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2月14日。聖バレンタイン。
愛の告白や贈り物をする日として、また日本では主に女性が男性へチョコレートを渡す日として認識されている。

そんな一大イベントバレンタインを数日後に控えた此処、荒木荘では、男達が集まり緊急会議を開いていた。
議題はそのものズバリ『ナマエからのチョコレートをどうするか』である。
毎年飽きもせずチョコレートを溶かし、型に流し込んではまた固めるという―無駄な―手の掛かる作業を繰り返し、あまつさえそれを全員分用意しているのだ。それが美味しければ何ら問題はない。あげて嬉しい、貰って嬉しい。利害関係が一致する。
しかし、溶かしただけのチョコレートであってもナマエの手に掛かれば一瞬で黒炭と化す。誰がハート型の黒炭をプレゼントされて喜ぶと言うのか。
一昨年と去年は、黒炭であれナマエが端正込めて作ってくれたものだからと甘い気持ちでチョコレートを食べ、ディエゴと吉良が腹を下した。これでもチョコレート自体には特別手を加えていないと言うのだから驚きだ。彼女から何か有害な物質が出ているとしか思えない。


「…で、どうするんだ。ナマエはまた作るつもりだぞ。これでは命が幾つ有っても足らん…」
「いや、実際にお前は命が幾つもあるようなものなのだから構わんだろう」

ディアボロはカーズからの突っ込みを無視した。相手にしては負けだと思っている。

「癪だが、ここは全員で協力するしか無さそうだな」
「右に同じ。一人だと対応しきれないだろう」

吉良の意見に全面的に賛成のプッチは、何としてもナマエからのプレゼントという名の人殺し道具をどうにかしたい一心である。まだ39という若さで命を経つ気は更々ない。何より双子の弟よりも先にこの世に別れを告げるなんてそれこそ癪だと思ったのだ。

「仕方ない。それしか無さそうだな」

吉良やプッチ以外の男たちも渋々ながら首を縦に振った。こうしてここにナマエからのプレゼントテロ対策本部が発足された訳である。


「――作戦はこうだ。ナマエがプレゼントを渡そうとするだろう?それをディエゴとドッピオ、君達が引き留めて欲しい。あれやこれやと話題をふっかけ、チョコの事を忘れさせるんだ」
「しかし、ナマエはそれだけでチョコを忘れるほど馬鹿ではないぞ」
「そこで君の出番だ。何れにせよチョコを食べなくてはならないだろう。だから、僕達が口に含む前に時を止めてチョコを捨てて欲しい」


▼少し話が進みます


「はい、これ。バレンタインのプレゼントです」

――来た…!!
その場に居た全員に戦慄が走った。先程の作戦は果たして上手くいくのだろうか?一抹の不安を抱えたまま時は進んでいく。

「…確認だが、中身はチョコレート、だね?」

恐る恐る吉良は聞いた。返ってくる答えは「そうです」だろうと思いながら。だが、ナマエから返ってきた答えは、予想に反し「いいえ、違いますよ?」――否定だった。

「包装開けてみてください」
「これは…?」
「ミサンガです。作ったんですよ」
「ナマエが、だよな?」
「他に誰が居るんですか。そう何年もチョコレート渡してトイレに駆け込まれたら困りますからね。せめてバレンタインくらいは健康にと思ったんです」

バレンタイン以外は良いのか。吉良は思った。


***

以上です。書きたいところ摘まみ食いして書いたものの、ここに書かれていない部分が納得出来なくて完成出来ませんでした。
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