「おはようございます…」
「ああ、おはよう」
朝、目が覚めると、枕元には綺麗にラッピングされた大小様々なプレゼントが置かれていた。寝惚けたままの頭で、ああそういえば今日はクリスマスだったっけかと思い出す。
「これ、皆が…?」
近くに居たプッチさんに聞いてみる。プッチさんから返ってきた答えは「君が良い子にしていたからサンタクロースからのプレゼントかもね」とすっとぼけたものだった。
「私、そこまで子供じゃありませんよ…」
「冗談だよ。私たちからだ」
プッチさんがクスクスと笑った。
「開けても良いですか?」
「構わないよ」
吉良さんからお許しを頂いたので、早速開封することにしよう。プレゼントは全部で7つ。
まずは一番小さな箱から。ラッピングを丁寧に剥がすと、中から現れたのは見るからに上等そうな布張りの箱。
「これ、まさか指輪…?」
「それは私からだ」
「吉良さんから?」
中を開けて吃驚。そこには、キラキラ光る宝石が一つ付いた指輪が納められていた。
な、なんだこれは…!?私がこんな高価なもの貰っても良いのだろうか!?
「あ、あの、本当に貰って良いんですか?凄く高そうなんですけど!」
「勿論。君の為に買ったのだからね。サイズも合っている筈だよ」
ええぇ…いつ計ったの!?
「だ、大事にしますね…有難うございます」
ちょっと引きつつも吉良さんにお礼を言ったら、「左手の薬指につけて」とサラッと爆弾を落とされた。普通にスルーしたけど。
さて、気を取り直して次のプレゼント開封してみようかな。今度は二番目に小さいプレゼント。包装紙を剥がすと、またもや高価そうな小箱がお目見えした。
箱を開けるとまたもや吃驚。高価そうな腕輪が現れた。金色にピカピカと輝いて光を反射している。…あれ、これどこかで見たことあるような…。
「それはこのDIOからのプレゼントだ」
「DIOさんからだったんですね、有難う御座います」
「フン…その腕輪はこのDIOの物と同じだ。死ぬまで片時も離さず大切しろ。良いな」
「ええ、そうします」
成る程、だから見覚えがあったのか。わざわざ私の手首の大きさに合わせているところを見ると、新たに作ってくれたのだろう。嬉しいけれど、やっぱり悪い気がする。大事にしなくっちゃ。
「次はこのカーズのプレゼントを開けろ」
「はいはい、カーズさんのはどれですか?」
「これなのだ!」
カーズさんから手渡されたのは細長い箱。開けてみると、大きな赤い宝石が付いたネックレスが入っていた。わあ…、なんて綺麗なんだろう!こんなの見たことない!
…ん?赤い宝石?
「エイジャの赤石だ」
「!!?…なんつーもん渡してんですか!!?」
「狼狽えるな、レプリカだ」
「紛らわしい事しないで下さいよ!!」
でも良かった、レプリカで…!本物だったらどうしようかと思った…!
お次は三番目に小さい箱だ。箱には有名なブランド名が刻印されている。中から現れたのは、可愛らしい瓶に入った香水だった。ピンク色の瓶が乙女心を擽ってくる。しかしまた高そうなものが出てきたなあ…。
「これは…」
「私からだ。箱から中身まで全て特別に作らせた、正真正銘世界に一つだけの香水だよ」
ヴァレンタインさんが微笑みながらそう言った。
またなんつー物を…。大統領はやはりスケールが違う。ただ、それだけに凄く反応に困るんだけど。
「あ、有難うございます…ヴァレンタインさん。でも使うの勿体無い気がします」
「ナマエが使ってこそだ。無くなればまた作れば良い。私は毎日つけて欲しいと思っているのだが…駄目かね?」
「い、いえ!」
また作れば良いって一般庶民には着いていけない世界だなあ…。ヴァレンタインさんは毎日使って欲しいって言ってるけれど、やっぱり勿体無いから大事な時だけに使おう。
それじゃあ、次を開封しようかな。小さめな箱を手に取る。
「それは俺からだ」
「ディエゴくんから?何かな、楽しみ!」
「気に入ってもらえると良いが…」
ディエゴくんからのプレゼントは腕時計だった。女の子らしい、可愛らしいデザインのものだ。流石はディエゴくん、センスが良い。壊れなければいつまでだって使えそうだ。
「ほら、ナマエ、前に腕時計壊れたって言ってただろ」
「覚えててくれたんだね。有難う、ディエゴくん!大事にするね!」
「いや…」
ディエゴくんは照れているのか目をふいっと逸らした。
では、お次は…と一番大きなプレゼントを見やる。何だろう、これ。凄く大きいけれど、何が入っているのかな。
ドキドキしながら封を解き、上蓋を開けてみる。
「えっ、これって私が欲しかった服!」
中から出てきたのは数枚の衣類だった。その全てが雑誌に載っていて、何時だか「良いなあ欲しいなあ」と溢していたものだ。ブランド物だから、私ではとても手の届かない衣服ばかりだった筈なのに。なのに今、それが私の手の中に!
感激していていると、ディアボロさんが「喜んで貰えたようで何よりだ」と笑んだ。これをプレゼントしてくれたのはディアボロさんだったらしい。
「ディアボロさん、有難う御座います!着てみたかったのばっかり!でも、こんなに何着も良いんですか?一着でも貰えたら十分なのに…」
「ああ。ナマエは黙って受け取っておけば良い。それとも、俺からのプレゼントは迷惑か?」
「そんな、まさか!」
「なら構わんだろう。今度それを着て、二人で何処かへ出掛けないか」
「はい、是非!」
これを着てお出掛けかぁ…!今から楽しみだなあ。
ディアボロさんが何故かカーズさんとDIOさんに外に引き摺られていったけれど、見なかったことにしよう。
「最後は私のだね。さ、開けてみて」
「はい」
最後の一つはプッチさんからのプレゼントだ。大きいが、あまり厚さは無いそのプレゼントの包装紙を剥がす。
「何が良いか思い付かなくてね…無難なものにしたんだ」
プッチさんからのプレゼントは、一冊の本だった。それはもう絶版になっていて、手に入らないだろうと諦めかけていた本。何処を探しても見付からず、入手するならもうプレミアが付いたものしかなかったものだから、お金を貯めて買おうと思っていたのだが、まさかプレゼントして貰えるとは思いにもよらなかった。
「わあ…プッチさん有難う御座います!これ、探してたんです!本当に嬉しい…」
「知ってるよ。ずっと君を見ていたんだから。その本、探すのに苦労したよ」
言いながらプッチさんは私の頭を優しく撫でて笑った。あれ、でも今怖いこと言わなかった?
…いや、気のせいにしておこう。深く考えるともっと怖くなるから。
「皆さん、有難う御座いました!こんなに嬉しいクリスマスって子供の頃以来かも!」
でも、本当にこんなにプレゼント貰っちゃって良いのだろうか?しかも皆高価なものばかりくれるし…嬉しいんだけど、私からは何も無いから凄く申し訳ないのだ。せめて、私に出来る事は何かないだろうか…。
…あっ、そうだ。
「貰ってばかりだと悪いので、私もお返しします!今日のディナーでも作りましょうか?」
張り切って腕捲りすれば、全員に心底嫌そうな顔をされた。
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実はプッチ以外全て下心有りきのプレゼントです。
指輪、腕輪、ネックレス…束縛したい
香水…わたしのものにしたい
服…その服を脱がせたい
時計…同じ時を歩んでいこう
ボス達は勿論それを狙って贈ってます。夢主は恐らく知らない。プッチはただ単に好感度上げようとする作戦なのかも。
131225
Merry Christmas