▼ 紅瞳の悪魔 (1/7)
花の街イヴェルナはその名の通り、街中に色とりどりの花が飾られた美しい街だった。
だが、普段は人々の活気に溢れるその街も、悪魔の噂のせいなのか、窓という窓は閉められ、不気味に感じるほどに静まっていた。
レンガ作りの床を歩く自分達の足音だけが辺りに空しく響く。
「ねぇ…本当に置いてきてよかったの?」
傍らのレイラが囁く。
辺りがこう静かだと、なんだか音を立ててはいけないのではという錯覚に陥るものだ。
「本人の好きにさせてやればいいんじゃねーの?…でもまあ、あいつがいないとこの街は静か過ぎるな」
あいつ――いつも賑やかなラックは、今はティール達の船で待機している。
彼女にとって初めての獣人の仲間だったから、いろいろと話したいことがあったのだろう。
ティール達が残るならあたしも残る、と言って聞かなかったのだ。
やけに静かなイヴェルナの雰囲気に、ラックのハキハキ声が懐かしく感じる。
「ひとまず情報収集といかないか?僕達は紅瞳の悪魔について知らないことが多すぎる」
「…じゃあ二手に別れて探そう。俺はレイラと探してみるから、ルースはティアをよろしくな!」
ロランの提案にルースはこくりと頷き返す。
街の入口にある噴水前に集合と約束し、二手に別れた。
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