▼ 港町サディラ (2/4)
世界有数の規模を誇るサディラの冒険者ギルド、『アミルティ』――通称『エリィのギルド』
それは思ったよりも質素なデザインの3階立ての建物だった。
1階は酒場になっているらしく、扉の横には『BAR』と書かれた看板が垂れ下がっている。
「『アミルティ』は勇者の女神の名前から取られたのよ。…まあみんなそっちで呼んでくれないんだけどね」
そう言ってエリィは苦笑する。
ギルドマスターエリィの名前が先に有名になってしまい、『エリィのギルド』の名称ですっかり世の中に浸透してしまったらしい。
「…あっ、そうそう。耳塞いでたほうがいいわよ」
「へっ?」
エリィの言葉の意味が解らず間抜けな声を漏らすロラン。
エリィが扉の戸に手をかけ内側に引いた瞬間、それこそ一瞬地面が揺らいだのではないかと疑うほどの大声がロラン達に飛び込んできた。
「「「ようこそエリィのギルドへ!!!!」」」
屈強な身体付きの大男やら、エリィと同じくらいとグラマラスな女性やら、一見本当に冒険者かと疑うような白い髭を生やした老人や小さな女の子や……エリィのギルドのメンバーであろう冒険者達が次々と新しい仲間の登場に祝福の言葉を述べる。
「だから耳塞いどけって言ったのに」
とんでもない声量に耳を押さえながら顔を引き攣らせているロラン達にエリィが苦笑を漏らす。
「んなこと言ったってなぁ………うわぁっ?!」
エリィに反論しようと顔を上げたロランは急に強い力で腕を引っ張っられバランスを崩す。
ぼすっと顔をぶつけた先はやけに筋肉質な男性の胸だった。
見上げると先程見かけた大柄な男が、がははははと威勢のよい笑い声を上げていた。
「おうおうおう、なんでぇ細っこい身体しおって!肉食ってるかぁ?」
バンバンバンと勢いよくロランの背中を叩きながら大男は笑い続ける。
「い、いきなりなんだよオッサン!痛いっての!」
「おお?オッサンったあ言うじゃねぇか!気に入ったぜボウズ!」
ボウズ呼ばわりに突っ掛かるロランを余所に男性は新しい冒険者をまじまじと見回していく、一番最後に面倒臭さそうに頭の後ろで手を組んだラックを見てから男は口元に笑みを浮かべた。
「今回は一段と威勢のいいのが揃ってんじゃねぇか、流石だぜエリィの姐御!」
「お褒めいただいけて光栄ね」
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