想い出のキセキ | ナノ


▼ 一番の宝物 (1/4)

「…あのさぁ、ラック」

「んにゃ?」

パーティーの先頭に立ち洞窟内を意気揚々と歩くラックに話しかける。
さっきからどうにも気になることがあった。

「……ここ、盗賊団の倉庫なんだろ?」

「うん」

「なんで魔物がいるんだ?」

ラックはしばし、きょとんと目を瞬かせる。
んー…と考えこんだ後発せられた彼女の一言は

「さあ?」

「『さあ』って…知らないのかよ!」

叫びつつラックの背後を狙って襲ってきた蝙蝠型の魔物の翼を剣で切り落とす。

「魔物にはあたしら人の道具の使い方なんてわかんないんだし問題ないじゃん」

「そういう問題か?」

あっけからんとした反応のラックにロランはため息が出てしまいそうになる。
なんだかラックがメンバーに入ってから自分はボケることが少なくなったような気がする。
…いやそれはいいことなのだろうけど。

「ラック、宝物庫まで後どれくらいなんだ?」

いつ魔物が現れても対処できるよう槍を構えつつルースが問う。

「もうすぐだよ、ほらあの角を曲がったところ!」

そう言って駆け出したラックの後を慌てて追い掛ける。
角を曲がりたどり着いたそこには、まばゆいばかりの金銀財宝が。
王族であるルースでさえも息を呑んでいることからして、そうとうな量なのだろう。
洞窟内には少ない光しか無いのにも関わらず、ここだけはとても明るく輝いていた。

「…何ぼーっとしてんのさ!あたし達は宝物を探さなきゃならないんだよ!」

ラックの声で我に返る。
そうだった。
グランドの言う一番の宝物を見つけてくるのがここへ来た目的だった。

「…でもさあ………」

大量の金やら宝石やらを見ながら呟く。

「どうやって探すんだよ」

ぴたり、と。
ロランの発言でラックを含め全員の動きが止まる。

「私、宝石の価値なんてわからないです…」

「ルースならわかるかしら?」

「ごめん、僕そういうの興味無かったから」

決まりが悪そうに肩を竦めるルースに、こいつは本当に王族なのかと疑ってしまう。

「…片っ端から漁ってみるしかないようだね」

気が引けるけど、とルースはため息を漏らした。


prev / next

[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -