▼ 砂漠の国デザーム (1/4)
ざくざくざく…
砂の道を踏み締める音だけが辺りに響く。
ラックは慣れているようだが、あまりの足元の不安定さにロランさえもが話すことを忘れ黙々と歩いていた。
「あっ、あれじゃないか?」
ルースのつぶやきで足元に向けていた視線を前へ向ける。
砂漠の国、デザーム。
それは国――というより集落に近かった。
人々の貴重な水源となっているらしいオアシスを中心に、大小様々な石壁の家が点々と建っている。
ふと、デザームを見渡していたロランの目に、茶色の猫耳がちらつく。
「ここ、盗賊多いから気をつけたほうがいいよ。」
そう言うラックの手に握られていたのはレイラが預かっていたはずのロランの財布。
え、と間のぬけた声を漏らし何がなんだかわからない様子のロランにラックは一つの家の影を指差し、ロランに耳打ちする。
「あそこに隠れてる奴いるでしょ?さっきレイラからスッてたから取り返しといた。」
自慢気ににゃははと笑うラックを素直に凄いと思う。
さすがは本職といったところか。
「この辺は親方が仕切ってるから、悪い奴以外からは盗んじゃ駄目だってのに。後で言い付けてやる。」
そうにっしっしっと意地の悪い笑みを漏らすラック。
…って、お前はどうなんだよ!
そんなロランのツッコミは口元まででかかって飲み込まれる。
ラックがそそくさと街の奥へ走っていってしまったからだ。
「おーいっ!こっち、こっち!」
ラックは飛び跳ねながら両手を大きくロラン達に向けて振っている。
追いついた先にあったのは一際大きな建物だった。
見た目は他の建物となんら変わりはないが、ここがグランド率いる盗賊団のアジトらしい。
ラックは入口で立ち止まると、くるりとこちらへ向き直り無い胸を張って高らかに言った。
「ようこそ!我がディアス盗賊団へ!」
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