今日は早めに生徒会の仕事を終えて愛しの恋人が待つ部屋へと戻る。
仕事が忙しくてろくにヤれなかったし、久し振りに…
自然と口許に笑みを浮かべて部屋に戻ると、何故かソファーで三角座りをしている。
俺の部屋は広い。生徒会長の特権だ。尚且つソファーも広いのに隅で三角座りって…
そんな事を思ってる矢先啜り泣く声が聞こえて足早に歩み寄る。
「おい、どうしたんだ?」
「うっ、うぅー…」
見えた平凡な顔は号泣した所為か涙と鼻水だらけで汚ぇ。
欲求不満なのもあって泣き顔が可愛いとかもっと泣かしてぇとか込み上げてくる邪な感情を抑えて隣に腰掛ける。
少し待ってみてもなかなか泣き止まねぇ。
「何で泣いてんだ?」
出来るだけ優しく頭を撫でて顔を覗き込んだ。
俺が居ない間に何かあったのか?今はもう親衛隊の奴等に言い聞かせたから制裁は無い筈だ。
じゃあ何でだ。
何でこいつは泣いてんだ。
「……人魚姫」
やっと落ち着いたのかこっちを見て呟いた一言。
「………は?」
何の突拍子もなく呟かれた言葉に思わず声が裏返る。
「だから、本当の童話って本を借りて、人魚姫読んだんだ」
「で?」
「………人魚姫は最後、泡になって消えるんだって」
確かに、確かに原作は結局王子は別の女を選んで人魚姫は泡になって消えてまう。
こいつは子供向けに書かれたハッピーエンドの人魚姫しか知らなかったのか。
「王子様の為に声まで失って痛いの我慢して足を貰ったのに可哀想過ぎる…」
ああなんて可愛いんだ。
こんなに可愛い奴は世界中で探しても他に居ねぇな。
そんな作り話でここまで号泣するなんて。
俺には無い素直さと単純さ
だからこそ惹かれたんだ。
純粋過ぎるこいつには
残酷過ぎる本当の話
「……バーカ」
「バカじゃないし」
泣きながらもむきになって思いっきり睨んでくる。
本当にバカだバカ。
「安心しろ。それは嘘の話だ」
そっと抱き締め耳元で囁く。
「嘘?でも本当のって…」
「それは、本当のって書いときゃ売れるからだよ」
「じゃあ、本当の話じゃないの?」
「そ。本当はちゃんと人魚姫と王子様が結ばれて幸せに暮らしたんだよ。俺達みたいに」
「そっか……じゃあ人魚姫も幸せになったんだな」
泣きやんですぐに嬉しそうにはにかみ笑う。
愛おし過ぎる可愛い存在。
「だから、俺らも負けないぐらい愛し合おうぜ」
「…バカ」
照れくさそうに悪態を吐きつつ頷いた。
俺の最愛の人。
現実は残酷すぎる話
でも純粋なこいつが泣いてしまうなら
嘘を吐いてもいいだろ
人魚姫は泡になんかならない
自分の声と引き替えに
愛する王子様と幸せに
2010/12/18
お題サイト瞑目様から拝借しました
人魚姫の話は凄く好きです
ハッピーエンドでもバッドエンドでも人魚姫の一途さが可愛い
生徒会長×平凡です
またこの二人を書きたいなぁ
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