「下着が一枚無くなっちゃった…」
「えっ、ちゃんと探しました?」
「うん。昨日洗濯に出して今日干してた筈なんだけど…」
「じゃあ、もしかして…」
「下着ドロボウかもね」
物好きな人も居たもんだね。ナマエさんはカラカラと笑った。
けれど、これは笑い事じゃあない。彼女は自分の下着がド変態野郎に盗まれて何とも思わないのだろうか。何に使われているのかも分からないって言うのに。汚いアソコに擦り付けられてそれで自慰されてるのかもしれないのに。
「それにしても私の下着の何処が良いんだか。ドッピオくんも知ってるでしょ?」
「ええ、まあ…」
「あれじゃあまず興奮は出来ないと思うんだけどね」
確かにナマエさんの下着はあまり色っぽい物ではない。スーパーで売っているような安物だし、何より高校生の彼女が身に付けるにしては随分子供っぽい。彼女も、着替えなくてはならない体育の時間が憂鬱だとよく溢していた。
でも、だからと言ってそれが盗んでも良い理由にはならない訳で。
「犯人、僕が見付けましょうか。このままだと安心出来ないでしょう?」
「いいよ、そこまでしなくて!洗濯した後のだからあんまりダメージ無いしね。まあ、気持ち悪いことは気持ち悪いんだけど…。でも、これからはもっと気を付ければ良いだけの話でしょ?」
「でも、」
「本当に平気だよ。それに、下手に手を出してドッピオくんに何かあっても嫌だし…」
そう言ってナマエさんは僕の手を取った。
「ドッピオくんも気を付けるんだよ?ドッピオくんって可愛い顔してるから狙われちゃうかも」
「はは、僕こそ有り得ないと思うけどなあ」
「いやいや、世の中にはショタコンってのが居てね…」
「僕、そこまで若くないですよ」
苦笑いで答えれば、ナマエさんも「それもそうか」と釣られて笑ってくれた。
***
「ねえねえ、ドッピオくん聞いてよ!」
「どうかしました?」
「この前、下着無くなったって話したでしょ?」
「…ああ、してましたね」
「その下着が返ってきたの!まあ、気持ち悪いから捨てたんだけど…でも、凄くない?きっと下着ドロボウに良心が残ってたんだろうね〜」
「へえ、そんな事あるものなんですね」
「私も吃驚しちゃった」
無邪気に笑う彼女は知らないのだ。本当にその下着泥棒が自主的に返しに来たのかどうかなんて。その男の末路なんて。綺麗で穢れの無い世界で生きてきた彼女ではきっと想像すら出来ない。だが、それで良い。
「…もうナマエさんに手を出す馬鹿は現れないと思いますよ。僕がちゃんと守ってあげますから」
「有難う。それは頼もしいね」
だから、ナマエさんは何も心配しなくて良いんです。何も知らなくて良いんです。貴女に向けられる汚ならしい掃き溜めのような感情の事なんて、何も理解しなくて良いんです。ナマエさんが気付くその前に僕が全て壊してあげますから。
「…ナマエさん、今日は吉良さんが遅くなるそうなんです。なので、僕が夕飯を作りますけど、何かリクエストありますか?」
「じゃあ、ナポリタンが良いな!」
「分かりました。僕、ナマエさんの為に腕によりをかけて作りますよ!」
ね、僕の可愛いナマエさん。
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ドッピオは夢主のセコムです。
彼もギャングなので、怖い一面を書きたかったのですが、どう転んだか少し病み気味に…。下着泥棒はお察し。
131013
守ってあげる