「…いい加減やめてくれないか」
夕飯のカレーライスを食べながら吉良は言った。いい加減に鬱陶しくなってきたのだ。お通夜モードのナマエとカーズが。
二人で「夕飯はカレーライスにしろ」と騒ぎ立てた癖に、いざ作ってみるとこれである。手が付けられていない儘のカレーライスを見遣り、吉良は眉間に皺を寄せた。
「何をそんなに落ち込んでいるんだ」
「死んだんです…」
「何が」
「初代たまごっちが…」
「古いな!」
荒木荘を代表したディエゴの突っ込みが冴え渡った。
存外下らない理由に吉良は呆れ返った。たまごっちが死んだからどうしたと言うのだ。たかが電子ゲームではないか、と。
「そんな下らない理由で落ち込む暇が有ればさっさと飯を食え」
「貴様アッ!吉良ッ!!たまごっちがどんな思いで死んだのか貴様には分かるのか!!?」
「いや、殺したのカーズさんですけどね」
ナマエの辛辣な一言にカーズは居住まいを正して黙りこんだ。
言われるまでもない。自分がえさをあげ忘れたり、挙げ句排泄物の処理を怠ったからたまごっちは死んだのだ。
「たかが電子ゲームじゃあないか。またやり直せば良いだけだろう?」
「新しく始めたところで、あの子はもう帰ってこないんです!」
「どれも見た目は一緒じゃあないか」
「いいえ、見た目が同じでも中身が違います!」
「電子ゲーム如きにそこまでのめり込む思考回路が理解できないな」
「それ、艦これを毎日のようにやってるディアボロさんにも同じこと言えますか!?」
「いや、俺は関係な…」
「ディアボロさんはちょっと黙ってて下さい!」
「………」
あんまりな扱いにディアボロは閉口した。ナマエの自分に対する態度が日によって違いすぎてどう接すれば良いのか分からない。これが年頃の娘なのだろうか…離れて暮らす実子トリッシュに思いを馳せた。
「聞いている限り何が良いのか全くもって理解不能だな。そいつらは食ってクソして寝るだけだろう?」
「ディアボロさんの悪口は止めてください!」
「エェェーッ!!?」
ディアボロは思った。とんだとばっちりであると。
「そろそろ食べてくれないと片付けも出来ないんだが」
「ご飯が喉を通りません…」
「同じく…」
まだお通夜モードが抜けない二人に対し、吉良はいい加減我慢の限界だった。人に夕飯を作らせておいて、こいつらは何様のつもりなのだ。
「今すぐカレーライスを食べないと、明日の夕飯にたまごっちを解してふりかけた物をディアボロに食わせるぞ…」
「エェェーッ!?いや、ちょっ、待っ…」
「吉良さんは鬼です!人の皮を被った鬼です!たまごっちを解すだなんてそんな…!」
「なんと惨たらしい事を考え付くのだ貴様は!!このカーズが生きてきた中でその様な外道には会ったことが無いッ!!」
誰もディアボロの事を心配しない中、ヴァレンタインだけはディアボロの肩に手をポンと置き、心底同情した顔をした。
「私は本気だぞ…?死にたくなければさっさと食べろ…」
吉良の目が爆破も辞さない、と物語っている。
それを見たナマエとカーズはたまごっちの事を記憶から消し、黙ってカレーライスをかき込むのだった。
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物凄く下らない話。キャラ崩壊ってレベルじゃない。別名ディアボロいじめです。これの前のお話でディアボロを気遣っていた夢主ですが、今回は弄る側です。でもこれも愛有っての言動なのです。
余談ですが、一言も喋っていないDIOとプッチは「肉くれ」「いや無理」という会話をしていたりします。
最後の夢主とカーズは、夢主は恐怖から、カーズはご飯作ってくれなくなるのやだなと思いつつカレーライス食べてます。
130918
電子ゲームに命を賭ける者たち