荒木荘 | ナノ
「ナマエ、若いのに一日中ゴロゴロしていたら人間が駄目になるぞ」

神父様からの有難いお言葉を頂戴したナマエは、しかし一貫して枕に顔を埋めたまま動こうとはしなかった。
そうしてくぐもった声で
「…良いんです。今日は何にもしないでゴロゴロする日だって決めたんですから。此処から一歩も動きません」
と自堕落発言までしてみせるのだから、これには神父もお手上げだった。
勉強は良いのか、だとか友達とは遊びに行かないのか、だとか言いたいことは山程有ったが、今のナマエには何を言っても馬耳東風なのだろうと諦め、プッチは心中で溜め息を零した。

「プッチさんも一緒にゴロゴロしましょうよ。凄く落ち着きますよ」
「しかし、」
「たまには休憩も必要ですよ。ね?」

枕から顔を上げたかと思いきや、緩く笑むナマエに見詰められてしまってはプッチも折れざるを得なかった。
ナマエに習い、彼女の横にその体を横たえる。天を仰ぐと、近かった筈の天井も遥か遠くに見えた。

「はあ、落ち着くな」
「そうでしょうそうでしょう」
「昔はよくこうしてDIOとベッドに寝そべっていたものだ」
「…ベッドに?」
「変な意味では無く」
「それなら良いです」
「君には私達はそんな風に写っていたのか」

あらぬ想像をしたであろうナマエへの小さなお仕置き(口実とも言うが)としてその手をぎゅっと握ってやった。
自分の手よりも遥かに小さなそれは、これ以上力を入れようものならすぐに壊れてしまいそうだ。改めてナマエは自分達とは違う、何の力も持たないただの女の子なのだと実感した。

「プッチさん?」
「…暫くこうしていては駄目かい?」
「いいえ、好きなだけどうぞ」

お父さんみたいです、と嬉しそうに声を上げ、ナマエもプッチの手を握り返した。そこまで老け込んだつもりは無いが、よくよく考えればナマエくらいの娘が居てもおかしくはないと気付く。自分は存外年を食っていたようだ。

「…こうしてると眠くなってきますね」
「そうだな」

ふあ、と大きな欠伸を一つし、ナマエは目を瞑った。
このまま寝ると背が痛くなるぞ、だとか何か羽織らないと風邪を引いてしまう、だとかまた言いたいことは山程あったが、ナマエに釣られて出た欠伸を噛み殺して、その考えを頭の隅へと追いやった。プッチもまた重くなってきた瞼を閉じ、暗闇の世界へと身を投げ出す。
今日だけ、今日だけならまあ良いか、と結局はナマエには甘いのだ。


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夢主の自堕落っぷりを書きたかった作品です。吉良とプッチが夢主の保護者ポジションだと思っているので、恋愛要素は少な目に家族愛に近いものを書いたつもりです。いつかガッツリ恋愛ものなんかも書いてみたいです。

130916 夢の中で逢いましょう
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