(注)相変わらずプッチがぶっ飛んだ変態野郎なので、苦手な方はご注意ください。夢主も相変わらずお口が悪いです。
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「あんたさあ、よく神父さまの所に行ってるけど、何かあるの?」
此処、G.D.st刑務所で初めて出来た友人(と呼んで良いのか微妙なところだが)、ミラションは朝食の席でそんな戯れ言を抜かしてくれた。
何か有る訳がない。実際、私は脅されて嫌々行っているだけなのだし。
「何よ、何かって…別に何も無いけど?」
「ふうん、しらばっくれるのね。"何"って言ったら"ナニ"よ。出来てんのかってこと」
ブハッ!!思わず口の中に入れていたパンを吐き出してしまった。目の前に居た女が嫌そうな顔をして私を見ている。
「はぁぁ!?馬鹿言わないで!誰があんなクソ神父と!此方から願い下げ!」
「でも、彼顔もそこそこイケるし、良いと思うけど?それに、此処で手玉にとっておけば此処での暮らしも有利になるじゃない」
「なるかもしれないけど、あり得ないわ。ミラションは知らないのよ。アイツ本当に最低なんだから。変態だし、言動も行動も全てがヤバいってーの?まじでどうして神父になれたか分かんないって感じだし」
「…ナマエ、悪口はそれくらいにして後ろ振り向いた方が良いわよ。悪いことは言わないわ」
「はあ?どうしたの、ミラション…」
何をそんなに顔を引きつらせているのか…。
後ろを振り向いて瞬時に理解した。
「…ど、どうも…」
「…ナマエ、少し付き合ってくれるかい」
プッチが私のすぐ後ろに立っていたのだ。
うわあ、最悪だよ。今の全て聞かれていたんだろうな……その証拠にプッチは眉間に皺を寄せ、威圧的な雰囲気を纏っている。そうして私に「あと5分以内に来るんだ」と吐き捨てた後、背を向けて去って行った。背からも隠しきれない不機嫌オーラが滲み出ている。もう一度言おう。最悪だ。
「ナマエ、あんたヤバいんじゃあないの?さっさと行ったら?」
「…そうね、今回ばかりはそうした方が良さそう。行ってくる」
朝食もそこそこに席を立つ。目指すは魔の巣窟、もといプッチの部屋だ。
***
「プッチ?居るの?来たんだけ…アイタッ!?」
ゴンッ、後頭部に衝撃が走った。
な、なんだなんだ!!?何が起こった!?
「ナマエ、」
「え、プッチ…?」
よくよく状況を整理してみると、私はプッチに肩を掴まれ、壁に押し付けられたという事が分かった。後頭部に走った衝撃の正体は、壁にぶつけた際に来るものだった。たん瘤出来てないと良いけど…。
状況が理解出来て一安心だが、問題があるとすれば目の前のプッチの顔が怒りに満ちていることだろう。
「…アー、やっぱりさっきの聞いてた、よな?」
「聞いていたとも。君の気持ちも嫌と言うほどによく分かった」
やっぱりか。相手がこいつであろうと本人の悪口を聞かせてしまったのだから、心が痛まないと言えば嘘になる。だが、プッチから解放される良い機会でもある訳で。どうかこのまま私を嫌ってくれ。
「なら話は早い。そういう訳だから…」
「君が如何に私を好いてくれているか理解した」
……え?
「お、おいおいおいちょっと待て!!好いてるって何だ!?むしろ真逆だよ!!」
「だってそうだろう?あれだけ私の嫌いなところが出ると言うことは、日頃よく私を見ているからだよ。嫌いな相手をそうジロジロ見るかい?私なら見ない。それに君は嫌いだと言うが、ある程度好きでないと嫌いにはならないだろう?」
どんだけポジティブなんだよ!!?普通そういう思考にはならないと思うが!
「私は君のパンツを譲り受ける程の仲じゃあないか」
「無理矢理脱がしたの間違いだろ!て言うかどんな仲だよ!?」
「結婚を誓った仲」
「断じてちげえよ!!!…クソッ話が脱線し過ぎだ!元に戻すぞ!そんなに嬉しかったんなら、どうしてプッチは怒ってるんだよ!?」
「当たり前だろう。それを私ではなくミラションに一番に話したからだ。私はね、ナマエ、何でも君の一番でないと気が済まないんだ」
おいおい、なんだよ、それ…。何だか笑いが込み上げてきた…。
「はは、アンタって本当に気持ち悪いな…」
「誉め言葉として受け取っておくよ」
「はいはい、もう好きにしろ…」
「そうさせて貰おう」
「…ん?」
おい、どうして顔を近付けてくるんだ!好きにしろとは言ったが、そういう意味で言ったんじゃないぞ!?やめろ、誰がキスまで許可した!?
「ち、近い!離れろ馬鹿!」
「断ると言ったら?」
普段と変わらぬ様子で笑みを浮かべたプッチの顔が、鼻と鼻がくっつきそうな位置にある。クソ神父の吐息が顔にかかって、なんと言うか、その…味わった事のない気持ちだ。恥ずかしいような、嬉しいような、兎に角心臓が騒がしい…。―いや!やっぱり嬉しいってところは無しで!何だよ嬉しいって!嬉しかないよ!!
「ン?顔が赤いな」
「怒りでな!」
「ふうん?良いのかい?抵抗しなくて」
「う…」
抵抗しないんじゃあなくて、何故か出来ないのだ。
体が言うことを聞いてくれない。まるで、このままこいつにキスされるのを待っているみたいに……何て事だ…私はこいつに絆されたって言うのか?こんな変態クソ神父に?
「それはOKと取っても…良さそうだね」
「ちょっとは黙れねえのか!?」
「そうだね、口を閉じている事にしよう。開いたままだとキスは出来ないしね?」
「ぐ…」
ああ、くそッ!!
今だけ!今だけ大人しくしておいてやる!だが、これが終わったらまじで横っ面引っ叩いてやるからな!
脳内で誰に対する弁明か分からぬ事を叫び、私は静かに目を瞑るのだった。
>>>atogaki
ここまで読んでくださった方、短いながらもお付き合い有難う御座いました!
最後は抵抗した夢主に殴られるオチでも良かったのですが、敢えての絆されるオチです。~140202