Sweet Holic | ナノ
 



昔はそんなに甘いのが好きじゃなかった。
ましてや洋菓子とか食べたりしなかった。
きっかけは、貴方。





「今回のモンブランはどうだ?」

「んー…クリームがくどくなくて美味しい。スポンジに練り込まれてるナッツの歯応えも良いしありだと思う。俺好み」

「じゃ、新メニューに考えとく」


やっぱり彪流(たける)兄ちゃんの新作だったんだ。
彪流兄ちゃんのケーキは最高だなぁ。
それに嬉しそうに笑う彪流兄ちゃんは凄く格好良いよ。


彪流兄ちゃんは昔から面倒見てくれてるお隣さん。
お互いに両親が共働きなのもあってよく彪流兄ちゃんちに預けられた。
初めて会った時の彪流兄ちゃんはピアスだらけで髪も派手な怖い不良だったから号泣したっけ。
でも本当は優しくて不器用に宥めてからホットケーキを作ってくれたのが事の始まり。
それで泣き止んだもんだから彪流兄ちゃんは毎日のようにお菓子を作ってくれるようになった。

そして彪流兄ちゃんはお菓子を作るのが楽しいからとパティシエになった。
彪流兄ちゃんが作るお菓子は本当にどれも美味しいから直ぐに巷で有名になったんだけど、
人気になった理由はそれだけじゃない。


「彪流さぁんっ。私達にもケーキお願いー」

「はい、ただいま。お前も好きなだけ食えよ。奢りだからな」


ぐしゃって俺の頭を撫でて彪流兄ちゃんは呼んでた女の人達の所に行った。

彪流兄ちゃんや他の店員さんはそこら辺のモデルより格好良い。
それがこのお店が流行ってるもう1つの理由。
パティシエとウエイター目当てのお客さんが多い。
俺もその内の1人だけど。


「(あの人、前も彪流兄ちゃんを呼んでたなぁ)」

前にも見た事がある可愛らしい女の人。
髪をふわふわに巻いて笑った顔も凄く可愛い砂糖菓子みたいな人。

「(彪流兄ちゃんはあんな感じの人が好きなのかな)」

そういえば彪流兄ちゃんを呼ぶ人は皆ふわふわしてて女の子らしい人ばっかりだ。
ケーキが似合う、そんな感じの人。
顔も良くないどう見ても男の俺とは正反対。

最初は優しいお兄さんに憧れてる感情だと思った。
でも彪流兄ちゃんが女の子に呼ばれて家を出ていった時、凄く胸が痛くなった。
幼い俺でも彪流兄ちゃんを恋愛対象として好きなんだと分かった。
分かった所でどうしようもない恋だけどね。
男で、7歳も年下で、平凡な俺。
どう考えても彪流兄ちゃんにそういう目で見てもらえる要素がない。
期待とかしない。
有り得もしない『もしかしたら』に期待する程馬鹿じゃないよ。
彪流兄ちゃんにとって俺はただの弟なんだ。
この恋は絶対実らない。
それぐらい分かってる。


「(でも、)」

ただの弟でも良いから、貴方を想いたい。
恋人だとか大それた存在は願わないから、貴方の新作を1番に食べさせてもらえる存在のままでいたい。


この恋が叶わなくても良いから
それぐらいは願っても良いかな?





2011/03/07
甘いのが好きな男の子も甘いものを作る男の人も可愛いなぁと思って書きました。


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