その顔に興味無し! | ナノ
 



「いやぁっ!学君そんな顔しないでぇっ!」

「悟君もそんな変な顔しちゃ駄目ぇっ!」



女子の悲鳴混じりの悲痛な声が耳に届く。
その原因は俺の机の両サイドでしゃがんでる馬鹿共の所為だ。

俺の右側に居る前田 学(まえだ まなぶ)は鼻の穴を広げて寄り目をしていて更には頬を膨らませて自分の両耳を引っ張ってる。
何だその猿みたいな面は。

そして左隣に居る坂田 悟(さかた さとる)は鼻に割り箸刺して反対側を口に咥えてる。
これでハチマキ巻いてザル持ってたら忘年会ではしゃいだ課長みたいになるな。もうそこまでやったならハチマキ巻いとけよ。

何でこいつらがこんな顔をしてるのかと言えば俺の所為。



ある日何故か俺、中田 直(なかた なお)はこの2人に告られた。
しかも同時に。
あの時は意味が分からなかった。
学校中どころか他校の女子にまで人気がある馬鹿だけどイケメンなこいつらが俺に告白?
俺、男なのに正気か?
目がマジだったから正気だったんだろうな。余計タチ悪い。
そしてその時の俺の返答はと言えば、「俺、顔は不細工な方が好きだからお前ら無理」。
だって顔が綺麗な奴って一緒に居ても落ち着かないしこっちも自分の見た目を気にしてしまう。
その点、不細工は気が楽だ。
いや別に不細工じゃなくても良いけど…やっぱ不細工ぐらいの方が愛嬌あって良い。
笑うと歯並びが悪かったりしたら可愛い。
先ず、女の子が大前提だけどな。


そして今、あの時の返答を盛大に悔いている。
ああ言えば諦めると思ったのに状態は更に悪化した。
どんな頭の構造をしてんのか分かんないだけどマジで。
俺の返答を考えた結果、馬鹿共の脳内ではこう解釈された。

「変顔をして俺を笑わせた方と付き合ってやる」

意味分かんねぇよ。
だからお前らとは付き合わねぇって。
無理無理。
それなのに毎回休み時間ごとに俺の傍で変顔をして俺を笑わせようとする。
マジ意味分かんねぇ。
やっぱこいつら意味分かんねぇ。
女子の嘆きの声聞けよ。
最近慣れてきた一部の女子なんかその顔も良いとか言い出したんだぞ。
良いわけねぇだろ。



「おい、そんな顔しても俺は笑わねぇぞ。寧ろ笑えねぇから」

「んーんーっ!」

先ず前田、お前口から空気抜け。
何言いたいっつか何やりたいんだよ。

「ふがっ、はぐっ」

そして坂田、お前は割り箸抜け。
もう見てても憐れみしか感じねぇから。

「相変わらず中田はモテモテだなぁ」

「ふざけんな近寄んな肩組むな」

こいつら馬鹿イケメン2人が纏わり付くようになってから更にイケメンの上田 要(かみた かなめ)まで俺に構うようになった。
まさか校内3大イケメンが俺の周りに集結するとは。
神様、悪戯が過ぎるだろ。


「ぷはぁっ、上田!気安く俺の直に触るな!」

「いつ俺がお前のものになった。気安く俺の名前を呼ぶな」

「ぐっ、鼻痛っ…そ、そうだ前田に上田!俺の直だぞっ」

「坂田、お前はもう一生割り箸咥えてろ。喋んな」



人間、顔が良い奴に碌なの居ないんだな。
やっぱイケメン無理。




「「明日こそ直を笑わせてやる!」」

「面白そうだから俺も混ざろっかな」

「美形とか無理だから。もうお前ら喋んな近寄んな消え失せろ!」





2011/03/24
仲良くしていただいてる、えいりさんからネタをいただきました。
不細工好きな平凡の気を引こうと必死に変顔をするイケメン達です。


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