王子様は加害妄想疾患者 | ナノ
 



「生まれてきてごめんなさい」

「……おい、何で人の部屋の前で土下座してんだよ」



俺の声に半泣き…いや、もう泣いてるか。
号泣しながら顔を上げた大江 純平(おおえ じゅんぺい)を見下ろす。
俺が何かしたみたいになってるじゃねぇか!
まぁ一応俺らは付き合ってるって事になってるんだよなー…泣くんじゃねぇって蹴りたいのを我慢だ我慢。
しゃがんで視線を合わせたらビクッて身構えたぞこいつ。
俺にビビんなよ!


「…で?何で土下座してんだ?」

「きっ、昨日、メールでおやすみって送ったけどっその、返事なかったから…」

「あー…」

おやすみだけ来たら別に返さなくても良いんじゃね?
でもコイツは良くなかったのか。


「だだだからっ!ぼっ僕、知らないうちに、こっ弘毅(こうき)に嫌な思いさせちゃって愛想尽かされてっ、…生まれてきてごめんなさいいいいいっ!」

「あ゙あーっ!怒ってねぇし何もしてねぇから取り敢えず中入れっ!話はそれからだっ!」

どうしようもないぐらい純平が泣き出したもんだから仕方無く寮の俺の部屋に入れた。
こいつが泣くと周りの視線が痛ぇんだよ。
はぁ、今日も一限はサボリか…何でこんな奴と付き合うはめに…


全ては同じ寮生のダチとのゲームが始まりだ。
ストレート負けした俺に課された罰ゲームは「王子様に告白する事」
王子ってのは純平の事な。
こいつはハーフでブロンドの髪に青い瞳、長身色白の美形だから女子共が王子様ってあだ名付けたんだよ。
俺はちょーっと偉そうで喧嘩っ早い、目付きが悪い顔した平凡男。
罰ゲームなら仕方ねぇしまずこいつが俺を相手にするわけねぇ。
女ならまだしも男の俺だぞ?
本気にされず笑われて終わると思ってた。

でもこいつは本気にしてオッケーしちまったんだよなー。
しかも「僕で良ければ喜んでっ」って号泣して。
あまりに泣くし冗談だって言えなくてそのままずるずるってな。
まさか王子様がネガティブで泣き虫だなんてよぉ。
女子には睨まれるし男子には面白がられるし…純平は泣くし。
とんだ貧乏くじだ。


「あのなぁ、いちいちおやすみだけをメールしねぇって普通」

「そっ、そうなのっ?嫌いになったとかじゃ…なくて?」

「ああ」

「よかったぁ…僕、皆と違うからやっぱり気持ち悪いのかなって…弘毅に嫌われたら立ち直れなかったよ…純平大好きー」


めんどくせぇしこんな奴ともう関わりたくねぇ…のに最近はこの気の抜けた笑顔に絆されてきてんだよなぁ。
ここまで俺が純平に懐かれる理由は分かんねぇけどこんなに好かれるのは普通に嬉しい。
それに元が綺麗だから破壊力抜群なんだよ。
当の本人は人と違うからって自分は変な顔とさえ思ってるけどな。
周りも見てるだけで話し掛けてくれないからって人と違うから笑われてるって勘違いまでしてる。
しかも口癖は「生まれてきてごめんなさい」
こいつなりに色々あったのかもしんねぇけどネガティブ過ぎんだろ!


「安心しろ。お前みたいな泣き虫でどうしようもない奴でも俺は一緒に居てやるから」

「!!あっ、ありがとぉっ」

あ、また泣き出した。
そんな鼻水垂らして抱き着くなよ汚ぇな。
まぁそんな勘違い、少しずつ治していきゃ良い。
俺はありのままのお前が…いや、何でもねぇ。
さっさと泣き虫治せ、馬鹿。




2011/12/16
泣き虫な美形は割と好きです。自分に自信がない美形とか。
学校は共学で寮もあるという設定です。弘毅は寮生、純平は自宅通い。
純平が弘毅を好きな理由ははっきりと言いたい事を言ってくれるからです。純平はちょいMなので。
寮の入口の鍵が開いた時間から純平は土下座待機してました(笑)






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