今はこれが精一杯で | ナノ
 



「は、はい。プリント」

「ん……おう」


教室の窓側の後ろから二番目。
そこが俺の席だ。
日当たりが良くて結構気に入ってる。
でも周りはこの席に座る俺を憐れむような目で見てくる。

原因は俺の後ろの席。

その席に座るのは綺麗な顔立ちだけどいつも不機嫌そうに眉間に皺を寄せてるクラスで唯一の不良。
周りは出来るだけ関わりたくないからって彼を窓際の一番後ろに座らせた。
まるで、隔離するように。

俺も最初はこの席が嫌だった。
いつむしゃくしゃした彼に殴られるか分かんなかったし、何よりも一日最低でも一回はプリントを配る為に後ろを見なきゃいけない。
その時に彼と接触するのが何よりも怖かった。

初めてプリントを配った時は彼に思い切り睨まれた。
不良とは無縁の平凡な俺は睨まれただけで体が震える。
やっぱり機嫌が悪いのかって思ったけど、彼は周りには聞こえないぐらい小さな声で「ありがと」って言った。
まさかプリントを配るだけで不良にお礼を言われるなんて思わなくて驚いた。
そこから、彼への印象が変わっていった。

二回目にプリントを配った時は彼は寝ていた。
少し残念に思ったけどまだ少し怖かったから起こすなんて出来なくて机の空いたスペースに置こうとした。
昼下がりの午後、天気が良くて丁度光が射し込んで。
不良なのに綺麗な黒髪が光で反射してキラキラした。
目付きが怖くてじっくり見れなかった顔を覗き込んだらやっぱり綺麗な顔立ち。
瞼を伏せたお陰で睫毛が物凄く長いのがよく分かる。
耳を澄ませて聞こえる寝息は低い声と違って少し可愛さすら感じた。
思わず、その姿に見とれてしまった。


それから俺はプリントを配るのが待ち遠しかった。
起きていても寝ていても、彼がどんな反応を見せてくれるのかが楽しみだった。
今日こそ休みだったら、とか思ったけど不良の割に毎回ちゃんと授業に出てるから彼は意外に真面目なのかもしれない。
そんな一面を知るだけで胸が高鳴った。

段々俺の中で彼の存在が大きくなっていく。
彼は、プリントを配る俺をどう思っているんだろう。


今はまだプリントを配るだけで精一杯だけど、
いつか、君と普通に話せるようになりたいな。
その時君のどんな一面を見られるのか楽しみだ。





2011/01/23
お題サイト瞑目様から拝借しました。
平凡君の片想いしてる姿を書きたかったので台詞が殆ど無いですね。
しかも撃沈。





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