修学旅行先での逢い引き | ナノ
 



困ったぞ。迷子になってしまった。


中学校生活の中で最大のイベントと言っても過言じゃない行事。
僕は今、修学旅行に来てます。
ほらっ、修学旅行って滅多に行かないような所に来るでしょっ?
だから浮かれて色んなお店をキョロキョロと見てたら友達に置いてかれた。
ちょっと!勝手に行動した僕が悪いけど放ってくなんて酷いっ!
歩き回ってたら方向分かんなくなってきた。
うあー…


「そこの僕ー?何、迷子ー?」

間延びした喋り方が耳に届く。
うっかり人気の無い道に入り込んだから周りに誰も居ないし僕の事、だよね?
振り向いて姿を確認して後悔した。
髪はそんな色に出来るのかって思うような派手な金髪とか緑とかやっぱり金髪とか。
多分ここら辺のガラの悪い高校生達に絡まれてしまった。
うわぁあっ、確かに僕はぱっと見パシリとかにされてそうだけどっ。
思わず固まってたら緑頭の人に肩を掴まれた。


「ひっ!」

「そんな怯えんなって〜。持ってる金全部寄越したらお友達の場所まで連れてってやるからさ〜」


絶対嘘だ。おばあちゃんがお金を寄越せっていう悪い人は嘘つきって言ってた。
俺が首を横に振ったら段々肩を掴む手に力篭ってて凄く痛い。
涙滲んできたよぉ。


「早く金出せやクソガキっ!」


緑頭が青筋立てて拳を振り上げてきた。
なっ、殴られる!
両目を固く閉じて来るであろう痛みを待ってるのに一向に訪れない。
時間差、とか…?
恐る恐る瞼を開いたら俺の前に拳があった。
うわぁぁっ!
でも、その腕を誰かが掴んでる。
掴んでる手の先を見たらピンク色の髪がよく似合う綺麗な人が居た。
この人、ほんとに綺麗。
不良達に比べて若そうだし、もしかして同じ中学生かな?


「テメッ、何してやが…」

「黙れ」


綺麗な人が一言発してから、一瞬だった。
周りに居た不良が次々と倒れて今は綺麗な人しか立ってない。
す、凄い…!


「お前」

「うぇっ、はっ、はい!」

「怪我は?」


そう言って俺を撫でてくれる手は凄く優しくて、ほんとに不良達を殴り飛ばした人とは思えない。


「なっ、ないですっ」

「そう。お前、迷子?同じ制服着てる奴見たから連れてってやる」


撫でてた手が離れて俺の手を引いて歩く。
見た目は凄く派手だし喧嘩強いけど良い人だ。何でだろ、ドキドキしてきた。
多分、身近にこんな綺麗な人が居ないからだろうな。


少し前を歩く、少し背の高い彼を見つめて連れられるままに歩いていたら皆と逸れた場所に辿り着いた。
あ、皆が居る。もしかして僕を探してくれてるのかな…?


「ほら、戻れよ」


彼の声に促されても動けない。何でだろ。もっと一緒に居たい。


「あのっ、本当に有り難うございました!良かったらお名前を…」


全部言葉を紡ごうとしたけど叶わなかった。綺麗な笑みを浮かべた彼に見とれてしまっただけじゃない。
今僕は、彼とキスしてる。


「……名前は次会った時な」


それだけ言って彼は去ってしまった。
唇に残る感触を確かめるように指先でなぞって見えなくなった後ろ姿を眺めていたら皆が僕の名前を呼びながら駆け寄ってくる。
勝手に逸れて怒られたけど本気で心配してくれてたらしい。
何をしてたかって聞かれたけど不良に絡まれた事や彼の事は言えなかった。
彼と僕の、二人だけの事にしたかったから。



高校生になった僕たちは再び出会うんだけど、それはまた別のお話で。



2011/01/19
お題サイト瞑目様から拝借しました。
実はお互いに一目惚れ。
でも惚れた場所は見た目じゃありません。
またそのお話も書きたいなぁ。


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