べてく?大したものは出来ないけど」
「それなら俺が作っておいたっスよ!」
「えっうそ!?仗助って料理出来るんだ!」

先程の手前、今度は凄い凄い!と手放しに誉めてやる。すると、どうだろう。仗助はみるみる頬を紅潮させて「おだてても何も出ないぜェ〜」と言えるくらいまでに機嫌が回復した。何とまあ分かりやすい男なのだろう。

「冷蔵庫に入れてるっス」
「わーいなに作ってくれたのかな」

冷蔵庫を開け、仗助お手製の夕飯とご対面。なんと、オムライスが入っていた。ご丁寧に「スキ」とケチャップで書かれている。芸が細かい。

「オムライスかあ、美味しそ…んん?」

皿を冷蔵庫から取り出して気付いた。
このチキンライスの色、赤過ぎないか?

「仗助、このチキンライスはケチャップ使って作ったんだよね?」
「ん?ああ。あと隠し味も入れておいたんだぜ」
「隠し味?」
「そ、俺の血。俺の血はナマエに吸収されて、ナマエの血肉になる。俺はナマエの一部になるんス。それで俺とナマエも晴れてひとつになれるって訳っス。もう離れない訳だし、これで四六時中何時でも一緒って事だよなー?ああ、病原菌の心配はしなくて良いっスよ。ちゃんと検査してきたし。正直言うと、俺の持ってた菌で病気するナマエも良いんだけどよォー、やっぱり元気が一番だからな」
「私は君の脳が心配だよ」

普段よりも何割か増しで饒舌になる仗助。「これはその証拠っス」と、頼んでもいないのに自分の手首まで見せつけてきた。包帯ぐるぐる巻きのそこは、もしかしなくとも自傷した痕が残っているのだろう。一体どれだけの血を使ったというのか。ただただ気持ちが悪い。

「仗助、有り難く気持ちだけ頂いとくね」

皿諸ともゴミ箱にぶち込んだ。お気に入りの皿だが背に腹はかえられまい。

「お、オイ!」
「あと、一言だけ言わせて。…このクソド変態野郎」

ありったけの侮蔑を込めて吐き捨てた筈なのに、仗助は嬉しそうに口の端を上げた。しまった、どうやら彼はマゾ属性も持っていたようだ。



>>>atogaki
こういう話書いてる時が一番楽しいです。
何だかんだで仗助と夢主は相思相愛なんでしょうね。じゃないととっくに警察のお世話になってるでぇ……。
仗助は自分がストーカーだと自覚してないと思います。ただ行き過ぎた愛情だと思ってるだけで。~131014
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